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自分でバトルストーリーを書いてみようVol.27

1 :気軽な参加をお待ちしております。:2008/01/24(木) 23:33:08 ID:???
「銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。 
 長い戦いの歴史を持つこの星であったが、その戦乱も終わり、
 平和な時代が訪れた。しかし、その星に住む人と、巨大なメカ生体ゾイドの
 おりなすドラマはまだまだ続く。

 平和な時代を記した物語。過去の戦争の時代を記した物語。そして未来の物語。
 そこには数々のバトルストーリーが確かに存在した。
 歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
 されど語り部達はただ語るのみ。
 故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。」

気軽な参加をお待ちしております。
尚、スレッドの運営・感想・議論などはこちらで行ないます(※次スレに移行している場合があります)。

"自分でバトルストーリーを書いてみよう"運営スレその2

http://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1161403612/l50

スレッドのルールや過去ログなどはこちらです。投稿の際は必ず目を通しておいて下さい。

ttp://www37.atwiki.jp/my-battle-story/

2 :魔装竜外伝第十四話(前スレ続き) ◆.X9.4WzziA :2008/01/25(金) 00:54:41 ID:???
 少年は肩を落とした。涙を流す気力さえとっくの昔に失せている。今までは己と愛する
者にのみ危機が及んでいた。それが今回は対戦相手にまで及んだ。陰湿化する水の軍団の
手口。チーム・ギルガメスは対抗できるのか?
                                      (了)

【次回予告】

「ギルガメスは仕掛けられた罠の大きさに絶句するのかもしれない。
 気をつけろ、ギル! 近付いてくる、宿命の足音…。
 次回、魔装竜外伝第十五話『見えざる包囲網』 ギルガメス、覚悟!」

魔装竜外伝第十四話の書き込みレス番号は以下の通りです。
(第一章)前スレ249-262 (第二章)267-277 (第三章)278-289 (第四章)290-303、本スレ2
魔装竜外伝まとめサイトはこちら ttp://masouryu.hp.infoseek.co.jp/

3 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 1 ◆h/gi4ACT2A :2008/01/30(水) 00:22:01 ID:???
現在確認されている限りでは恐らく唯一人の心を持つロボットであると言える存在、
“SBHI−04 ミスリル”は何でも屋“ドールチーム”を経営していた。
そして既に一度死んでいるのだが、ドールに憑依してまだこの世に留まり続けている
幽霊の少女“ティア=ロレンス”(10歳以下で死亡したので、あれからかなり経過した
現在もそのまま)と、通常の生態系とは異なる生命体、すなわち神や悪魔や妖怪と
呼ばれる存在を遥か外宇宙から調査しに来たけど、闇雲に探し回るよりも何故かそういう
連中との遭遇率の高いミスリルと行動を共にした方が遭遇しやすいと悟ってドールチーム
入りした、まるでドールの様に整った顔をした異星人の少女“スノー=ナットウ”
(異星人である事以外が謎)の3人でゴミ拾いから怪ゾイド退治まで様々な仕事を承って
いたのだが、今回はこんなお仕事だった。

「今回も覆面Xさんの依頼と言う事なんですけど…詳しい話は指定された場所でって事
なんですよね。一体どんな仕事なんでしょう…。」
「またロクでもない依頼かもしれないのよ〜。」
「どっちにしても依頼ならばこなすのみ…。」
ミスリルの知り合いに“覆面X”と言う謎の覆面怪人が存在する。彼は良く仕事の依頼を
持って来るのだが…今回の仕事も彼の依頼だった。そしてミスリルは特機型ギルドラゴン
“大龍神”に、ティアはジェットファルコン“ファントマー”に、スノーはハンマー
ヘッド“エアット”へそれぞれ乗って超音速で指定されたポイントへ急行していたが…
「見えてきましたよーって…ゲェ―――――――――!!」
指定されたポイントに存在したある物を見た時ミスリルは思わず叫んでしまった。
そこにはなんと要塞型のギルタイプが多数並んでおり…しかもその中心には要塞型
ギルタイプの数倍は巨大かと思われるキロメートル級のギルタイプも存在したのである。
「アワワワワ…オラは見てはいけねぇ物を見ちまったぜよ…。」

4 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 2 ◆h/gi4ACT2A :2008/01/30(水) 00:23:41 ID:???
余りにも衝撃的な光景にミスリルは本来の口調さえ忘れてしまっていたが、とりあえず
説明させて頂くと、ギルタイプと言う奴は大きく分けて二種類が存在する。まず一つは
元祖ギルベイダーの延長線上に位置する一個の機動兵器としての戦闘力を重視したタイプ。
ミスリルの大龍神がそうであり、後述する要塞型と差別化する為に“特機型”と呼ばれて
いる。そして二つ目は数百メートル級の超巨大移動要塞として建造されたタイプであり、
“要塞型”と呼ばれている。ミスリル達が覆面Xに指定されたポイントにはその要塞型
ギルタイプが多数並んでいたのだが…さらにその上を行くキロメートル級の超々巨大
要塞型のギルタイプとは一体何者なのであろうか…。
「まったくこんなに要塞型揃えて一体何するつもりなんでしょうかね〜? 世界征服の
お手伝いでもしろって事なんでしょうかね〜。」
とりあえず要塞型ギルタイプが多数並んでいる地点の上空を旋廻しながらミスリルは
呆れてしまっていたが…そこで覆面Xからの通信が来たのである。
『おお来たかミスリル君! とりあえず中心の一番大きなギルタイプに着艦してくれ。』
「覆面Xさん…。分かりました。あの一番大きな奴で良いんですね。」
覆面Xが指定した着艦ポイントとは要塞型ギルタイプの中でも一際巨大なキロメートル級
の超々巨大要塞型ギルドラゴン。もはや大龍神が豆粒に見えてしまう程巨大で、“大”龍神
の意味が無くなってしまうんじゃないかと思えてしまってミスリルもさりげなく泣きたく
なっていたのだが…とりあえずお仕事だからと涙を飲んで指定ポイントに着艦した。

「スペースホープ号にようこそ。」
着艦して早々にミスリル達を出迎えたのはいかにも戦艦の艦長風の風貌をしたナイス
ミドルな男だった。おまけに何故かパイプを銜えている。
「私はスペースホープ外宇宙移民船団の総責任者の“スペンリー=スモコ”です。」
「え!? 外宇宙移民船団!?」
余りにも意外な展開にミスリルは思わず大声を上げてしまうワケだが…
「まさかあれだけの要塞型ギルタイプを用意したのは…。」
「そう! 外宇宙へ乗り出す為ですよ。」
「なんと…。」

5 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 3 ◆h/gi4ACT2A :2008/01/30(水) 00:26:05 ID:???
確かに要塞型ギルタイプが元々そういう方向へ使われるはずだった事をほのめかす内容の
文献などが若干残っている事はあるのだが…まさか本当に外宇宙に乗り出そうとするなど
ミスリルには信じられない事だった。
「なるほど…スペースホープとは“宇宙への希望”と言う意味…。でも…本当に外宇宙に
行くつもりなんですか!?」
「そうです。ですからその為に私達はあれだけの多数の要塞型ギルタイプを用意し、
また乗り組み員達も外宇宙探査などの訓練をして来たのです。」
どうやらスペンリー達は本気で外宇宙に乗り出すつもりらしかった。確かにスノーが
言うには惑星Ziには既に千年以上の大昔に地球と言う異星文明からの移民を受け入れた
と言う歴史があり、かつ現在使われている技術の大半は地球人が持っていた物の応用発展
に過ぎないし、現存する人類もまた地球人との混血が多数存在すると言う話はミスリルも
聞いていたが…まさか惑星Zi側でもその地球人の様に外宇宙へ乗り出そうとする者が
出るとは衝撃的な事だった。
「で…まさか私達もその移民船団に参加しろとか言うんじゃありませんよね?」
「いやいや違うよミスリル君。」
そこでスペンリーの背後から覆面Xが現れて説明してくれた。
「君達にしてもらいたい仕事はこのスペースホープ外宇宙移民船団が宇宙に乗り出すまで
の護衛。何しろ外宇宙へ乗り出す為とは言えこれだけの要塞型ギルタイプが用意されて
いるんだからね。きっと事情を知らない者からすれば世界征服でもやらかすんじゃないか
とか勘違いする者も現れるだろう。故にその勘違いして妨害してくる輩を駆除するのが
ミスリル君達の今回のお仕事なんだよ。」
「あ…なるほど…そういう事ですか。私達もここの人達と一緒に外宇宙に行けとか言われ
たらどうしようかと思いました。」

6 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 4 ◆h/gi4ACT2A :2008/01/30(水) 00:27:34 ID:???
ミスリルはホッと胸を撫で下ろした。でも確かに初めてミスリル達がスペースホープ
外宇宙移民船団を見た時、あまりの要塞型ギルタイプの数に本当に世界征服でもやらかす
のかと勘違いした物だ。なら他にも勘違いして攻撃してくる連中がいても可笑しくない。
特に自分達こそ世界の警察だと思ってる大国クラスになればなおさら…
「一応こちら側も特機型ギルタイプをはじめとする艦載機を多数所有しているが…
どれも外宇宙へ乗り出す為の最終調整に入っていて殆どが動かせない状態なんだ。
故に今攻められたらやばい。だから君達に協力を頼んだんだよ。」
「あらら〜…要塞型のみならず特機型まであるんですか?」
「凄いのよ〜。」
確かに格納庫を広く眺めると大龍神と同様に特機型のギルタイプがあれよあれよと
並んでいた…が…どれもメカニックマンが彼方此方調整に奔走しており、中には
装甲や武装が全部外された状態の物もある為、確かに今からの出撃が可能な機体は
殆ど無いと言えるだろう。もっとも、出撃出来たとしてもやっぱりパイロットは
生身の人間なんだろうから大龍神程の性能は出せないのだろうが…
「とりあえず貴方達の護衛任務は引き受けます。ですが…私達三人だけで護衛する
なんて事は無いですよね? これだけの規模の移民船団ですから…妨害するにしても
何個師団分の戦力が投入されてくるか分かった物ではありませんよ。」
「大丈夫だよミスリル君。他にも色んな所から護衛の為に傭兵を引き抜いて来てるし、
いざとなればこの私もジェノブレイカーで出撃する!」
「あ…さいですか…。」
覆面Xは力強くそう答えていたが、何故かミスリルはちょっと嫌な予感を感じた。

7 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/01/31(木) 20:44:52 ID:???
「解せないな……まるで理に適わない布陣だ。狭所防衛戦の利点は、戦場を限定すること
で数の不利を封じられる点にあるというのに」
 ヴィクター・シュバルツバルトの疑念は当然のものであった。

 騎士は各々が分散し、迷路のように入り組んだ地下水路のあちこちで待ち構えているら
しい――というのが、囮役となった本隊からの情報だ。
「さっきからそれを言うの、もう三度目ですヨ。考えられる罠の可能性は全てあなたが
挙げたんじゃあないですか。この期に及んでまだ心配なことでも?」
 四基の翼を背負い、秀麗な柄の細工が目を惹く槍を手にしたデッドボーダーが、彼の隣
に並んでいた。搭乗者――暫定政府議長の影武者であるヴォルフガングは、ヴィクターの
懸念に呆れた様子を隠そうともしない。
 しかし今は、この男に何を言われようと、その力を利用しなければならない。彼自身の
力では、GX-00――アーサーを倒すことなど不可能なのだから。

「その機体ならば、対ゾイドトラップなどものともしないだろうな。しかし後続の部隊は
違うぞ。彼らはそいつのように空間障壁など展開できないし、乗っているのは子供だ」
 彼らが率いている50機のゾイドによる部隊。それら全てが、特殊部隊『星光の鎖』から
選抜された能力者の機体である。
「消耗を抑えるのは、用兵の基礎とすら呼べない大前提ではないのか」
「ええ、そうですねェ。ただ、それは駒となる兵士に人権があれば……の話でしょう」
 かつては自ら強化人間の研究などしていたヴィクターですら、歯に衣着せぬこの男の
発現には鼻白んだ。いくら二人の間でしか聞こえていないとはいえ、ヴォルフガングは今
『公然の秘密』である暫定政府の暗部を暴露してみせたのである。

 “ギルド”の解体によって行き場をなくした能力者らを引き取り、衣食住を提供する
代わりに、その圧倒的な力で暴動などの鎮圧に当たらせる。やることは前任者と同じだ。
 だが、どちらにせよ異能を持って生まれた子供たちは、なんらその命を保障するもの
なしに戦場へ向かい、使い捨てられる立場であった。否、“ギルド”にとって彼らは商売
道具だったが、暫定政府にあってはまさに代えの効く兵器でしかない。
 ゾイドという兵器に想像を絶する力を付加する、パーツの一つ。

8 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/01/31(木) 20:47:47 ID:???
 それでも彼らは政府の庇護を恃むしかなかった。最低限の生活ができる環境は、この
時代では得がたいものであったし、そもそも帰るべき家や彼らを待つ家族も残っていない
ような子供の方が多かったのだから。

「能力者への反感がこれ以上高まると、彼らを登用している政府もそろそろ危ないです
からねェ。ここらで一つ、『能力者はそれなりに役立つ』ってことを示しておかないと。
 なのに全員生存なんてことになったら、彼らは働いてないもんだと思われてしまいます」
 だから、とヴォルフガングは続ける。
「何人か――欲を言えば半分以上は、最終的に殉職してくれるとイイですねェ」
「貴様、いいかげんにしろ!」
 怒鳴ってから、しまった、と思うヴィクターであったが、相手は気にも留めていない
らしかった。彼の興味の対象は既に、眼前のスクリーンに光点として表示された敵機の
反応に移っていたのである。

 騎士の機体は、移動要塞型ゾイドでも楽に通れそうなほど広くなったトンネルの只中で
道をふさぐように待ち構えていた。
 デスザウラーをベースとしている点は他と変わりないようだが、外装花器が見当たらな
い。代わりに全体的なシルエット、特に上半身はマッシブになった印象を受ける。
 傍らの岩盤に突き立てられた剣は、異常なほどに巨大だった。

「さて君たち、お仕事ですヨ。敵の反応は捉えてますね? まずは、敵がどんな能力を
使うのか見定めます。小隊単位に分かれて交戦に入ってください」
 能力者たちのゾイドがぱっと閃き、各々が固有の能力を発動したことを示す。彼らは
そのまま、統制の取れた動きで騎士に迫る。
 先頭の小隊は増速・加速系の能力者で構成されており、どの機体も高速戦闘を得意と
するゾイドだった。微動だにしない騎士を瞬時に包囲し、巨大な剣の間合いを計るように
付かず離れずの距離を置いてその周囲を回る。
 俯瞰すると、デスザウラーは巨大な光輪の中心に閉じ込められたように見える。周囲の
機体が速すぎて、それが走行するゾイドとは見えないのだ。
「ファンが見当たらないな……荷電粒子砲を排除したタイプか?」

9 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/01/31(木) 20:50:33 ID:???
 オリジナルより一回りも大きい巨竜を囲む能力者のうち、一人が呟く。
 それがそのまま、彼の辞世の句となった。

 騎士の機体が、巨大な剣を岩から引き抜く。その動作は包囲を完成させた能力者たちには
あまりに鈍く見え、さしたる脅威とも思われなかったのだが。
 膝を曲げ、巨竜が鈍重な跳躍の体勢に入ったと思うと、既に包囲は破られていた。数秒前
に独語した少年のシャドーフォックスが消え去り、代わりに騎士がそこに立っている。
「何だ!?」
 輪を描くように敷かれていた方位陣の一点に敵が乱入してきたため、消えた機体の後ろに
いたライガーゼロが、勢いそのまま次の目標となった。
 そのパイロットがふと横を見れば、時の流れが遅い世界の中にあって、岩壁に叩きつけら
れて四散してゆくシャドーフォックスがいた。――いったい、どんな攻撃を受ければあそこ
までバラバラになるのだ?
「我々と同じタイプの能力か? だが、速さでライガーに勝とうなどと」
 言い終える前に、ライガーゼロはパイロットもろとも粉砕されていた。全身を構成するパ
ーツの一つ一つがひしゃげて吹き飛ぶ、文字通りの粉砕だ。
 元がデスザウラーとはいえ、あまりに異常なパワーである。

「お……おいおい、通常の四倍速で走るゼロを正面からブチ砕いて、何ともないのかよ?」
 増速の能力は、機体の運動エネルギーを指数関数的に増大させる。その状態で格闘攻撃
を仕掛けるのは有効そうに思えるが、実のところ愚の骨頂だ。
 なぜなら、殆どのゾイドはスペックの数倍ものスピードで格闘戦をすることなど想定さ
れていない。全速力でぶつかれば、確かに敵を一撃の下に葬り去れるであろうが、それを
実行した側にも同じだけの衝撃は返ってくるのである。
 あの騎士の能力が増速の類であるなら、音速に限りなく近いスピードで走るライガーを、
ああも一方的に吹き飛ばすことなどできないはずだ。
「どういうことだ……? 俺たちですら反応できないスピードと、大きすぎるパワー、それ
に異常なまでの機体強度……何なんだ、こいつの能力は!?」

10 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/01/31(木) 20:55:22 ID:???
 各々が距離を取り、砲撃の雨を浴びせたが、素体はデスザウラーなのだ。高速機の火力で
は、その超重装甲を傷つけることなど出来ようはずもなかった。
 そしてまた、竜の身体がすっと沈む。
「く、来る――」
 それまで立っていた大地を激しく抉り、騎士の機体が跳んだ。

「どうなっている? 速すぎて何も見えないが……味方機の反応が次々と消失しているぞ」
 数百mの後方から戦況を見るヴィクターは、やはり自分は戦闘に関しては素人なのだと
痛感していた。こういうときに適切な戦術判断ができれば、味方の窮地を救う手立てを
自分の頭で考え出すことができるのに。
「騎士はパワー、スピード、剛性を併せ持ち、強敵。わが軍不利――ってとこですかねェ」
「他人事ではないだろう! なぜ援護を出さない!?」
 実際に指揮を取るべき男は、確実に数を減らしていく味方を助ける気などまるで無い
ようだった。
「アレじゃあ一旦引かせるわけにも行かない、かといって他の部隊ではあの高速戦闘に介入
 できませんから。残念ですが……」

 視線の先では騎士が大剣を振るい、拳を叩きつけ、そのたびにゾイドを粉々にしていく。
弾け飛んだゾイドコアの破片が光を失っていく様を目に映しながら、ヴォルフガングは肩
をすくめ、非情な宣告をヴィクターに突きつけた。
「……先発部隊、全滅です。たった今、ね」

 得物を狩り尽くした虐殺者が、後方で待機していた彼らの方に向かってくる。
「さて、さて、僕としては部下なんて要らないんですが、全員死なせちゃあ指揮官としての
能力を問われますからねェ。おまけに、捨て駒はこの先も必要ですんで……」
 酷薄な科白に対するヴィクターの抗議が聞こえる。彼は無視を決め込んだ。

 デッドボーダーは四枚の翼を広げ、ゆっくりと宙に浮かび上がる。
 翼の一対は黒。揚力を生み出す、骨組みだけのマグネッサーウイング。
 いま一対は銀。ナノマシンの霧を作り出す、シャープな多段ウイング。
「ここいらで肩慣らしと、行かせてもらいますよォ!」

11 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/01/31(木) 20:58:24 ID:???
 弾丸の如く飛来した巨竜を、一回り小さい竜が空間を歪めて受け止める。歪曲障壁と
騎士の剣が激しく干渉しあい、荒れ狂うエネルギーを紫電として周囲に放った。
「無駄です、この障壁を抜けられるのはニュートリノくらいのモンですからねェ」

 歪曲障壁とは、前方の空間に隠されたカラビ=ヤウ多様体を次元解凍することで高次元
空間の薄膜を発生させ、あらゆる攻撃を遮断する防御兵装である。
 Eシールドの遠い子孫にあたるこの障壁を破ろうと思うなら、重力子砲などに代表される
高次元空間を経由するエネルギーの兵器、あるいは因果律に干渉する量子兵器を用いる
必要がある。
 四次元宇宙に生きるゾイドが普通に攻撃したとて、弾き返されるのみであろう――
それが、普通のゾイドであるなら。

「馬鹿な……ッ!?」
 信じがたい光景。それは理解を超えた超常の力。
 騎士の巨大な剣が、徐々に歪曲障壁を凹ませ始めていた。
「いったい何だ、これは!」
 ヴォルフガングの頭脳は、敵の本質を見抜くために全力の回転を余儀なくされている。
狼狽に足首を掴まれぬようにするためにも、そうする必要があった。
 しかし、考えたところで情報不足は如何ともしがたい。騎士は増速を発動した高速機を
軽々とあしらって見せた。常識外の機体剛性と、桁外れのパワーも発揮した。
 騎士であれ能力者であれ、一人が獲得できる能力は一つのはずだ。ならばあの剣は、
これだけの効果を一つの能力として発現させているというのか?

 ついには障壁が破られ、目の前に大剣の切っ先が迫る。
「! ……しかし、破れたってねェ!」
 ミリ秒単位の差で、デッドボーダーが姿を消す。この機体はロストテクノロジーの結晶
たる魔槍によって時空を切り裂き、超空間を経由して別の座標へと一瞬で移動することも
できる。
 とはいえ、思考とは別の行動を反射的に実行するパイロットが、いかに戦士として優れ
ているかについては、疑いの余地がない。

12 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/01/31(木) 21:00:50 ID:???
 騎士の後ろで空間に裂け目が生じ、黒い竜が飛び出してくる。
「まさか、障壁を破った力……理論上は可能、しかしそんなことが……」
「フォイアーシュタイン! その『まさか』らしいぞ」
 後方にて、防御系の能力者に守られながら敵の分析に努めていたヴィクターからの通信
であった。
「敵の機体は、次元転移も確率干渉もしていない! 奴はただ力任せに剣を突き入れて
来ただけだ――力ずくで歪曲障壁を突破できるほどのパワーを、奴は持っている!」

 そう、原理の上では可能なのだ。もはや指数でしか表せないような、莫大なエネルギー
を注ぎ込めば、通常攻撃でも歪曲障壁を突破することはできる。
 だが、真っ当な物理法則にしたがってそんな力を出そうものなら、どんな物質でも忽ち
自壊してしまうだろう。その不可能を可能に変える因子こそが、騎士が持つ剣だった。

「機体を構成する分子に、たわみが見られなかった。あの機体は、自身が放つ攻撃の反作用
を少しも受けていないようだ」
「運動エネルギーのベクトル偏向……とでも?」
「まだ確証はない。それだけなら、珍しい能力ではないはずだ」
 なにを言う! これだから、デスクワークしかやらない理論屋は――ヴォルフガングは
背後を取られても慌てるそぶり一つ見せぬ敵を注視しながら、ヴィクターの的外れな発言
を内心で嘲った。
 たとえ能力の基礎が凡庸でも、その効果が及ぶ限界値が天井知らずであれば、それは
やはり『異常』な代物ではないか。

 デッドボーダーが再度、空間を跳び越える。
 騎士の頭上に出現した機体が無造作に振るう槍。穂先が虚空に光の弧を描き、それが
宙を飛ぶ刃となって直下の巨竜に襲い掛かる。
 対して巨竜が拳を握り締める。剣を持っていない右手が巨大な拳骨を作り、肘を曲げ、
そして――迫る凶刃に向かって突き上げられた。

13 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/01/31(木) 21:03:22 ID:???
 質量断層の波を用いたヴォルフガングの攻撃は、やはり通常の物質では抗し得ないはず
のものだった。いわば厚みゼロの刃が飛来するようなもので、単分子ブレードをも凌駕す
る切断能を発揮するそれに、斬れないものなど存在しない――理論上は。

 だが、竜の拳は再び理論の壁を打ち破った。
 一本の曲線としか認識できない空間の歪みと、輝く拳がぶつかり合った時、勝利したの
は巨竜の右手だった。何よりも鋭い刃物であるはずの質量断層は、やはり桁外れのエネル
ギーを込められた一撃によって、その歪みを強制的に正され、霧消してしまったのだ。

「発生する力のベクトルを偏向、増幅する能力……」
 ナノマシン兵器をも搭載したデッドボーダー初号機ならば、騎士といえども敵ではない
と侮っていたヴォルフガングは、渋々ながら認めることにした。
 ――少なくとも、退屈するということは無さそうだ。
 自らも意識せぬまま、彼は笑っていた。戦いの中にしか生きられぬ男が、ここにも一人。

                   <続く>

14 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 5 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/01(金) 23:19:58 ID:???
とりあえずドールチームはスペースホープ移民船団の護衛任務を受ける事になった。
それに先立ち、ミスリル達はスペースホープ号の内部を案内してもらうワケだが…
とてもキロメートル級超々巨大要塞型ギルタイプの内部とは思えなかった。
「うわ〜…ゾイドの中に街があるのよ!」
ティアが思わず驚きの声を上げていたその言葉の通り、スペースホープ号の内部には
巨大都市が建設されていたのである。恐らくはあのソラシティーを参考にして、さらに
発展させた物なのだろう。
「なるほど…やっぱり外宇宙を行くのは長い長い旅にもなるかもしれませんからね。
それなら中に街を作っていた方が生活しやすいって事ですか。」
「それだけじゃない…ただ単純に都市を作っただけでなく、農場や森林、各種プラント等
も作られていおり、十分に自給自足の可能な環境となっている。」
スノーの言った通り、都市以外にも様々な施設が作られており、これだけでも十分に
人が生活出来る環境として作られていたのである。と言うか実際に今もスペースホープ
内では沢山の人が普通に生活を続けている。外宇宙に出る以前からこういう環境に
馴らしておけば長い長い旅となっても大丈夫と言う事だろう。
「でも本当に色んな人がいるんですね?」
「ここまで規模の大きな船団なら様々な役職の人間が乗っていて当然。だからこそ
多種多様な職業の人間がこの街で暮らしていても可笑しく無い。」
スノーはこの様に事細かく説明してくれていたが、そこでミスリルは見覚えのある
人間を一人見付けていたのであった。
「あれ…? あそこにいる人って何処かで見た事があるような…ってあ!
そこの貴女…もしかしてハーリッヒさんじゃ〜ありませんか?」
「そう言うあんたはミスリルじゃない!」

15 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 6 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/01(金) 23:21:23 ID:???
彼女の名は“ハーリッヒ=スーミャ”(15)。フリーのジャーナリストで、普通では考え
られない規格外の存在を取材して記事にする事が夢な人物。そしてまたミスリル自身
彼女を“地上最強のジャーナリスト”と言う称号で呼んでおり、ミスリルが一目置く
数少ない人間の一人に数えられている。
「どうしたんですかこんな所で…。もしかして規格外を求めて外宇宙に飛び出すつもりに
なりましたか?」
「いやいや、確かにそれも面白いかもしれないけど…残念ながら違うよ。私がここに
いるのは単純に取材の為なんだから。でも本当に凄いわ〜。ここの人達って本当に
外宇宙に飛び出しちゃうのね〜。きっと宇宙人なんかとも会えたりするんだろうな〜。」
「あ…さいですか…。」
ハーリッヒの性格から考えてスペースホープ外宇宙移民船団に参加していてもおかしく
ないと考えていたミスリルは少々拍子抜けしていたが、そこでハーリッヒはスノーの
存在に気付くわけである。
「あら? そっちの子は初めて見るけど…。」
「ナットウさんの事ですか?」
「私はスノー=ナットウ。通常の生態系とは異なる生命体…すなわち神・悪魔・妖怪等を
求めて旅をしていたが…ミスリルと共にいた方がそれらに遭遇しやすいと考えて彼女と
行動を共にする事にした…。よろしく。」
「へ〜、あんた中々見る目あるじゃない?」
常識的な人間からすれば真面目に超常現象を捜し求める行為は嘲笑の対象になる事が多い。
だからこそスノーの言葉にハーリッヒも仲間と感じて内心嬉しかったのだが、ここで
さらにもう一言入るワケである。
「それにしてもあんた達…ミスリルはロボットで、ティアは幽霊…と来たから…
案外スノー、あんたは宇宙人だったりして〜…。」
「!」
スノーは相変わらず無口無表情無反応だったが、ミスリルとティアは一瞬肝が冷えた。

16 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 7 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/01(金) 23:24:08 ID:???
「…なんてね! それは流石に無いよね! 何か話が出来すぎてるもの! それじゃあ
私は他にも色々取材しないといけないから! またね?」
そう言ってハーリッヒは再びカメラを片手に何処かへ去っていったが、ミスリルとティア
は胸を押さえ、真っ青な顔で震えていた。
「いや〜ヤバかったですね〜。ナットウさんの正体がバレる所でしたよ。」
「別に私はそれでも構わない。」
「あ…さいですか…。」
相変わらず無表情なスノーのクールさにはミスリルも見習いたかった。

それからミスリル達はスペースホープ号の彼方此方を見て回るのだが…その中には
明らかにスペースホープ号の乗組員とは毛色の違う者達も混じっている。それが
覆面Xの言っていたと言う他にもスペースホープ号護衛の為に雇った傭兵と言う事
なのだろうが…
「ゲェ―――――――!! よりによって貴女と共闘する事になろうとは…。」
「は?」
突然誰かがミスリルに対してそう叫んできてミスリルも呆れて首を若干斜めに傾けるが、
良く見るとその誰かもまた見覚えのあるような無かった様な…そんな相手だった。
「何処かで見た顔ですが…貴方は何方でしょう?」
「ゲェ―――――――!! すっかり忘れさられてる! 僕を忘れたんですか!?
アールスですよ! アールス=イオン! エスパリアン機関のエスパーです!」
「はて…そんなのいた様な…いなかった様な〜…。」

17 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 8 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/01(金) 23:25:25 ID:???
彼の名は“アースル=イオン”。超能力の軍事利用の為の研究を真面目に行っている
“エスパリアン機関”から誕生した超能力戦士。主にサイコキネシスを得意とし、
同機関の作り上げた“精神波増幅装置”によって増幅されたサイコキネシスで
ミスリル&大龍神を大いに苦めた事があった。しかしミスリルにとってはもはや
沢山の挑戦者の中の一人に過ぎず、どうも大した印象は持ってなかった様子である。
「でもまあ超能力者なんてハーリッヒさんが聞いたら狂喜乱舞しそうですけど…
こういう時に限ってハーリッヒさんどっか行ってたりしますから世の中思い通りには
いかない物ですね…。」
ミスリルは少々悲しげな目になっていたが、アールスは真剣だった。
「とりあえず今回は共闘する事になりますが…あくまでも僕の狙いは貴女である事を
忘れないで下さいよ! 貴女を倒して超能力はオカルトでも何でもない事を世間に
知らしめるのですよ!」
「ハイハイ…精々頑張って下さい。」

18 :名無し獣@リアルに歩行:2008/02/02(土) 00:24:44 ID:???
定期age

19 :人形 ◆5QD88rLPDw :2008/02/04(月) 08:36:41 ID:???
夢を見るときに同じ夢ばかりを見る。いつ頃からだろうか?
少しづつ続きが足されていき今では過去に自分が遭った事件ではなく、
その先で更に酷い目に遭う…。
もう少し夢が足されればきっと私は四肢を失うだけでなく、
首を切り飛ばされていることだろう。
…実の祖父に。

今日の寝起きも最悪だ。私は義手と義足をいつもと同じように身に付け、
ベッドからゆっくりと這い出す。
余りに起きるのが遅いときっとジョイスが心配するだろう。
「お嬢様?」
「ああ…ジョイスね。今服を着るから待ってて。」
「辛いのなら私がお召し物を…。」
「いいの。幾ら本物の手足が無くたって私は人形使いよ。大丈夫。
それに何時までもジョイスに私の貧相なスタイルを見られるのは嫌!」
「申し訳有りません。」
「だからいいって…。」
ヘリック共和国の首都ヘリックシティ。その西の端に有る古い砦の一つ。
そこが私…人形使いミレッタの居城。
今日の仕事は無いが代わりに警察署に出頭する必要がどうしても有る。
容疑は…殺人。

「申し訳有りません…ミレッタさん。少しの間拘留しなくては成らなくなって。」
まだ若造と言われたり下から先輩とか呼ばれそうな年代の刑事の男は、
私の義手と義足をゆっくりと私から取り上げる。
「しっかしあんたの爺さんも酷いことをする。」
「ストップ!それ以上は言わなくて良いわ。」
「はいはい…了解しましたでは実験室へミレッタさんをご案内してくれたまえ。」
今度は無礼な語調で部下に指示を出し私をその”実験室”とやらに移送する。
その搬送方法はお嬢様だっこだが彼にも私にも良い事は全く無い。
本来ならある筈のものが無いため何一つ役得が無い男。
それを気にしている私は更にショックを受けて気分は限りなくブルーだ。

20 :人形 ◆5QD88rLPDw :2008/02/04(月) 08:37:53 ID:???
「え〜…警察に出頭ですか?容疑は…殺人。私も随分と悪人に成ったものですねぇ?」
Yシャツに袖を通しボタンをさっさと閉める。
背には巨大な金属の甲羅やら羽根やらよく解らないものが彼の後ろ姿を隠す。
右手の甲には…
不気味なほど透明度の高い水晶体の親玉みたいなレンズが埋め込まれている。
良く見れば繋ぎ目が無いので内側から発生したものだと医学関係者なら解るだろう。
「ぶ〜ぶ〜言わないの!じゃあ僕は学校があるから…逝ってきま〜す!」
「こらこら…wそこは”行ってきます”ですよ。イドさん?」
「解ってる解ってる。じゃあ今日中に帰って来れなかったら…
子犬探しは僕がやっておくね!おじさんも行ってらっしゃい!」
「では私も…行ってきます。」
部屋の見た目は正に三流探偵事務所…世話焼きの少女…異形のボンクラ退役軍人。
しかもそのまま使っている軍服は敵性国家ネオゼネバス帝国と来たものだ。
少女の名はイド・アウェイズ。異形のボンクラの偽名はファイン・アセンブレイス。
本名は廃れて使われなくなって既に久しい。

「「ええ〜〜〜〜〜〜〜!?」」
警察署の地下にある中傷”実験室”。
そこでは偶然の再会が用意して遭ったと言う…。
「「生きてたの!?」」
これまた同じ言葉を口にすると両者の顔は喜びに綻ぶ。
「へ〜…ミレッタさんとあんたは知り合いだったのか?」
「ええ。彼女とは西方大陸で同じ部隊に配属になっていまして…
そろってセイバータイガー1機を失っています。しかしミレッタ少尉が元気だとは…。」
「驚いた?大体こんななりだからコクピットが多少潰れたって無事よ無事!」
「え〜コホン。では状況を説明しますよ〜。」
刑事は事件の状況を二人に伝える。

「むごい仕打ちですねぇ〜。完全に死亡している被害者をミンチにするまで殴打。
しかも凶器はマネキン。ならミレッタさんと私が容疑者に上るのはしょうがない。
人形繋がりでミレッタさん。呪術と言う事で私と…。」
そもそも凶器が動くマネキンという時点で猟奇殺人事件である。

21 :人形 ◆5QD88rLPDw :2008/02/04(月) 08:39:51 ID:???
「っつ〜事でこの実験室の出番なんですよ。」
「意地悪ですねぇ〜エリック警部は〜。」
「まあまあ職業柄知人でしかも協力者であろうとも取・り・敢・え・ず・です。」
「ファイン?あんたの知人はなんでこうも容赦が無いの?」
私は思いっ切り睨み付けるがこの程度は昔からの付合い。
だから対称の本人には軽く流されて逆に周囲の鑑識の人がオロオロするばかり。
でも面白いから良いかと思う。
ものの考え方は可能な限りポジティブにいくべきだ。
ほんの少しでもネガティブに考えれば次の日私は自殺とも他殺とも付かない…
そんな今回のような被害者に成ることだろう。
違うのは確りきっちりバッチリ手を加えられミンチにされないぐらいだ。

当然結果はシロ。彼の魔術とやらが何処までのものかは解らないが、
私共々マネキンを視認せずには動かす事も敵わなかったからだ。
モニターで覗けば?ということでやってみてもやっぱり上手くいかない。
「どうしたもんでしょ?”隠し事”をしないと駄目ですかねぇ〜?ご両人?」
「「はい!(断言)」」
エリックは私達にどれだけの下準備が必要か?聞いてくるので、
「ファイン?ちょっとマネキンの部屋まで行ってきて。」
「了解です。それではぁ〜…」
彼は壁を通り抜けて部屋に直線ルートで向かう。
キモイ映像が拝め気分が悪くなったがこれなら疑われても仕方がないと私は思う。
そうして…彼が部屋に到達したときに私はそれを行なった。

「よっはっと!?突然マネキンが私に攻撃を!?」
「何を為たんですか?一体!?突然元気に動き回っているじゃないですか!」
エリックが目を丸めるのも無理は無い。
いままでものすら持てなかったマネキンが有りもしない関節を動かせるようになり、
ガイロス式格闘術で攻撃を始めたのだから驚くのも無理は無い。
「知人に対して明確な害意を持てばほらこの通り!」
「チョーック!チョーック!タップタップ!ギブアップですよぉおおおおおお!!!」
チョークスリーパーを見事に決めたマネキンの姿は私でも恐ろしいものだった。

22 :人形 ◆5QD88rLPDw :2008/02/04(月) 08:42:44 ID:???
「ふぃ〜…顔が蒼くなる所でしたねぇ〜?」
「「「「充分顔面蒼白だよっ!」」」」
鑑識の人やエリックに突っ込まれてしまう。
それ程血の気が無いのであろうか?取り敢えず鏡を私は覗いてみる…
「これ?誰でありますか?」
「「「「あんただよっ!」」」」
あり得ないボケに遂にエリックが軽く切れてしまい彼の靴が私の後頭部を直撃する。
「あいたたたたた…安全靴でそれは酷いんじゃ?」
そのざまをミレッタはカラカラ笑っていた。

「じゃああんたの場合はどうやればできる?」
今度は私の番と言う事で…
「え〜っと…陰分身!」
取り敢えず陰分身を行ない一人増える。その後…
「トウッ!」
気合い一発でマネキンに化ける。
「もういいですよ…遠隔は駄目だから自分で陰分身を送り込んでってことね。」
何方かというと私の方が現実的で容疑者にされそうである。
でもエリックの言葉はミレッタだけではなく私の無実をも証明する。
「それってこうすると駄目ですよねっ!」
投げナイフの直撃で陰分身が化けたマネキンが倒れ消滅する。
鑑識が目を白黒させていると…
「陰分身は無理に質量を持たせた存在が曖昧な分身なんですよ。
だから突発的なトラブルに見舞われると消えてしまうので殺人は無理でしょうな。
抵抗した後がマネキンに在りますから。」
流石はこう言った事件に慣れているだけはあると言うところだろう…。

結局ファインとミレッタは二日程拘留され事件の進展を見守ることになるが…
案の定二人の拘留期間に立て続けに同じ事件が三件も起こる。
それで完全に容疑者から外れる事になったのだ。
当然本人達は複雑な気分で家路につく事となるが容疑が晴れる間に、
失われた命の数は十二。ペット等も含まれるが九人もの被害が出ているのである。

23 :人形 ◆5QD88rLPDw :2008/02/04(月) 08:45:59 ID:???
「…で?なんでミレッタさんが私の家に上がり込んでお茶を?
しかも私よりも早いじゃないですかぁ!?」
「どうも!オッジャマシマ〜ス!」
妙に他人行儀でかたことな言葉でミレッタに茶化される。
「ようこそ!オッジャマサレチャイマ〜ス!」
そして…イドにまで茶化される始末だった。
「申し訳ございません…どうしてもセットで行動させろと警部が…。」
執事の人が私に頭を下げ非礼を詫びてくるので何時ものように怒れない。
怒るといってもノリツッコミなので大した効き目はないだろうが。
「申し後れました。私執事を務めるジョイス・I・サイバーンと申します。
今後事件の解決までの間ミレッタ様共々ご厄介になります。」
「まあまあ今更詫びなんか入れなくても…
このノリはガイロス帝国弾導強襲部隊シュトゥールヴィントの頃からですから。」
「そうそう!酒持ってこ〜い!肉喰わせろ〜!」
「が〜〜〜〜〜〜!肉は一人300gまでですよ!貴重なんですから。」

とある事情で古ぼけ傾きそうな事務所とは違い、
ビルの中にビルを造るという奇妙な建造物を丸々共和国政府に与えられた私達。
イドの両親がとんでもない金持ちで、
その上両国間に見えないパイプを繋いでくれたお陰で住む所に限ってのみ。
それだけは非常に豪勢だったりする。
元々は廃棄された生物兵器開発用のプラントだったとか言われているが…
実のところもっと悍ましい何かだったらしいことまでは調べを付けてある。
多分ここからの情報の漏洩を防ぐ門番として私は体良く雇われた、
そんな感じの所だろう。
お陰でその日暮らしを半永久的にこの二年ほど続けているわけだが。
残念ながら敵性国家の給料は差し押さえられて久しい。
名義上の不名誉除隊だった筈が状況的に見事な不名誉除隊者+プータロー。
そこで探偵事務所なんて名ばかりの何でも屋をして生計を立てている次第だ。
イドは自分の養育費を切り崩せば良いと薦めてはくれるが、
椅子を喰ってでもその費用にだけは手を付けたくない。
大人としてのプライドまではまだ棄てたくないとほんのり思っている今日この頃である。

24 :人形 ◆5QD88rLPDw :2008/02/04(月) 08:48:57 ID:???
ここはジャンクアーケードとかサウスウウェストストリートそんな言葉で括られる。
そんなヘリックシティ最大の掃き溜めであり同時に最も経済活動が盛んな地域。
表ばかりでなく裏の経済もここで動いていると言っていい。
普通ここまで来れば軽犯罪は年数十万とか毎日マフィア同士の戦争状態。
そんな風に言われ兼ねないが…
実のところヘリックシティ内では最も年間犯罪数が少ないと評判。
マフィア同士の手打ちは完璧。警察との癒着も万全。
ここまでなら悪い見本だが結果は最も安全な場所として機能している現実がある。
全てが全て一蓮托生であるこの地では抗争地味た行為など起そうものなら…
全マフィアが総動員で鎮圧に掛かる。
そうして鎮圧された犯罪者は警察署の前にとても恥ずかしい姿で縛られ投棄。
証拠なども警察署にリアルタイムで送付されて来るので、
立件から裁判まで非常にスムーズに進むという恐ろしさ。
そう言う見せしめ行為が数度行なわれ暴力団組織の数が半数消えたところで…
この地域は平和になったと言う話。
マフィアと言っても麻薬取引とか偽札作りをしているわけではなく、
各種種族や部族で協力する名目で結成された側面の方が強い。
そのため犯罪に関しては素人よりも酷いのでそんな事はできもしない。
風評が風説を呼びマフィアと言われているだけと言う知れば驚愕の事実だったりする。

そんな場所で猟奇殺人事件が起きたのだから…
翌朝の人通りは酷いものだった。
学校へ向かう生徒たちはそのマフィアの構成員にガードされてビップな当校風景。
何処から襲ってくるか解らないとマネキンは昨日辺りに全て町から排除された。
服飾店のショーウィンドウは既に見るに耐えず、
マネキンの代わりに急遽雇われたモデルさんがポーズを取り、
疲れたら椅子に座ってコーヒーを啜って居たとイドは言う。
「あのね…子犬の捜索だけど。」
被害者の中に入ってしまったと言う事で報酬どころの話ではない。
元々5H$札を握り締めて来た幼い依頼人から報酬を受け取る。
そんな事は元から考えていなかったが被害者になった事で憤りが隠せない。
しかも残念ながらこの事件は単なる猟奇殺人で終わらなかったのである。

25 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 9 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/04(月) 22:46:14 ID:???
高度文明圏の中に位置する大国の中に“ライオ共和国”と言う国家が存在した。
獅子を神聖な動物とし、国旗にも獅子を象ったマークが付けられているその国は
ライオン型ゾイドを主戦力とし、世界で一番ライオン型ゾイドを多く所有する国
として有名であった。そしてライオ共和国軍本部にて、多数の仕官、下士官達が
集められ、ブリーフィングが行われていた。
「えー、これが哨戒任務中のバイトグリフォンが撮った写真である。」
ブリーフィングに集まった士官、下士官達に説明をする佐官クラスの男が
正面モニターに一つの映像を映し出す。それはスペースホープ移民船団の写真だった。
「なんて事だ! 滅びの龍があんなに…。」
「しかも真ん中の奴なんかキロメートルはあるんじゃないかってくらいデカイぞ!」
写真を見た士官達は次々驚きの声を上げた。無理も無い。ギルタイプを“滅びの龍”と
呼び、忌み嫌う傾向にある地域は決して少なくは無い。特に獅子を神聖な動物とする
ライオ共和国にとってなおさらであろう。しかもその要塞型のギルタイプが一機二機では
無く何十機と並んでいるのである。これに騒がずして何をしよう?
「一体誰がどうやってこれだけの数の滅びの龍を揃えたのかは分からないが…
ロクでも無い事に使われる事は想像に難くないだろう。間違い無くあれはこの国…
いや全世界そのものに戦乱の種を振りまく! 滅びの龍は一機で十分に国を焼ける力が
ある以上、あの徒党を組んで並ぶ滅びの龍が世界各地に飛んでありとあらゆる国を
蹂躪する事は目に見えている! だからこそ軍上層部はあれらが飛び立つ前に
先制攻撃を仕掛け、その野望の阻止する事を決定した! これはこのライオ共和国…
いや全世界の命運を賭けた戦いとなるだろう! あの滅びの龍の浮上は何としても
阻止させなければならないのである!」

26 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 10 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/04(月) 22:48:27 ID:???
ブリーフィングが終了した後、その場に集まっていた士官達の中には怖気付く者も
いれば、逆に闘志を燃やす者もいた。そしてさらにその中に一人の若い仕官が
未だ正面モニターに表示されていたスペースホープ移民船団の写真を見つめていた。
「あれが…飛び上がったら…世界中が戦場になる…。」
彼の名は“ルイス=キューブリック”階級は少尉。戦災によって孤児となり、自分の
様な戦災孤児を作り出さない為…人々を守る為に軍人になった。真っ直ぐな瞳を
持った正義感の強い青年だった。
「ああ…あれが飛んだら最後…世界中が蹂躪されちまうだろうな〜。」
「バングラン大尉…。」
ルイスの後ろから現れた一人の中年の将校。彼の名は“バングラン=グレスコ”
階級は大尉。ルイスの直接の上官であり、顔は怖いし訓練も厳しいが、何だかんだで
他人思いな部分もあったりして、ルイスのみならず他の仕官からも慕われる好人物だった。
「とにかくアレをぶっつぶさない限りに俺達に未来はねぇって事だ! 分かるか?」
「あ、ハイ。」
バングランの言葉に軽く返事をするルイスだが、バングランはルイスの頭に手を置いた。
「やっぱ怖いか? 俺もすげぇ怖ぇよ。何しろ相手は軍団規模の滅びの龍だもんな。」
「あ…はぁ…。」
「だがよルイス。お前だって今まで厳しい訓練や辛い実戦に耐えて来たじゃないか!
それに何よりお前はあの誰の操縦も受け付けなかった“セブンズソード”に選ばれたんだ!
だからこそ…自分の力を信じろ!」
バングランはそう言ってルイスの背中を軽く叩く。

27 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 11 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/04(月) 22:50:18 ID:???
「なあルイス…お前ルージ=ファミロンって知ってるか?」
「誰ですか…それ?」
「そいつは100年くらい前の人物でよ、お前みたいに真っ直ぐな瞳をしてたって言うぜ。
最初は何処にでもいるようなガキだったらしいが…そいつもまたある日突然セブンズ
ソードの様な誰の操縦も受け付けない不思議な力を持つゾイドの乗り手に選ばれ、多くの
仲間と共に民を苦しめていた悪党どもと戦う勇者になって話だ。ま、それが本当かどうか
は俺にも分からん。だが何となく思うんだ。セブンズソードはただのゾイドじゃねぇぜ。
こういうの真面目に言うと、オカルトだとか馬鹿にされそうだが…まあ俺もオカルトとかそういうのはあんまり信じない性質なんだが…セブンズソードは別…その昔話のゾイド
みてぇに絶対にすげぇ事をやってくれると思うんだ! ま、そんなの別に意識する必要は
ねぇ! とにかく俺達の出来る事をしようじゃないか! この国に住む多くの人を守る為
にあの連中を叩き潰す! これだろ!?」
「ハイ!」
二人は立ち上がって他の士官達と共にブリーフィングルームを出た。祖国を…ライオ
共和国を守る為の出撃準備をするのである!

スペースホープ外宇宙移民船団周辺の哨戒も終わり、他のチームと交代した後、スペース
ホープ号内部に設けられたドールチーム用の控え室でミスリル・ティア・スノーの三人は
休養を取っていたのだが、そこで何気無くミスリルがスノーに質問した。
「ナットウさん、果たして上手く行きますかね? 外宇宙移民船団なんて…。」
「はっきりと言わせていただくと…かなり無謀に近い。」
「こりゃまた本当にはっきり言っちゃったのよ〜。」
スノーは本当に正直に言い、ティアも驚いていた。

28 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 12 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/04(月) 22:51:36 ID:???
「これだけのギルタイプを集めても無謀なんて…外宇宙ってそんなに危険なんです?」
「その通り…危険が多いのは事実。この星の人間も…かつてこの星への移民に成功した
異星文明の人間もまた…この宇宙に自分達以外の人類はいないと思っていた様だが…
宇宙は広い。何億光年単位での範囲を支配する星間文明や問答無用で襲って来る意思疎通
が不可能な生命体も宇宙ではザラにいる。はっきり言って彼等の粗末な技術で、私の例に
あげた脅威に遭遇する事無くこの星への移民に成功したのは殆ど奇跡に近い。」
「あ…さいですか…。」
かつて千年以上の大昔に惑星Ziへの移民に成功したと言う異星文明(地球)の技術さえ
も粗末と言い切るスノーはさぞかし凄い高度な異星文明出身としか考えようが無かったが、
あまり細かく考えすぎるとミスリルのAIがショートしそうなので、その辺にしといた。
「しかし…彼等のやろうとしている事は凄いと思う。どんなに高度に発達した星間文明で
あろうとも、最初は彼等の様に宇宙に出る事さえ危険な状態から始まっている。だから
こそ私は彼等を応援したい。」
「確かに…ここの人達には頑張って欲しいですね。惑星Ziを代表して外宇宙に旅立つの
ですから…。」

29 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 13 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/07(木) 23:19:52 ID:???
ライオ共和国軍本部の周辺にライオン型移動要塞“ジャイアントスフィンクス”が多数
集結し、各機に国中から集められた将軍、佐官、仕官、下士官、そしてゾイドが次々に
乗り込んでいた。スペースホープ外宇宙移民船団の目的が全世界の蹂躪と勘違いしている
彼等は本気で総力を持ってスペースホープ外宇宙移民船団の発進を阻止するつもりの
様子であった。そしてその中にはルイスとバングランの姿もあった。
「よし。乗艦完了と、後は出撃まで待機ですね。」
「おう!」
ルイスの搭乗機はムゲンライガー。しかしただのムゲンライガーでは無い。標準装備して
いる二本の大型刀に加え、背中にはムラサメライガーのムラサメブレード、四つの脚部
にはそれぞれハヤテライガーのムラサメナイフ&ムラサメディバイダーを装備すると言う
まさに全身が刀と言うべき姿であり、合計七本の刀を持つ事から“セブンズソード”と
呼ばれていた。しかもこのゾイド、ライオ共和国にとっても得体の知れない部分のある
いわく付きのゾイドで、今までいかなるパイロットの搭乗も許さなかったと言うのに
何故かルイスに対してのみは操縦を許すと言う不思議な機体であった。そしてバングラン
はエナジーライガーを搭乗機としている。セブンズソードと違い、至って普通のエナジー
ライガーであるが、バングランと共に幾多の戦場を駆け抜けた百戦錬磨の猛者であった。
「二人とも遅いですよ。私はもう10分も前に乗艦しましたよ。」
「レイア!」
突然二人の前に一人の若い女性仕官が現れた。彼女の名は“レイア=ミスト”階級は少尉。
ルイスとは幼馴染であり孤児仲間で、かつ同時期に軍に入った仲であった。
「レイア、君も行くの?」
「当然! ライオ共和国の存亡が掛かってるのよ! 何もせずにただ滅びの龍なんかに
国を蹂躪されるなんて私は嫌よ! 勿論命令の方も受けてるけど…それとは別に私の意志
でも戦うつもり! このヴァルキリーシーザーで!」

30 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 14 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/07(木) 23:21:06 ID:???
レイアが見上げた先にはヴァルキリーシーザー姿があり、これがレイアの搭乗機であった。
「でも私は死ぬつもりは無いよ。絶対に国にも傷一つ付けさせないし、私自身も生きて
帰るつもりだから!」
「うむ! 良い目をしてやがるぜ。」
レイアの目は本気であり、国を守る為の一世一代の戦いに挑む戦士の目となっていた。
これにはバングランも思わず笑みが溢れ、ルイスの背を強く叩いていた。
「こりゃぁますます負けるワケにはいかねぇなぁ! なあルイス!」
「ハイ、バングラン大尉!」
「よっしゃ! とにかく出撃まで待機だ待機すんぞ!」
こうしてバングランはルイスとレイアを連れて歩き出した。

スペースホープ号艦内の艦長室ではスペースホープ外宇宙移民船団の総責任者にして
スペースホープ号艦長であるスペンリーと覆面Xの二人が互いに向かい合って将棋を
さしていた。チェスでは無く将棋である所がポイントである。
「スペンリー殿、これだけ大人数を引き連れているとは言え、外宇宙へ旅立つのは
心細くはありませんかな?」
「まあ…以前から良く言われる事ですな。確かに不安は無いと言われると嘘になります。
しかし覆面X殿…。逆にこうも考えられるのではありませんか? 今こそ飛行ゾイドが
発達し、惑星Ziの彼方此方を自由に移動する事も難しい事ではありませんが…
かつては島の一つ。国の一つこそがそれぞれの人々にとっての世界の全てでした。
それが飛行ゾイドを初めとする移動機関の発達によってそれぞれの知り得る範囲外の
世界を見て回る事が出来る様になったワケですが…今回の事もそれと同じ事ですよ。
私達は惑星Ziと言う今まで自分達が世界の全てだと思っていた範囲外へ旅立つのです。
不安は確かにあります。しかし…同時に希望もあるのですよ。」
「そうですか。ならば私は貴方達が無事に宇宙へ飛び上がれる様に全力を尽くして守り
通すのみです。では王手と!」
「あああ!」

31 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 15 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/07(木) 23:23:28 ID:???
さりげなく覆面Xはスペンリーへ王手をかけていたが、将棋はそこまでだった。
「では私はここまでで行かせて貰います。この将棋の結果の予想は出来ませんでしたが…
スペースホープ号の外ではスペンリー殿の予想された通りの事が起こっている様です。」
「やはり…勘違いした輩がいましたか…。」
覆面Xは軽く頷く。
「ハイ。そして恐らくは説明しても通用はしないでしょう。しかしスペースホープ外宇宙
移民船団は私達が全力を持って守ります。その為にスペンリー殿は私に頼み、私は各地
から優秀な傭兵を引き抜いて来たのです。」
「頼みますぞ。」
覆面Xは部屋を出ると共にゾイド格納庫へ、スペンリーはブリッジへと急いだ。

「現在接近中の連中は何処の国の奴らだ!?」
スペンリーがブリッジに到着した頃には既にブリッジ待機要員が外宇宙移民船団に
接近中の勢力の割り出しを完了していた。
「現在接近中の艦隊はライオ共和国軍のジャイアントスフィンクス艦隊です!」
「ジャイアントスフィンクス…ライオ共和国のライオン型移動要塞か…。
スペースホープ号及び各艦の艦載機の整備状況は!?」
「整備中の機体が多く、出撃は難しいとの事です!」
「各メカニックマンに通達! とにかく急がせろ!」
「了解!」
スペースホープ号ブリッジに映し出されたモニターには地平線の彼方から接近中の
数百メートル級ライオン型機動要塞ジャイアントスフィンクスの姿が映し出されていた。
だが、迎撃機を飛ばそうにも、スペースホープ号及び、移民船団各艦艦載機の特機型
“ギルドラゴン”“ギルベイダー”“ギルワイバーン”“ギルヒリュウ”“ギルシェンロン”
“ギルドラッヘ”“ギルオロチ”等々の様々なギルタイプバリエーションの大半の整備と
調整が完了しておらず、出撃が出来ない状況であった。
「やはり覆面X殿の集めた者達に頼らざるを得ないか…。頼みますぞ…覆面X殿…。」

32 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 16 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/09(土) 23:52:23 ID:???
時同じく、覆面Xに雇われた多数の傭兵達が出撃の為に格納庫へ向けて走っており、
当然その中にはミスリル達の姿もあった。
「一体何処の連中が襲って来たんですか?」
「何でも聞く所によるとライオ共和国の獣王師団らしいですよ。」
何故かさり気なく近くにいたアールスが親切に説明してくれてはいたが、ミスリルは
少々気まずい顔になっていた。別にアールスに説明された事がどうこうと言うワケでは
無く、ライオ共和国の方が問題だったのである。
「ライオ共和国ですか〜…私ってあちらさんにあんまり良く思われて無いんですよね〜。」
「まあ貴女の場合はともかくとして…あんまり良い印象で見てもない人が多い事は
事実ですよ。エスパリアン機関の方でもライオ共和国に売り込みを行った事があるんです
けど門前払いされました。それがまだ超能力がオカルトで眉唾だからと言う理由なら
こちらとしてもまだ分かるのですが…。売り込みの為に機関の用意した超能力仕様ゾイド
がライオン型では無いと言う理由なんですよ。ちょっと可笑しいとは思いませんか?」
「ま〜…ライオン型は機種が多いですし、人気も実力もある点は否定するつもりは
ありませんが…そこまでライオンに拘るのはちょっとアレに思えてしまいますね。」
流石にミスリルも少しアールスに同情していたりするのだが、近くにいた他の傭兵も
何故か話に加わって来ていた。
「俺の知り合いの武器商人がよ、ライオ共和国に商いに行ったんだが、そこで言われた
らしいんだよ。『次からはグスタフでは無く、ライオン型に台車を引かせて来い』って。
あちらさんのライオン好きは世界的にも有名だけど…あそこまで他種ゾイドを否定される
とはっきり行って引くぜ。」
「表向きには正義の戦いとか謳ってるけど、裏ではかなり悪どい事やってる話も聞くな。
種族浄化とか言って恐竜型野生ゾイド生息地域に乱入して意味も無い殺戮を行ったり、
ライオン型ゾイドを使っていないと言う理由だけで滅ぼされた少数民族もあるとか無い
とか…。まったくおっかない話だよな。どうしよう。俺、ジェノザウラー使ってるのに…。」
「こ…怖いのよ〜。」

33 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 17 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/09(土) 23:55:48 ID:???
と、口々に会話に入り込んで来た傭兵達は誰もがミスリルの知らない者達であったが、
とりあえずライオ共和国はヤバイと言う事だけは辛うじて認識する事は出来た。
「これはもう戦力の出し惜しみは出来ませんね…。久し振りに大蠍神&大砲神にも
参戦願いましょうか…。」

格納庫に到着したミスリル達を含めた傭兵達は次々に各搭乗機へと乗り込んで行く。
そしてミスリルは大龍神、ティアはファントマー、スノーはエアットに搭乗するのだが、
アールスはゴルヘックスに搭乗していた。
「あら、貴方確か以前はゴルドスに乗ってませんでしたか?」
「何時までも同じだとは思わないで下さい。あれからエスパリアン機関も研究に研究を
重ね、精神波増幅装置の小型高性能化に成功したのです。」
かつてアールスは精神波増幅装置と言うアールスのサイコキネシスを増幅させる装置を
搭載したゴルドスによってミスリル達に戦いを挑んだ事があった。その際にゴルドスが
選ばれた理由は、当時はまだ精神波増幅装置の小型化が出来ず、大型機にしか搭載
出来なかった事と、精神波を広域に発射するにはゴルドスの様な電子戦ゾイドが適して
いた事があげられる。そして今ではその精神波増幅装置も小型化され、ゴルヘックスに
搭載出来る程にまでになっていると言う事なのである。しかもゴルヘックスはクリスタル
レーダーの恩恵でゴルドス以上に電子戦に優れたゾイドであるから、以前戦った時よりも
パワーアップしていると言っても過言では無いだろう。ゴルヘックス本体そのものには
特に武装の類は付いていなかったが、アールス本人のサイコキネシスによる戦闘法が主と
なる為に特に必要は無いのだと思われる。そしてそうこうしている間に覆面Xも
ジェノブレイカーに搭乗してやって来た。

34 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 18 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/09(土) 23:57:54 ID:???
「今更こんな事言っても仕方が無いのだが…一つだけ後悔してる事がある。」
「突然どうしたんですか? 覆面Xさん。」
「実は“緑の悪魔”にも協力を頼んだのだが…あちらはあちらで大きな戦いに巻き込まれ
ていて忙しいと言う事で却下されてしまったんだがな…こんな事ならば無理矢理にでも
引き込んでくるんだったよ…。」
「そ…それは確かに私にとっても残念な事ですね。戦力的にも申し分ありませんし…
私個人としても久し振りに会いたいと思ってましたし。」
「“緑の悪魔”って…ミスリルあんた“緑の悪魔”と知り合いなの!?」
今度は突然現れたハーリッヒがそう叫んでいた。ちなみに彼女はスナイプマスターから
スナイプ装備をオミットし、代わりに各種カメラ等を積んだジャーナリスト仕様機、
“スクープマスター”に搭乗している。恐らくはこれから起こる戦いに関しても映像に
残そうと言う事なのであろう。
「でも凄いな〜! “緑の悪魔”って色んな格闘技の達人なだけじゃなくて超能力も
使えるんでしょ!? ミスリルがそんな凄い人と知り合いだったなんて!」
「気功って超能力に入るんですかね〜…。」
一人熱狂しているハーリッヒにミスリルは少々呆れていたが、確かにミスリルの知り合い
の中に“緑の悪魔”の異名で呼ばれるゴジュラスギガとそのパイロットがいた。
彼等なら戦力としても申し分無いだろうが…いない者に頼っても仕方が無い。
「もう敵はここまで来ているんだ。今ここにいる我々だけで何とかするしかあるまい。」
「そうですね。と言う事で…。」
ミスリルは自身の近くにいた他の傭兵に大龍神ごと顔を向けた。
「そこの皆さん申し訳ありませんがちょっとそこ空けてもらえませんか?」
「え?」
「別にいいけど…何するんだ?」
「こうするんです。」
ミスリルは大龍神のキャノピーを開き、他の傭兵が退いて出来たスペースに二つの
カプセルを軽く放った。直後にそのカプセルから白銀のデススティンガーと武装強化型の
セイスモサイルスが現れるワケである。

35 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 19 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/09(土) 23:59:27 ID:???
「ゲェ―――――――!! いきなりデススティンガーとセイスモが出た――――!!」
「ポ○モンか!?」
「違います! “カプセル機獣”です!!」
「ゲェ―――――――!! 何その某光の巨人が持ってそうなの!!」
確かに事情を知らない者が見たら驚くのは仕方が無いだろう。ミスリルはさりげなく
ゾイドを微小化させてカプセルに収納する技術を持っているのだが、それによって二体の
ゾイドを予備戦力として“カプセル機獣”化させていた。その内の二体が先に登場した
デススティンガー“大蠍神”と武装強化型セイスモサウルス“大砲神”である。
これらは元々ミスリルの母親(開発者とも言う)であり、SBHIシリーズの3号機に
あたる“ハガネ”専用機として作られた機体の同型で、ロボットが操縦する事が前提の
設計なので生身の人間では操縦出来ない為に基本的には無人機として使用され、
大規模戦が必要な際に大龍神の支援機としてこれまでもさりげない活躍をしていた。
「大蠍神は地中からの奇襲で敵前線をかき回して! 大砲神はスペースホープ号近辺に
固定して砲台として敵を迎え撃って! おねがいしますね?」
ミスリルが二体にそうお願いすると、大蠍神・大砲神はそれぞれに従い行動を開始する。
「スゲェ! あのロボ女、セイスモはともかくデススティンガーまで飼いならしてる!」
傭兵達は口々にそう驚いていたのだが、いつまでもそうしているワケには行かない。
彼等もまたスペースホープ外宇宙移民船団を守る為に戦わなければならないのである。
「とりあえずこれから出撃しますが…ハーリッヒさん? これからの戦いも取材する
つもりなのは分かりますし、私が止めようとしても無駄でしょう。ですけど…本当に
危なくなったら逃げてくださいよ。」
「当然! 私を誰だと思ってるの!?」
ミスリルはハーリッヒを気遣うつもりで言ったのだが、ハーリッヒは自信満々に
答えるのみであった。ならばもう何も言うまい。このまま出撃するのみ。
「ようし! 総員出撃! スペースホープ号外宇宙移民船団の記念すべき門出を
何としても守るんだ!」
「オオ―――――!!」
覆面Xの号令に呼応し、ミスリル達を含めた傭兵達は一斉にスペースホープ号及び、
各要塞型ギルタイプから発進して行った。

36 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 07:44:03 ID:???
「そろそろ登校時間ですね?今日からは護身用に羽々斬を持って行っていいですよ。
その代わり…金属製ではありませんが立派な小太刀です。
緊急時以外振り回すのは厳禁ですよ。後登校したら…
下校まで職員室に預けるように。」
「は〜い。じゃあ行ってきます。」
「どうぞ。行ってらっしゃい。」
ビップな当校風景にイドが消えるのを確認した後…
三人は警部を交えて情報の整理を開始する。

一時間ほど状況の説明を受けたところでファインがこの話題を振る。
「警部。マネキンを処分したと言いましたが…?それらは何処に?」
「確か接続部からバラして各パーツ毎に別々の倉庫に。
スペースチタニウム合金のコンテナなので破壊して外に出るのは…。」
「やらかしたわね。」
「そうですねぇ…コンテナの型番はなんですか?急ぎです。」
ミレッタとファインが表情を険しくして聞いてきたことで、
エリックにも最悪の状況があり得ることを理解できたらしい。
「NHー54の2107年度制作のものです…って!まさかっ!?」
「ええ!その真逆ですっ!帝国への反抗仕様で内側から開けることが可能です!」
四人は素早く身支度を済ませると外に止めて在るパトローバーに跨り、
海岸線の倉庫街へ急行する事となった。

ライガーゼロイクスの鹵獲。その為に準備されたのがNH−54型の特殊コンテナ。
コマンド兵が内部に潜み重要そうに搬送して帝国が接収するのを待ち…
その後秘かに内部のコマンド兵が展開。それによりイクスを擁する帝国の偵察基地。
それを丸々一つ制圧に成功したことは共和国市民の間でも語り草になる作戦だ。
そこで使われた可能性が或る。それだけで充分最悪の事態が予測できうる。
警察用のパトローバーは最高速度がバトルローバーよりも遅い。
高々20km/h程度のものだがそれでも焦るには充分の速度差である事は間違いない。
しかしその前に事件が起こるのはそこではなかったりする。
正体の解らぬ人形使い?は既に次の手を別の場で講じていた。


37 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 07:46:07 ID:???
「おはようございますイドちゃん。」
「おはようミーちゃんマーちゃんシーちゃん。」
「おっはよ〜イドちゃんミーちゃん。」
「おはよう。イドっちミッチー。」
イドは名前が二文字なので略しようが無い。しかし友達らしい三人はそれぞれ…
略されている。仲のいい証拠だがミーちゃん及びミッチー事ミーナ・ミルトン。
彼女が残りの二人に声を掛けられなかったのは、
単に双子のマリア・デュカリアと同じくシーナ・デュカリアが突然割って入ってきた。
そんな理由からだ。
「おはようございますご両人。今日も元気一杯ですね?」
「そうそう私達から元気を取ったら唯の電波姉妹じゃないw」
「おねぇ!電波は酷いよ!」
シーナがマリアに非難の声を上げるが姉は全く気にした様子はない。
カラカラと笑って逃げている。

本来ならビップ待遇もなく羽々斬をイドが持っていることが無いのが普通の風景。
それを立ち並ぶビルの一つの何処かで当校する学生達に害意の目を向けている。
しかしその存在は、
次の瞬間思わずその場から逃げ出すと言う怪しさ大爆発の行為を執らされた。
「何だ!?あのメスガキ共…真っすぐこっちを見て居やがった!くそっ!
こっちは金を貰って手伝ってるだけだっての!」
舌打ちしながらどう見ても町のチンピラAとか言われそうな男は事を起こす。
その視線が合ったメスガキ共は当然イド達四人の事だ。

「…ミーちゃんマーちゃんシーちゃん。走って!」
羽々斬を構えイドは足を止める。腰の少し上辺りから衣服の外に放熱用の極細の糸。
元々大して珍しい風景ではない。部族毎に身体的な違いが有ったりするこの星の人々。
別部族間での交配による新生児の数パーセントの確立で異形が産まれる。
そんな経緯からイドの本来は全く違う意味でのものも特に隠し立てする必要がなく、
当校初日でオーバーヒートを晒したため既に周囲の興味の対称から離れている。
しかしこれの正体は髪の毛程の細さの触腕。放熱ばかりではなく攻撃にも使用可能。
程なく飛んで来た数多の石飛礫を全て羽々斬と触腕で叩き落とした。

38 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 07:50:56 ID:???
「あのガキ!あれだけの石飛礫でも無理なのかよ!
あいつ俺をだましやがったなっ!」
「ほ〜う?誰が坊やをだましたってぇ?」
「なっ!?…あがががががg…。」
振り向いた若いチンピラはその口に銃口を差し込まれて涙を流している。
「これ以上騒ぐと引きたくない引き金を坊やが自分で引かせちまうぜ?」
その銃の先に居るのはそのチンピラと比べれば精悍なチンピラ。
頬に傷があり無精ひげに大口径の大型拳銃と狂犬と言う通り名さえ感じる。
「へい。銀次です全くお嬢と言いアニキと言い…こっちは取り敢えずです。
どうやら本星に金で雇われたバイトらしいんで引き取りに来てくだせぇ。」
「よし…手の者を回す。お前はそのまま学校まで張り付いとけ。
誰かを使って好き勝手にやらせて自分は本命を狙う…
奴も言っていただろ?”力”絡みは広くカバーできんと話にならない。
今回はどうやらエンチャンター(付術師)関係だ油断できない。」
「了解しやしたボス。」
銀次はチンピラを警察に突き出すとそのままゆっくりと通学していく生徒に続く。
不謹慎に手を振る四人の少女に手を振りかえすとビルの陰に消えようとする。

「ちっ!」
その矢先に銀次はその場から最大戦速で逃げ出す。
数秒前まで彼の居た場所にはゾイドの足が在る。
「逃げろっ!リビング・デッド・バタリオンだ!」
何処から仕入れたのか?キメラブロックを応用し、
ジェノザウラーを基本シャーシとした高機動鬼畜兵器。
収束荷電粒子砲さえ無いがその戦闘力はバーサークフューラーにすら匹敵する。
キメラコアとジェノザウラーのコアの相乗出力は凶器とか言う次元を超え、
有人以外の運用は現在制作したネオゼネバス帝国でも禁止されている。
しかし明らかに頭部にあるのは初期の無人種のもの。
今の今まで見付からなかった事を考えても遠隔操作されている事は疑いようは無い。
「くそっ!猟奇殺人の次は大量虐殺を始めようってか!?狂ってやがる…。」
本来護身用程度で弾薬の少ないAZAPマグナムリボルバー。
それを構えて一撃必殺を狙う他は手詰まりの状況となった。

39 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 07:53:34 ID:???
「ねえねえ!あれってゾイドじゃない!?」
シーナが亀顔のリビング・デッド・バタリオンを指差し叫ぶ。
「あれって無人機!」
イドの顔も真っ青になる。
あのタイプは頭部を叩き落としただけでは動きが止まらない。
しかもMJコネクト方式を使ったブロックス兵器なのでその程度なら直ぐ治る。
情報操作で共和国内ではブロックスは戦場でのリカバリは不能と報じられている。
これは個人レベルでのテロリズムや犯罪抑止の為のでまかせであり、
実際に戦場であ〜でもないこ〜でもないとガシガシ扱っていた保護者。
それを知っているので緊張と恐怖心をイドは隠せない。

件のゾンビゾイドは銀次を飛び越え登校する生徒たちを目標に走り出す…
そう思われたが突然つんのめって派手に転倒する。
その右足首から下は何かに撃ち抜かれジョイント部から外れていた。
「この一撃…アニキか!」
銀次の目線はこの区画では一番高いビルの屋上を向いている。

「ふう…間に合ったぜ。ファイン。お前さんに連絡回して助かったよ。」
通信機からパトローバーに跨った状態でその言葉を聞くファイン。
「いやあ〜こっちも大助かりですよ。やっぱり八つ目の異名は相変わらず。
頼りになります…ラグ。いえ今はビックボスですか?」
「よせよ…そいつはお前等のお陰で名乗れるんだよ。それよりも止めを!」
「了解…銀次ですか?急いで頭部を撃ち抜いてください。
後はもう一発こっちから狙撃してショック状態によるシャットダウン。
それで終わりです。」
通信を切るとAZ105oスナイパーライフルを構え狙いを定める。
微かに銃声が聞こえたと同時に引き金を引くと…
遠くで鋭く甲高い金属音が木霊し程なくして、
「アニキ。機能の停止を確認しやした。やっぱり狙撃はお手のものですね。」
「よしてください。誉めても小遣いは出せませんよw」
かくして朝の第一ラウンドは幕を下ろす。
しかしこれが別のゾイドであったら?誰しもそんな事は考えたくも無い。

40 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 07:56:23 ID:???
倉庫街。
昔から如何わしいことは港から…と言う事で警察の監視網は鋭い場所の一つ。
例のコンテナはここの幾つかの場所に分けて置いて在るらしい。
エリックにも何処にどのパーツがあるか?そこらの連絡は届いてなく…
結果として目的である右手と左手のコンテナ。二つを探す作業に入る。

さすがにセット販売での行動には限界があり二手に分かれての行動。
ファインとジョイス。ミレッタとエリックの組み合わせとなる。
「なんで私と警部が?」
「お嬢様しょうがありません。私と警部ではいざというときに手がでない可能性。
私とお嬢様の場合は犯人が居た場合は逃げられる危険性があります。」
「ぷ〜…さあ警部!さっさと行きましょう!」
「はいはい。」
ちょっと不機嫌そうな素振りをして東側に向かうミレッタとエリック。
それを確認してファインとジョイスは西側へ向かう。
その途中…
「ジョイスさん…?貴方は…何か使えますね?
身の熟しで私達同様ガイロス式を使えるのは解ります。
でも他にもまだ扱えるものがあるのでは?」
「いやはや…お目が高い。実は趣味でムエタイと執事式を少し。」
成る程とファインは思う。
執事式と言う奴は特別中の特別な格闘術で、
主人の命と自らの職務を全うすると言う事のみに特化した特殊な技。
右手にトレーを乗せたままで一小隊クラスの特殊部隊を鎮圧できる。
そんな証言がまかり通る特別中の特別なものである。
扱える者は少ないが個人的な認知の範囲で六つほど流派が在るらしい。
そう成ればジョイスの全身は凶器と言って差し支え無い。

「遅かったわね…。もう右手は逃げ出してる。」
右手が閉じ込められていたコンテナは上げ底をこじ開けられ、
ロックを内側から外し逃走した後だった。
残っている右手は時間稼ぎの為のトラップと言ったところだろう。

41 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 08:00:01 ID:???
「どうやらこっちは間に合ったみたいですね。」
丁度今左手の群れがコンテナから這い出てくる最中だった。
「こっちはとはもしかして?」
「ええ彼方は既に逃げ出していたそうです。それで…」
「ああ…来ましたね右手が助けに。どういたしましょう?」
「当然各個撃破です。」
「承知いたしました。では!」
ファインとジョイスはマネキンの左手と右手に襲い掛かる。
とても間抜けな兵士と執事がマネキンしかも腕だけの群れに向かっていく姿。
しかし当の本人達は至極当然の様に大まじめであり、
蠢くマネキンの腕の群れは気味が悪い…だが数分と掛かること無く決着が着く。
始めは真面目に格闘戦を挑んでいたファイン達であったが…
一分を過ぎたところで余りの数の暴力の前にファインが飽き、
銃でコンテナの接続部を破壊し押し潰すと言う暴挙にで片を付けたのであった。

「で…あの右手は放っておいて大丈夫なんですか?」
エリックは動かなくなった右手を持ち上げてミレッタに聞く。
すると…
「私は人形使いよ。普通の付術士程度のエンチャントなんてゴミ同然ですよ!
ちょっと力を充ててやればほら!この通り〜♪」
自信満々に私の言う前でそのマネキンの右手は動くことを止めて床に落ち割れる。
「相手が人形であるなら人形使い同士でないと一方的に勝つのは当たり前。
掛けて後は自動操縦なエンチャントは根本から違いますから…
見た目と基本の術式体系はか〜なり一緒ですけど。」
まだ動ける右手が宙を舞うがそこにはミレッタの左指が弾丸の様に突き刺さる。
「それに人形使いのマリオン(自作人形)は持ち主の力の在る限り…
下手な合金よりも硬くSTGのホーミングレーザーよりも正確無比なの♪」
エリックは拍手をする他ない。
「急ぎましょう多分中核になる令呪は頭部か背中の内側にある筈です。」
「じゃあなんでお二人さんは手を探しに走ったんですか?」
エリックの質問は当然だ。その答えは…
「手が動けば外側から開コンテナをけられるでしょう?物理的に。」

42 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 08:01:56 ID:???
「令呪が胴体か頭にあるですと?」
「はい。偽装するなら樹脂を固めてる最中に…
ある程度の硬さになったら令呪を貼り付けて埋めるんですよ。
そうすれば表側表面はおろか裏側からも発見されません。
そして…この方式でマネキン人形を揃えた場合には…
同じ製造日、若しくは同じ工場で生産されたマネキン人形にコピー令呪を施し、
大量のマネキン人形を一つの令呪で運用可能ですよ。」
走りながらファインはジョイスに大量の物質を同時にコントロールする方法を教える。
しかし少しして…ファインはこんな事ぐらい知っているんだろうな。
そう思いそのまま言わせてくれたジョイスに感謝した。
何か口に出していないと悪い方向へ悪い方向へ考えが向いてしまうからだった。

「おっ?お二人さんもご到着かい!」
微妙に間違ったテンションでミレッタがファインとジョイスを出迎える。
「首尾は?」
「下の下。こっちは逃げられていたわ。そっちの首尾は?」
「同じく下の下です。面倒になって倉庫一つが今後一週間は使えません。」
「あんた達…始末書を書く方の身にもなってくださいよ…トホホ…。」
エリックががっくりと肩を落とすが直ぐに立ち直ると…
「居ますかね?令呪付きか本星?両方居てくれたらラッキーなんですけど。」
「それはこれからでしょうね?お嬢様?マリオンの調子はどうですか?」
「私は大丈夫。マリオンギアームの方はさっき左指を使っちゃったから左は駄目ね。
私はチャージが苦手だから一度使いきるとこの通りだし…。」
そう言ってミレッタが見せた左腕は手首の辺りから下が視覚偽装されていない。
力を使いきったと言う意味がよく解る程力が抜けて脱力し海風に遊ばれている。
「繰り糸の方は確り付いているみたいですけど何か問題でも?」
「大ありなのよ…力が無ければ木彫りに樹脂コート。剛性に難有りで不安。」
「さいですか…なら踏み込むのは私からみたいですねっ!」

倉庫側面の扉を蹴破り素早く倉庫の中央へ駆け込むファインだったが…
その視線の先にはファインは元より人形使いのミレッタでさえ予測が不可能。
そんな事態が起こっていた…ではなく起こっている。現在進行形だった。

43 :形使い ◆5QD88rLPDw :2008/02/14(木) 08:04:16 ID:???
「お客様ですか?少々お待ちください…もうすぐ後始末も準備もできますので。」
後に付いて入ってきたミレッタ、ジョイス、エリックもその光景に絶句する…。

そこに存在したのは大量の分割マネキン人形とその中心に…女性の様な姿。
非常に露出部分が多い。とか言うより襷状の布束を幾つか肩に掛けているだけ。
しかし直ぐにその襷状の布の意味とそれによって多少隠されていた姿…
それに異常が有ることに気付く。
そこに居たのは現実離れした容姿の女性の人形。
それも人体模型のサイズであり球体関節を隠しもせず何かを行なっているのだ。
「驚きましたか?私の名はアニマ・ハイランド。可笑しいでしょう?
人形なのにファミリーネームまで有って…でも驚くのはそこではないのですけどね。」
優しく笑う人形。ついでに言えば血色まで良く健康体その物。
そして自分の背中をくるりと見せシリアルナンバーと名前を見せる。
「…読み違いが激しいみたい。エンチャンターだと思っていたのに、
出てきたのはマスターレスマリオンなんて…。」
ミレッタの呟きを聞き取ったのだろう、アニマは答える。
「いいえ…私はマスターを失ってなど居りません。そもそもマスターは…
私が動き出した時点で既に居りませんでした。生死も不明ともなれば、
マスターレスというよりもオートマリオン(完全自立人形)と言うべきでしょう。」

アニマがマネキンの竜巻の中に居るため攻撃は当然意味が無い。
手出しができない四人を後目にアニマはマネキンを歪な組み合わせに仕立て上げる。
「何故殺人など行なったのですか?しかも無差別に!」
「それも違います。私は誰の命令も受け付けませんし、自我も殆どありません。
私にできる事は令呪を奪い取り自らを保存することだけです。
お話は終わりですか…?それなら…後始末をお願いしたいのですが?」
殆ど一方通行で話を続けるアニマ。
「邪気…唯の令呪ではなくて呪いの藁人形のデラックス板だったみたいですね…。」
うねり、指を動かし、本来の目を持たないマネキン人形のゴーレム。
それはアニマの拘束を脱すると目の前の四人に襲い掛かる。
空中に浮き停滞していた手足や頭部を惜しげなく飛ばしてくるのだから…
攻撃された方は堪ったものではない。

44 :ぽよぽよ君:2008/02/14(木) 17:25:57 ID:???
「ああ・・・明るい・・・私は何をしていたのだ?ここはどこだ・・・?」

はるか未来の惑星ZI・・・そこではゾイドを戦闘競技に使用する
「ゾイドバトル」が開かれていた。
現在、ライオン型とティラノ型の機体が優勝を賭けて飛び交っている。

「昔の俺だと思うな!いくぜライガーゼロファルコン!」
「こっちも別物として蘇ったんだ!シュトゥルムテュランの力を見せてやる!」

かつて二年前、同じ舞台で優勝を争った二人がそこにいる。
ビットクラウドとベガオブスキュラ。

「どちらも凄い戦いだ・・・目が付いて行かん」
「あの二体はオーガノイドシステム搭載ゾイド。戦うごとに強くなる。
 ついにここまで化け物じみた強さになったか・・・
 しかし奴らアルティメットXはまだまだ性能を上げ続けるのだ。永遠にな」
「え、永遠・・・」

無限。気の遠くなるようなその言葉は、目にした物を驚愕させるしかなかった。

45 :ぽよぽよ君:2008/02/14(木) 17:36:25 ID:???
永遠、無限、絶対。
はるか昔の「オーガノイド」という技術により実現したその禁断の力。
その力を余す事無く使いこなす二体のゾイド、ゼロとフユーラー。
そのゾイドの宿すオーガノイドシステムは運命でもあるのだろうか、
何かまた別のオーガノイド的存在と惹かれ合う。

数千年の眠りから覚めた男・・・頂上決戦が行われている場所より遥か彼方にいる彼の存在を目覚めさせたのだ。
「例えようも無い大きな力がぼくを呼んでいる・・・」
科学で証明できない第六感とでも言うべきか。
男は引き寄せられるように至高の決闘が続く地へと足を運んでいった。
自分の体と融合させたゾイドの足で一歩、一歩と。
自分はゾイドなのか人間なのかわからない。
自身は人間の筈だ。しかし意思で動かす体は鋼鉄の竜だった。
もう何が何なのかわからない。
判っている事は、得体の知れぬ大きな力に吸い寄せられるように
独りでに体が動きゆく事だけだった。

46 :ぽよぽよ君:2008/02/14(木) 17:55:12 ID:???
「ぼくは何を求めているんだ。何故歩くんだ。」
考えてもわからない。ただ一歩一歩知らないものを求め前に進んでゆく。
その時、男の頭に激痛が走った。
ゾイドの力を活性化させるシステムの概念が突如彼の頭を横切ったのだ。
「今のは何だ?妙に懐かしくわずらわしい・・・」
機械か人間かわからない彼は歩き続けた。永遠とも思える無意味な行動。
しかし彼はついに目的地へと辿り着いたのだ!

光り輝くすがすがしい青空のもと。
大勢の観衆が熱狂して叫んでいる。応援、歓声が響き渡る。
英雄を讃えるような賛歌が辺り一面を塗りつぶしている。
その先には今まさに輝かんとする二体のゾイドがひしめきあっていた。

「──────────────────!」
男の脳内に閃光が走った。忘れていた何かを思い出しつつあるのがわかる。
同時に封印されていた自己の闘争本能が突如として沸きあがってきた。
頭の中が溢れ出す情報で埋め尽くされて行く。
男にとって自分は誰なのか、何を求め彷徨うのか、
もはやそのような事は既にどうでもよくなっていた。
今、彼の目の前にあるのは戦いと破壊。

「──────殺せ!!!」

その欲求しか見えなかった。

47 :名無し獣@リアルに歩行:2008/02/14(木) 19:30:50 ID:???
↑変な小説書いてねえで、さっさと回線切れば?

48 :名無し獣@リアルに歩行:2008/02/14(木) 19:46:18 ID:???
ぽよ豚=冬厨

49 :名無し獣@リアルに歩行:2008/02/14(木) 23:47:36 ID:???
あきた ねる

50 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 20 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/16(土) 12:44:11 ID:???
『敵機の出撃を確認! こちらも発進願います!』
ライオ共和国軍ジャイアントスフィンクス艦隊においてその様なアナウンスが流れ、既に
各搭乗機内で待機していたルイス、バングラン、レイアは改めて操縦桿を握った。
そしてジャイアントスフィンクスの巨大な口が開き、そこから日光が差し込む。
「よぉし! お前等出撃すんぞ!」
「了解!」
バングランの号令に合わせ、彼の搭乗するエナジーライガー、ルイスの“セブンズソード”、
レイアのヴァルキリーシーザー、さらにその他もろもろの各機ライオン型ゾイド軍団が
次々に出撃して行った。
「まずは航空隊が先制爆撃し、その後で重砲隊が先行して敵に砲撃を仕掛ける!
それが終わった後で俺達が突撃する! いいな?」
「了解!」
バングランの命令によってエナジーライガー、セブンズソード、ヴァルキリーシーザー、
その他の接近戦用ライオン型ゾイド達はいきなり突撃する様な事をせずに後方で待機し、
重砲隊のライガーゼロパンツァー、シールドライガーDCS、レオストライカーなどに
道を空けて先行させた。その上空をさらに航空爆撃隊のバイトグリフォンが飛んで行く。
「俺達の分も残してくれよー! 全部吹っ飛ばすんじゃねーぞー!」
後方待機の突撃部隊からはその様な声が聞こえていた。

『敵の第一陣はバイトグリフォンが多数! 対空迎撃お願いします!』
『各艦はバリア展開! 爆撃に備えよ!』
スペースホープ外宇宙移民船団側でもその様なアナウンスが響き渡り、スペースホープ号
を含め各要塞型ギルタイプはバリアを展開し、対空戦に秀でた傭兵達が一斉に迎撃に出た。

51 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 21 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/16(土) 12:45:56 ID:???
「策敵範囲内だけでも敵の物量は我々の10倍は下らんか…ライオ共和国め…本気で
スペースホープ外宇宙移民船団が世界征服でもやらかす気とでも勘違いしているな?
だがそうはさせん! そっちが圧倒的な“数”で来るならこちらは数を物ともしない
圧倒的な“質”を用意したのだ! 何としてもここは食い止めるぞ!」
「オオ―――――――――!!」
覆面Xの号令に傭兵達の一斉対空迎撃が始まった。大砲神や覆面Xのジェノブレイカー
その他様々な傭兵が持ち込んだデスザウラーやらバイオティラノやらバイオボルケーノ
やらの粒子砲が火を吹き、空一面に展開する敵バイトグリフォン隊を次々に消して行く。
続けてアイアンコングやディバイソンも弾をばら撒き、次々にバイトグリフォンが落ちて
行く。スペースホープ外宇宙移民船団の周囲は早くも墜落したバイトグリフォンの
起こした爆発によってさながら火炎地獄となっていた。しかしそれでも全てのバイト
グリフォンが落ちたワケでは無い。対空砲撃を避けきった機体が次々に移民船団各艦に
爆弾を投下して行くのである。
「一応バリアで全部防げた様子ですけど…それでも流石に何時までも食らいっぱなしは
不味いでしょうね!」
「そうだ! だからこそ敵が接近する前に叩かなくてはならん!」
移民船団の上空で大龍神・ファントマー・エアットはそれぞれにバイトグリフォンを
各個撃破していたが、またもアナウンスが響き渡った。
『敵の第二陣接近! ミサイルや長距離ビームを主体とした遠距離砲撃と思われます!』
そのアナウンスの通り、前方から多数のミサイルやビームが飛んで来ていた。
ライオ共和国重砲隊の誇るライガーゼロパンツァー、シールドライガーDCS、
レオストライカーによる一斉重砲撃だった。だが…

52 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 22 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/16(土) 12:49:32 ID:???
「そうはさせません! 全ミサイル解放! ドラゴンミサイル! シュート!」
ビームの方は他の者達に任せるとして、ミサイルの方は大龍神が何とかしようとする
つもりらしかった。そして大龍神の頭部から尾に至るまでありとあらゆる場所の装甲が
捲れ上がり、そこからおぞましい数のドラゴンミサイルが放たれたのである!
「お前一体どんだけミサイル持ってるんだよ!」
あんまりど派手すぎる全身ドラゴンミサイル一斉発射に味方の傭兵にさえ突っ込まれる
ミスリル&大龍神であったが、それだけに終わらない。何と発射されたドラゴンミサイル
の一発一発からさらに多数の小型ドラゴンミサイルが放たれ、さらにおぞましい数と
なってライオ共和国重砲隊側のミサイルに襲い掛かり、次々に破壊していたのである。
無論…それでも全て破壊するには至らなかったが、他の者でも十分に迎撃出来る程度しか
残っていなかったが為にそれほど問題では無かった。

重砲隊のミサイルが全て迎撃されてしまった事はライオ共和国側に衝撃を与えていた。
「こちらのミサイルが全部破壊された!? しかもその大半はたった一機のゾイドに
やられただって!? そんな事出来る奴は一体何者だ!?」
バングランは先行していた重砲隊の者に手当たり次第にそう怒鳴り付けていた。
そして重砲隊の者から話を聞いた時、彼の表情が大きく歪んだ。
「何ぃ!? 奴が…奴がいると言うのか!?」
「バングラン大尉! 奴とは!?」
バングラン大尉の狼狽振りは尋常では無いとルイスも思わず焦って問いかける。
「奴ら…一体どんな手を使ったのかは知らないが…あのロボ女を引き込んでやがる!」
「ロボ女…?」
「お前だって聞いた事あるだろうが! 何処の国にも付くわけでなし、個人で滅びの龍を
乗り回して世界中をのらりくらりと混乱させる胸っ糞悪いあの機械兵の出来損ない!
全く腹が立つぜ…ロボット風情が人間様を何だと思ってやがるんだ!?」

53 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 23 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/16(土) 12:51:37 ID:???
「そ…そうだ! 僕も今思い出しました! ドールチームのミスリルの事ですね!?」
「おうよ! まさか奴があちら側に付いていたとは驚きだが…考えようによっては好都合
かもしれねぇ! 何しろ滅びの龍の艦隊とロボ女の両方を一度に潰せるんだからな!」
「ハイ!」
「俺ぁやるぜ! 奴を絶対に倒してやる…ライオ共和国は俺がやっと見つけた安住の地
なんだ…あんな連中などに潰させはせん!」

バングランは元々ライオ共和国の出身では無く、他国から帰化した身である。そして
彼の元々の出身国の軍に所属し、まだ新兵だった頃に彼を厳しくも温かく鍛えてくれた
恩人が…とある戦いでミスリル&大龍神によって殺されていると言う過去があった。
無論それは戦争の一幕に過ぎず、ミスリルとて敵軍側に一傭兵として参加していただけで
ある為に非は無いのだが、バングランはミスリルに対する憎しみを忘れる事は無かった。

「よし! 重砲隊が撤退後、今度は俺達が突撃を仕掛けるぞ!」
「了解!」
「爆撃や遠距離からのミサイル砲撃が効かないとすると…俺達が奴等の懐に飛び込んで
やるしかない! 俺達の責任は重大だぞ!」
バングランの号令に基き、ルイスやレイア、その他突撃部隊に所属する接近戦主体の
ライオン型ゾイド各機が突撃の準備に取り掛かっていたが…
「うわあぁ!」
「ぎゃぁ!」
突然響き渡るライオ共和国軍兵士達の絶叫と爆発音。
「一体何が起こった!?」
「奇襲です! デススティンガーが地中から奇襲を仕掛けてきました!」
「何ぃ!?」

54 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 24 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/16(土) 12:53:26 ID:???
突如突撃前の突撃部隊を襲ったのは大蠍神だった。そして大蠍神は地中から地上へ
出たり潜ったりを高速で繰り返しながら次々にライオ共和国側のゾイドを斬り裂き、
叩き潰して行くのである。
「とにかく奴を何とかしろ!!」
たった一体の大蠍神のせいで早くも戦線は混乱していた。このままフォーメーションが
崩れた状態では敵に突撃を仕掛けても効果は半減となる。何とかして大蠍神に攻撃を
仕掛けようとするが、動きの素早い大蠍神に逆に翻弄されて行くのみ。だが…
地に潜った大蠍神が再び地上に出た時、ヴァルキリーシーザーのブレードが大蠍神を
襲っていた。とっさに大蠍神もシザースで受け止めるが、そのヴァルキリーシーザーは
レイアの搭乗する機体だった。
「許さない…父さんと母さんの仇…忌わしき魔蠍め…私は絶対に許さない!!」
その時のレイアの目は誰の目にも明らかな程憎悪に狂っていた。

大蠍神がミスリルの制御下に置かれる以前は誰にも制御不可能な暴走する悪魔だった。
いかなるパイロットであろうともあっという間に強烈な精神ストレスによって狂わせ、
発狂させ、精神を破壊し、時には脳そのものを破裂させた事もあった。元々ミスリルの
様なロボットが搭乗する事が前提である為に生身の人間の操縦は不可能なのが大蠍神なの
だが、先史文明遺跡から発掘した資料を基に大蠍神を作っただけに過ぎない人間はそれを
理解出来ず、ただいたずらに多くの人を犠牲にした。そして暴走する大蠍神によって
殺された人々の中には…レイアの両親の姿もあった。つまり、レイアが孤児となったのは
大蠍神の手による物なのである。

55 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 25 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/20(水) 00:28:56 ID:???
「どうした!? また暴走して多くの人々を無意味に殺すつもりか忌わしき魔蠍!?」
レイアのヴァルキリーシーザーは超高速で前脚のブレードやカッターで大蠍神を
斬り裂こうと果敢に挑むが、大蠍神は右腕部だけでそれを軽くさばいて行く。
レイアは一方的に大蠍神を憎んでいたが…ミスリルの制御下におかれ、彼自身もまた
ミスリルの為なら例え火の中水の中と言う位にミスリルに心酔している大蠍神にとって
レイアなど眼中に無い。所詮は敵兵A程度でしか見ておらず、彼はミスリルに命令された
敵前線を混乱させると言うミッションを忠実にこなそうとするのみだった。
「待てぇ! 逃げるな! この忌わしき魔蠍!」
「レイア!」
レイアのヴァルキリーシーザーは大蠍神の追跡に入り、ルイスはそれを止めようとしたが、
そこをさらにバングランが止めた。
「あのデススティンガーはレイアに任せよう! 本命はあっちの滅びの龍だろう!?」
「ハイ!」
「心配するな。レイアはあんなのに負けはせんよ! それはお前が良く分かってるだろ?」
ルイスのセブンズソードやバングランのエナジーライガーを含め、フォーメーションを
立て直した各ライオ共和国軍ゾイド達は次々にスペースホープ号へ向けて突撃を開始した。

『敵突撃部隊が接近中! 接近戦を挑むつもりです!』
「迎撃しろ! 何としても各艦に近付けさせるな!」
「了解!」

56 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 26 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/20(水) 00:30:39 ID:???
ライオン型特有の機動性でどんどん距離を詰めてくるライオ共和国軍突撃部隊に対し、
スペースホープ外宇宙移民船団防衛傭兵部隊はデスザウラーを初めとする粒子砲装備型
ゾイドを前面に押し出し、各種粒子砲の一斉砲撃をお見舞いした。数はライオ共和国の
獣王師団が勝るが、質は傭兵部隊の方が上だ。波の様に押し寄せる粒子砲によって
ライオ共和国突撃部隊のライガーゼロやブレードライガー、レオゲーターなどが次々に
消し飛ばされて行く。しかし全てが消滅したワケでは無い。数はライオ共和国側が圧倒的
優位であるが故の人海戦術ならぬ獣海戦術で後から後からどんどん押し寄せて来る。
「あらら〜…まだまだあんなに沢山いますよ。」
「恐らくは本当に総力を挙げて仕掛けて来ていると思われる…。」
上空から敵突撃部隊の様子を見ながらミスリルは呆れ、スノーは冷静に感想を述べていた。

「敵の砲撃に怯むな! スピードを生かして何としても敵に肉薄しろ!」
突撃隊の中でも先陣を切っていたエナジーライガーバングラン機の中でバングランが
突撃隊に加わる周囲の皆に、そして自分自身に言い聞かせるべく大声で怒鳴り上げた。
だがその間にも無情にも多くの仲間達が荷電粒子砲やバイオ粒子砲、プラズマ粒子砲の
渦の中へと消えて行くのである。
「クソッ! よくもあれだけの荷電粒子砲搭載機を用意しやがって!」
「ですが敵に肉薄して乱戦に持ち込めば敵だって荷電粒子砲は使えなくなるはずです!」
「おうよ! だからお前等も何としても奴等に接近しろ!!」
と、その時だった。彼等の上空を多数のミサイルが追い抜いて行き、スペースホープ
外宇宙移民船団各艦に直撃爆発していた。
「お! これは支援砲撃か! よし今の内に突撃だぁぁ!」

一度撤退した重砲隊が弾薬の補給を済ませて再び戦線に復帰、砲撃を行って来ていた。
そして次々にライオ共和国軍側後方のジャイアントスフィンクスの口から次々に
ライガーゼロパンツァーをはじめとする重砲型ライオン型ゾイドが発進して行く。

57 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 27 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/20(水) 00:33:33 ID:???
「やはり雑魚を一匹一匹相手にしていたのでは埒が明かん! おーいミスリル君!
あの敵後方の巨大ライオン型要塞を何とか出来んかね?」
「え? ああ…あの大きい奴ですね? やって見ます!」
覆面Xの頼みに応え、ドールチームは攻撃目標をジャイアントスフィンクスへ移行した。
「大砲神は敵巨大母艦の四肢に砲撃を集中して動きを止めて! 後は私達が接近して
トドメを刺すから!」
ミスリルの指令により、それまで突撃部隊相手の砲撃を行っていた大砲神が標的を
敵後方のジャイアントスフィンクスへと変更。超集束荷電粒子砲を発射し、次の瞬間
細くも高密度に絞り込まれた荷電粒子の塊がジャイアントスフィンクスの内の一体の
右両脚を撃ち抜いていた。

『ジャイアントスフィンクス三番艦が被弾! バランスが取れません!』
『なんとかして持たせろ! 近くにいる二番艦、四番艦にフォローさせても構わん!』
大砲神の超集束荷電粒子砲はジャイアントスフィンクスの右両脚の関節部分を正確に
撃ち抜き、それによってバランスが保てない状態にされた為に近くにいた同型艦に
何とかフォローさせて貰っていた。だが…
『敵機接近! 先程我が軍のミサイルを次々に撃ち落した奴です!』
『何ぃ!?』

「それそれそれぇ! 行きますよぉ!」
大龍神を先頭に、ファントマーやエアット、その他の傭兵が搭乗する飛行ゾイド達が
ライオ共和国重砲隊の対空砲撃や空軍バイトグリフォン隊の迎撃を物ともせずに突撃して
いた。そして先陣を切った大龍神が先程の大砲神の砲撃によって大きくバランスを崩した
ジャイアントスフィンクス三番艦のブリッジの存在する頭部へ、チタン・ミスリル・
オリハルコン特殊超鋼材、略して”TMO鋼“製の破壊爪、”ドラゴンクロー“を突き
立てるのである。TMO鋼の超強度に加え、大龍神の恐るべき大パワーがジャイアント
スフィンクスの重装甲を紙の様に引き裂いて行くが、それだけでは無かった。

58 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 28 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/20(水) 00:36:28 ID:???
「必殺! ドラゴンプラズマクラッシャァァァ!!」
ドラゴンクローから超高圧電流を流し込む荒技、“ドラゴンプラズマクラッシャー”を
放った。忽ちジャイアントスフィンクスの全身がスパークを起こし、さらにエンジンや
全身の武器弾薬に引火、その巨体は忽ち大爆発を起こし、フォローの為に接近していた
二番艦、四番艦にも大きなダメージを与えていた。それでいて大龍神は平然としている
のでますます性質が悪い。主人公とはとても思えんえげつなさである。

『ジャイアントスフィンクス三番艦轟沈! 総員退避!』
ジャイアントスフィンクス三番艦の爆発四散によって飛び散った大量の破片は周囲に
いたライオ共和国軍ゾイドにも大被害を与えていた。数百メートル級の巨体を誇っていた
のだから、その分爆発した際の破片も巨大だ。故にその破片に潰されるライガーゼロ
パンツァーなどが続出し、皆必死になって逃げ回っていた。

ジャイアントスフィンクス三番艦轟沈の報告は突撃中のバングラン達の所にも届いていた。
「何ぃ!? ジャイアントスフィンクス三番艦が沈んだ!?」
「それは本当ですか大尉!」
「ああ…しかもそれをやったのはあの胸っ糞悪いロボット女だ…。全く最低だぜ奴は…。」
「ならこちらもその分のお返しをするべきですね!」
「おう! 奴等の旗艦に取り付いてエンジンに一発刀でもブッ刺してやれルイス!」
「了解!」
バングランのエナジーライガー、そしてルイスのセブンズソードはスペースホープ号を
目標とし、突撃を仕掛けた。

ライオ共和国軍陣地後方ではライオ共和国空軍のバイトグリフォン隊とスペースホープ号
防衛傭兵混成部隊の壮絶な大空中戦が展開されていた。やはり物量面ではライオ共和国が
遥か上。しかし傭兵部隊は質を持って互角以上に戦っていた。

59 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 29 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/25(月) 00:11:39 ID:???
空軍との戦闘は他の傭兵に任せ、ミスリル&大龍神は低空飛行を行いながら対艦戦闘に
勤しんでいたが、そこでジャイアントスフィンクスの巨大な前脚が襲い掛かるのである。
『三番艦は奴に破壊された! 奴は何としても破壊せよ!』
ジャイアントスフィンクスの二番艦と四番艦がそれぞれ巨大な前脚を持って大龍神を
潰そうとする。元々数百メートル級の巨大母艦と言うだけあって爪だけでも大龍神以上
の巨大さを持っていたが、母艦であるが故に内部にいるクルーの安全も考慮してか、
どうしても動きが鈍重になってしまっていた。だからこそ逆にスーパーが付く程強靭な
ロボットであるミスリルが搭乗する事が前提であるが故に生身の人間では危険以前に
即死は必至な急加速急制動が可能な大龍神は簡単にかわしてしまう。そして前脚のクロー
攻撃を回避されたジャイアントスフィンクスはそれぞれバランスを崩して倒れそうになり、
二番艦と四番艦はそれぞれに接触し、激突。そうなれば艦内にいたクルー達も衝撃に
よって放り飛ばされ、艦内の壁に衝突したりともう艦内は阿鼻叫喚となっているかも
しれない事は想像に難くは無かろう。その後で二番艦&四番艦のブリッジを大砲神の
超集束荷電粒子砲が撃ち抜いて行くのだからもう泣きっ面に蜂である。

『二番艦・四番艦も轟沈! 続いて五番艦・六番艦もやられています!』
ライオ共和国軍側にその様なアナウンスが響き渡り、ライオ共和国軍後方は大混乱に
陥っていた。傭兵達は誰もが覆面Xに選ばれた者達だ。だからこそ例え名前が公表されて
いなくとも、誰もがドールチームにも負けない猛者達だったのである。その上彼等は
一見それぞれが好き勝手に戦っている様に見えるが…さりげなく覆面Xに統制され
さながら一個の軍隊としての働きを見せてもいた。

「サイキックミサイルボンバー!」
アールス&ゴルヘックスがさり気なく前線にまで躍り出ており、敵の砲撃は精神波増幅
装置によって何十倍何百倍にも強化した自身のサイコキネシスによって捻じ曲げ、さらに
同じくサイコキネシスによって敵ゾイドを持ち上げ、それを高速で飛ばし、質量砲弾化
させる事でジャイアントスフィンクスに次々ぶち当てると言うこれまたかなりえげつない
戦法を行っていた。

60 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 30 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/25(月) 00:13:15 ID:???
「わーすごいすごい! 超大型艦がゴミの様に破壊されていくわー!」
ハーリッヒ&スクープマスターもある時は後方に、またある時は最前線まで行ったり
来たりしながら戦場の様子を事細かくカメラに撮影していた。その中には当然砲弾が
雨あられと降り注ぐ様な場所もあったし、ライオ共和国側からの攻撃を受ける事も
あったのだが、それでいて少しも被弾していないあたり、流石はミスリルをして
“地上最強のジャーナリスト”と言わしめるだけの事はあった。

ジャイアントスフィンクスがとんどん破壊されて行っている事実は当然なおも
スペースホープ号へ突撃を仕掛けていた突撃部隊にも報告されていた。
「バングラン大尉! 後方が大変な事に…。」
「ふり向くなルイス! 俺達の任務は敵陣への突撃だ!」
「りょ…了解!」
バングラン大尉が歯軋りしている事を通信機を通じてルイスも感じていた。本当は彼も
また後方を救援に行きたいと考えているのだろう。だが、それに耐えて今は突撃を
行っている。だからこそルイスもまたこの作戦は何としても成功させなければならないと
強く心に言い聞かせていた。

大蠍神は地中に出たり入ったりを繰り返しながらの敵への攻撃をなおも続け、それを親の
仇の様に…と言うより本当に親の仇として狙うレイアのヴァルキリーシーザーの追撃をも
まだ続いていたのだが、やはり大蠍神にとってレイア&ヴァルキリーシーザーなど眼中に
入っていない様子だった。
「くそっ! 私を無視するなぁぁ!!」
レイアは物凄い形相となり、ヴァルキリーシーザーの背負うツインインパクトキャノンを
至近距離から大蠍神の頭部へ撃ちまくった。しかし流石に大龍神のTMO鋼製の装甲には
勝るべくも無いが、大蠍神の装甲だって堅い。至近距離からの連撃を平然と受け流し、
その直後にはヴァルキリーシーザーを邪魔だと言わんばかりに右腕で払い除けていた。

61 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 31 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/25(月) 00:15:52 ID:???
「くっ!」
大蠍神の大パワーによって払い除けられれば軽量なヴァルキリーシーザーは忽ちの内に
吹っ飛んでしまうが、それでもレイアはヴァルキリーシーザーを綺麗に着地させ、再び
大蠍神へ突撃させる。だが、親の仇を討つ為とは言え完全に熱くなっているレイアとは
対照的に大蠍神はクールに周囲に展開する他のライオン型ゾイドを次々に切り裂き、
潰し、吹き飛ばし、破壊して行った。
「このぉぉぉぉ!! 私を嘗めるなぁぁぁ!!」

ライオ共和国軍後方に各傭兵で各自に改造したと思われる飛行型装備のデスザウラーや
マッドサンダーが次々に降り立ち、後方で支援砲撃を行っていた重砲隊のライガーゼロ
パンツァーやシールドライガーDCS等を、そしてジャイアントスフィンクスさえも
次々破壊すると言うさながらもう傭兵無双状態になっていたのだが、そこでミスリルに
覆面Xからの通信が来ていた。
「そちら側の戦力も十分充実して来たし、戦闘の方も上手く行ってるからミスリル君達は
そろそろ戻って来てスペースホープ号のフォローを頼む!」
「はい! 分かりました! それじゃあティアちゃんにナットウさん行きますよ!」
「分かったのよ!」
「了解…。」
それまで上空でバイトグリフォン隊と戦っていたファントマーとエアットが大龍神の所
まで戻って来た。そしてそれぞれを大龍神と連結させる。一体何を始めるのだろうか…
「行きますよ! 二人ともしっかり掴まっていて下さい! ここで私とはぐれたら二度と
戻れませんよ! それでは行きます! ドラゴンワープ!!」
大龍神の正面空間が歪み、超空間への穴が開かれる。そこへ飛び込み目標地点にて一気に
跳躍する空間転移こそが“ドラゴンワープ”。大龍神は通常飛行でも滅茶苦茶速いし、
普段ならそれで十分なのだが、本当に切羽詰っている時はこれを使っていた。
と言うか、今まで説明部分でワープの類が可能と言っても実際に使う所は無かったので
ここが始めて使う場と言う事になるのだろうか?

62 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 32 ◆h/gi4ACT2A :2008/02/25(月) 00:18:32 ID:???
スペースホープ号及び、外宇宙移民船団を構成する各要塞型ギルタイプ周辺にライオ
共和国軍突撃部隊が肉薄し、壮絶な接近戦に移行していた。
「よし! これで奴等は味方の被害を気にして荷電粒子砲は撃てないはずだ!
今の内にスピードを生かして滅びの龍に取り付き…んぎゃ!」
そう言っていたブレードライガーパイロットの一人が愛機ごと傭兵搭乗のバイオティラノ
の脚によって踏み潰されていた。確かにここまで肉薄されてしまえば粒子砲系の大火力
兵器や広域破壊兵器の類は使えない。だが彼等は腐っても覆面Xの選んだ傭兵だ。
格闘戦でも十分に強い。デスザウラーの尾がライガーゼロを数機まとめて薙ぎ払い、
ゴジュラスギガが両手でそれぞれシールドライガーの尻尾を掴んで振り回し、まるで
ヌンチャクの様に別の敵を殴りつけて行く。格闘戦ならスピードに秀でた自分達の方が
有利だとライオ共和国軍兵達は考えていただけに、その予想を裏切る展開にこれまた
阿鼻叫喚の光景が展開されていたのである。確かに数ではライオ共和国に分があるが、
質は傭兵軍団の方が遥かに上であった。これもまた傭兵無双である。

しかし…傭兵無双と化した状況にあってもどうにかスペースホープ号に取り付く事の
出来た者がいた。バングランのエナジーライガーとルイスのセブンズソードである。
そして二機はスペースホープ号の尻尾を伝って背や頭部へ向けて駆け上っていた。
「ここまで来る事が出来たのは俺達だけか?」
「そうみたいですね。他はやられたか下で戦ってます。」
「だが…考えようによってはこっちの方が都合が良いかもしれん。下手に大人数で動く
より少人数の方が敵に発見されにくいだろうしな。味方を囮にすると言うのは少々気が
引けるが…これも滅びの龍艦隊の旗艦を潰す為だ。皆だって覚悟は出来ているだろう…。」
「はい!」

63 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 33 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/02(日) 10:53:16 ID:???
エナジーライガーとセブンズソードは敵に見付からない様にとスペースホープ号の
長大な尾の上を慎重にかつ迅速に駆け上がっていたが、やはり要塞型ギルタイプの
中でも一際巨大なキロメートル級のスペースホープ号の巨大さにバングランとルイスは
圧倒されていた。
「しかしそれにしても何てでかいんだコイツは…。ただでさえ巨大な滅びの龍をさらに
でっかく作りやがって…。」
「でも大きければ良いって物じゃないって大尉はいつも仰ってるじゃありませんか?」
「ハハハ! そりゃそうだ! こんな馬鹿でかい奴でもエンジンに一発ぶち込んでやれば
簡単に落ちるんだ。見掛けにだまされるものかよ!」
二人はそう笑いながらそれぞれの愛機を走らせていたのだが…
「ん!?」
突然二機の正面にある空間が歪み、嫌な予感を感じた二機は急停止した。
「何だこれは!? 何が起こってるんだ?」
二人は何故空間が歪むのかが理解不能だった。しかし、その直後に空間の歪みから
大龍神・ファントマー・エアットが現れるワケである。
「ドラゴンワープ完了! どうでしたか? 短い間でしたけど超空間の旅は!」
「ちょっと言葉で言い表せないけど面白かったのよ〜。」
「その様な原始的な装置で空間転移を可能にするとは流石だ…。」
ミスリル達はその様にマイペースでワイワイとやっていたが、その直後に
彼女等も目の前にエナジーライガーとセブンズソードの姿がある事に気付くのである。
「うわ! ワープアウトして早々に敵さんがいらっしゃるじゃあ〜りませんか!」
「もしかして待ち伏せされたかもしれないのよ〜。」
「嫌…流石にそれは無いと思う…。故にただの偶然であろう…。」

64 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 34 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/02(日) 10:55:23 ID:???
やっぱり相変わらず何時もの三人であったのだが、ワープと言う概念を知らぬバングラン
とルイスの二人は未だにワケが分からないと言った顔になっていた。
「畜生! この胸っ糞悪いロボット女め! いきなり俺達の前に姿を現すってぇ…
妖怪まがいな事をしやがって!」
「大尉の言う通りだ! この滅びの龍の世界蹂躪に協力するお前達を僕達は許さない!」
バングランとルイスの目は真剣そのものだった。自身の正義を信じ、祖国を守る為に
戦う勇者の目であった。が…
「こ…こいつ等真剣に勘違いしてますよ! やっぱり思った通り勘違いしてますよ!」
「アハハハハ! おっかし〜のよ〜!」
「フフフ…ユニーク…。」
ミスリルとティアは思わず腹を抱えて笑い出してしまった。常にポーカーフェイスである
スノーも一見は無口無表情のままに見えても、よ〜く見るとかすかに口に笑んでいる様に
も見えるのだから相当な物である。
「くそ! てめぇら何が可笑しいってんだぁ!!」
バングランのエナジーライガーがチャージャーキャノンとチャージャーガトリングを
それぞれぶっ放すが、大龍神のTMO鋼製装甲はその連撃を全て弾き返してしまった。
「いやですね…今更こんな事言っても戦いは収まらないと思いますが…一応説明させて
頂くとですね…これは貴方達が考えている様な世界征服なんてやらかす為の艦隊じゃ
無いんですよこれが。」
「そうなのよ〜! これは皆遠い遠い宇宙に旅立つのよ〜!」
「それをお前達の様な世界征服でもやらかすのでは? と勘違いして攻撃して来る様な
輩から発進準備中の移民船団を守る為に私達が雇われた…。」
「そうそう! 骨折り損のくたびれもうけって奴よ!」
何故か何の脈絡も無くハーリッヒのスクープマスターまでここに出現して会話に
加わっていたりするが、とにかくミスリル達はそれぞれのペースで説明を行っていた。
しかし…バングランとルイスはその様な事を信じなかった。

65 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 35 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/02(日) 10:57:04 ID:???
「もっと嘘は上手に付くべきだな! 俺がお前等の様な奴の話など信じると思うか!?
第一宇宙なんて行けるワケねーじゃねーか!!」
「そうだ! それに僕はお前達の様な奴から人々を守る為に軍人になったんだ!」
まあ確かにバングランとルイスの二人の言う事も一理ある。何も知らない者からすれば
外宇宙移民船団など夢物語の様に思えても仕方の無いだろう。そして彼等二人にも
ライオ共和国を守る為と言う彼等の正義と言う物がある。しかしそれも、ミスリル達から
すればただの勘違いであるからして、滑稽でしか無いのが実に可哀想である。
「別に良いですよ私は〜。最初から信じるとは思ってませんでしたから〜。」
「そんな分らず屋から移民船団を守る為に私達がいるのよ!」
「彼等の外宇宙への門出を邪魔させはしない…。」
超高速で飛びかかってくるエナジーライガー&セブンズソードに対してドールチームも
それぞれに迎え撃ち、スペースホープ号の甲板上での戦闘が始まった。

一方、地上では…
「よぉく見晒せ! レーザーチャージングブレードってのはこうやって使うんだよ!!」
何時に無くテンションの高い覆面Xの叫び声が響き渡り、彼の搭乗するジェノブレイカー
が頭部のレーザーチャージングブレードをライガーゼロシュナイダーの頭部に突き刺し、
あろう事かそのまま真っ二つにしてしまった。普通に考える限りレーザーチャージング
ブレードの長さでゼロシュナイダーを真っ二つなど不可能なのだが、それを可能にして
しまう覆面Xが異常だとしか思えない。しかし、覆面Xはミスリルにとっても得体が
知れない程であるし、異常な事の方がむしろ普通な為にそこまで問題は無かろう。
「そらそら! こういう事するのって久し振りだから張り切らせてもらうぞ!!」

66 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 36 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/02(日) 10:58:29 ID:???
やっぱり覆面X自身何故か妙にテンションが高くなっているのか、それ以外にも彼の
搭乗するジェノブレイカーは異常な大暴れを見せ付けていた。ジェノシリーズやBF
シリーズはホバーリングによって地面の上を滑る様に高速で移動可能なのだが、そこを
利用し、まるでフィギュアスケートの選手の様に戦場を華麗に滑りまわりながらエクス
ブレイカーで次々にライオ共和国側ゾイドをバッサバッサと斬り捨てて行くのである。
それが後に“死のフィギュアスケート”と呼ばれる事になるが…それはまた別のお話。

大蠍神は乱戦と化した戦場を駆け、その後をレイアのヴァルキリーシーザーが執拗に
追跡を行っていた。だが別に大蠍神はヴァルキリーシーザーから逃げているワケでは
無い。ただ眼中に入れてないだけであり、周囲に展開するライオ共和国軍側ゾイドを
次々に両腕のシザースで切り裂き、叩き潰し、さらに敵機のみで固められ、友軍機の
姿が見えない場所には荷電粒子砲でまとめて薙ぎ払ったりと次々に葬っていた。
「このぉぉぉ!! 何故私を無視するぅぅぅ!?」
完全に熱くなっていたレイアとヴァルキリーシーザーは何度も大蠍神に向かい、
その度に弾き飛ばされた。しかしそれ以上の事はしない。大蠍神は周囲に展開する他の
ライオ共和国機を叩き潰して行く。それがレイアにとって腹立たしい事この上無かった。
「何故!? 何故なのよぉぉぉ!!」
ツインインパクトキャノンを連射するが大蠍神の装甲には歯が立たず、全て弾き返された。
しかも大蠍神はまるで最初からヴァルキリーシーザーの攻撃など無かったかの様に無視
して他の場所へ行ってしまい、報復攻撃さえ無かった。それがレイアにとって悔しかった。
「何故!? 何故なのよ!! あんたは私の家族を…友達を一方的に殺しておきながら…
何故私は無視するのよぉぉぉ!!」
その叫びと共に周囲に展開するライガーゼロパンツァー隊の発射したミサイルの雨が
大蠍神の真上から降り注ぐが、直後に大蠍神の背の装甲が開き、そこから発射された
レーザー砲によって全て破壊され、一発として大蠍神に届くミサイルは存在しなかった。

67 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 37 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/02(日) 11:00:21 ID:???
装甲が開いた隙を狙って突撃してくるブレードライガーもいたが、それもまた全て
受け止められ、至近距離からレーザーによって串刺しにされた。周囲は忽ち火の海と化し、
その中で唯一、殆ど傷も無い状態で銀色に輝く大蠍神の姿は神々しくも不気味だった。
そして…これがレイアの幼少時の記憶にある大蠍神の姿でもあった。

「お父さん! お母さん!」
「レイア! 逃げろ! 早く逃げろ!」
「お願い! お父さんとお母さんの事は気にしないで逃げてぇぇぇ!」
「嫌ぁぁぁ! そんあの嫌ぁぁぁ!」
幼少時代のまだ孤児では無く、両親と共に裕福では無かったが、それも全く気にならない
程幸せだったレイアを襲った突然の悲劇。彼女の住んでいた地域を後に大蠍神と呼ばれる
事になる白銀のデススティンガーが襲った。ミスリルの制御下に置かれる以前の彼は
正真正銘に制御不能の悪魔の兵器。如何なる人間の操縦をも寄せ付けず、その強烈な
精神ストレスによって廃人へと変えた。そして今暴れる彼のコックピット内にも既に
彼の精神ストレス耐え切れずに脳が破裂して即死したパイロットの姿があった。
パイロットが死亡した事により彼の自由意志によって暴れ回る怪物となったのである。
彼が走り回れば建物が破壊され、彼方此方逃げ回る人々が踏み潰され殺されていく。
しかし彼はその様な事を気に留める事はしない。人が歩いている時にたまたま足元に
いた小虫を踏み殺していたとしても気に留めないのと同じ様に…。ただただ自分の
やりたい様にやる。それが彼の考え方だった。
「嫌ぁぁぁ! お父さん! お母さん!」
まだ幼かったレイアは彼の手によって目の前で両親を殺され、炎の中を逃げ惑った。
この日を境にレイアは彼を憎んだ…この世の何者よりも彼を憎むようになった。
彼の手によって不当に大切な者を奪われる…自分の様な者を増やさぬ為に…

68 :名無し獣@リアルに歩行:2008/03/03(月) 13:53:01 ID:nbhxUvFG
定期age

69 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 38 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/08(土) 21:57:15 ID:???
一方…スペースホープ号を初めとする移民船団各艦では懸命の発進準備が進められていた。
「後何分で発進出来る!?」
「後10分は必要です!」
「ならば後10分は何としても持たせてくれと覆面X氏その他傭兵達に通達を!」
「了解!」
スペースホープ号及び移民船団各艦の要塞型ギルタイプ艦隊は外宇宙を行く為に建造
された機体だ。だからこそ少々の事では壊れない程にまで頑丈になっているし、現に
ライオ共和国軍の総攻撃を受けても一艦として撃沈されるどころか大したダメージを
受けたと言う報告は無い。しかし、気は抜けない。後10分まで控えた発進の時が
大きな隙となるし、後一歩の所で発進不能に…と言うワケには行かない。だからこそ
各艦艦載機の調整作業も終了しないこの状況で、スペースホープ外宇宙移民船団を預かる
スペンリーは傭兵達に防衛を託すしか無かった。
「何としても…頼むぞ…。」

「うおおおおおお!」
スペースホープ号甲板の尾の辺りの上ではルイスのセブンズソードが己の前に立ち塞がる
ミスリル&大龍神への懸命の攻撃を続けていた。セブンズソードが背に持つ三つの刀と
四つの脚にそれぞれ装備された刀…合計七つの刀が煌き、大龍神を斬り裂こうとするが…
大龍神の全身を覆うTMO鋼の装甲を斬る事は出来ず、逆に弾かれてしまう。
「そんな馬鹿な! 惑星Zi最強のメタルZi製の刀が通用しないなんて…。」
「メタルZiが惑星Zi最強の金属…ですか…。でもそれは貴方達一般人の常識範囲内
での話でしょう? 貴方達一般人にその名こそ知られていませんが…もっと強い金属は
沢山あるんですよ! それが世の中と言う奴です。」

70 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 39 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/08(土) 21:58:33 ID:???
メタルZiが惑星Zi最強の金属。確かにそれは世界の常識と言えるだろう。だが…
所詮は一般人にとっての常識範囲内での話である事は否めない。世の中は広い。
常識範囲の外にはメタルZi以上の強度を持つ物質は実に沢山あるのである。
バイオティラノに使用されるダークネスヘルアーマーやバイオヴォルケーノのクリスタル
パインがまずそうであるし、ミスリル及び大龍神の装甲に使用されるTMO鋼もそうだ。
そしてエアットに使用される外宇宙金属“スペースアダマンタイト”に至ってはそもそも
惑星Zi外の金属であるからして、惑星Ziの常識に当てはめる方が無意味な程の性能を
持った金属である。探せば他にも色々あるだろうが…少なくともミスリルが知り得る上
では、彼女が“超人クラス”と尊敬と畏怖を込めて呼ぶ超越者達の鍛えられた肉体が
一番頑丈だったりするだろう。
「ならば装甲の薄い場所を狙うのみ!」
セブンズソードは超高速で背後に回り込むと共に後脚関節に狙いを定めていたが…
次の瞬間に後脚の装甲が開き、放たれた一発のミサイルが逆に吹飛ばしていた。
「何ぃ!? うあぁ!」
とっさにミサイルを刀で切り裂くが、爆発によってセブンズソードの身体は大きく
吹っ飛び、危うくスペースホープの尾から落ちそうになってしまった。
「くそ! あんな所にもミサイルが…。ゾイド乗りならゾイド乗りらしくゾイドの
能力を生かして戦え!」
「刀を七本も持ってるゾイドに乗ってる人に言われたくはありませんよ。それに…
状況に応じて多種多様な武器を使いこなすのが私のスタイルなので〜す。」
「所詮はロボットか…。」

71 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 40 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/08(土) 22:00:07 ID:???
ルイスは憎しみを込めながら呆れていたが、これは人間とロボットであるミスリルの
思想の違いと言う奴かもしれない。ミスリルは生まれながらに全身に多種多様な武器を
装備したロボットであるからこそ、武器を使うと言う行為は至極当然の事であると
考えている。だからこそ戦闘において多種多様な兵器を使った攻撃を行っていたのだが、
この考え方は人間であるルイスには理解出来ない以前に悪徳だと認識されたに違いない。
「あ、ちなみにこれでもかなり手加減してる方なんですよ。あんまりやりすぎて
この船を壊しちゃったら大変ですからね。」
確かにそうだ。今大龍神はスペースホープ号の上で戦っているのだから、そのスペース
ホープ号にダメージを与えない様に戦わねばならない。が…
「それはそうだよな…。コイツが壊れたら世界蹂躪なんて出来ないからな…。」
未だにスペースホープ艦隊の目的を世界征服と勘違いしているルイスには何を言っても
無駄なのかもしれない。

「下がれルイス! コイツは俺がやる!」
ルイスとセブンズソードをフォローするかのごとくバングランのエナジーライガーが
大龍神へ突撃を仕掛けた。そしてチャージャーキャノン&チャージャーガトリングを
高速連射するのだが、大龍神の装甲には傷一つ付かない。
「射撃が効かないと言うのなら…コックピットを一突きにしてやる!」
エナジーライガーはグングニルホーンを煌かせて大龍神の頭部へ突っ込みを仕掛けた。
ミスリルを直接狙おうと言うのである。確かに元祖ギルベイダー初の撃墜もオルディオス
のサンダーブレードによるコックピットへの直接攻撃だった。しかし…
「トラクタービーム照射…。」
「何ぃ!?」
突如エナジーライガーが空中へ持ち上げられ、大龍神への攻撃コースは逸れてしまった。
それはスノーの乗るエアットのトラクタービームによってエナジーライガーが持ち上げ
られる事によって突撃コースが変えられた事によって起こった事であった。

72 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 42 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/08(土) 22:01:19 ID:???
「貴様! 一体何をした!?」
「それは秘密…。」
スノーはバングランの質問に答える気など無かった。どうせ答えた所で信じてもらえる
はずが無いのだから…惑星Zi外技術の一つであるトラクタービームなど…
「ならば貴様等から先に叩き潰してやるわぁ!」
バングランは標的を大龍神からエアットへと変更。エナジーウィングを展開して高く
飛び上がった。しかし、そこから突如エナジーウィング内のマグネッサーシステムを
正面へ向けて急後退するでは無いか。
「あ!?」
「ハンマーヘッドに目を向けさせた隙に横から奇襲なんて手に引っかかると思うか!?」
そう、エナジーライガーが急後退したのは側面からのファントマーの突撃から回避する為
だったのである。そして一時離脱中のファントマーの背後を取り、チャージャーキャノン
とチャージャーガトリングを撃ちまくった。
「子供を撃つのは気が引けるがな…これは戦争だ! 悪く思うなよ!」
バングランの射撃は正確だった。エナジーチャージャーから抽出されるタキオン粒子
エネルギーがファントマーへ正確に吸い込まれて行くが…そのエネルギーはただただ
ファントマーの身体をすり抜けるだけだった。
「何ぃ!? すり抜けただと!? 一体何が起こった。」
バングランは面食らった。それだけでは無い。突如ファントマーの姿がフッと掻き消え、
別方向から新たなファントマーが出現するワケである。
「なるほど…光学迷彩か…超音速で飛行しても映像を維持出来るとは余程高度な物を
使っていると見えるな…。」
「違うのよ! これは“アストラルミラージュ”って言って、“アストラルドライバー”で
増幅した私の霊力を使って幻影を作って幻惑する戦法で、見事におじちゃんはそれに
引っかかっただけなのよ! 別に種も仕掛けも無いのよ!」

73 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 42 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/08(土) 22:02:51 ID:???
ティアはご丁寧に説明しちゃったりなんかしていたが、要するにさらに説明させて頂くと、
ティアは霊力によって身体として使っているドールの身体を動かしている。そこから
さらにミスリルがティア自身を研究して作り上げた霊力を増幅させる事が可能な
“アストラルドライバー”を搭載してより強力な霊力を発揮する事が出来たのだが、それ
でファントマーの幻影を作り出し幻惑すると言うのが“アストラルミラージュ”である。
「ハッハッハッハッハッハッ!」
「おじちゃん何が可笑しいのよ?」
突如バングランは笑い出した。そして不敵な笑みを浮かべながら言った。
「何が霊力だ? 何が幻影だ? 笑わせるな! 悪いが俺ぁそう言うオカルトは信じない
性質でな。どうせただ光学迷彩の所をそういうオカルト的な部分を持ち出して怖気付かせ
ようって腹だったんだろうが…俺にはそんなの通用しねぇぜ!!」
まあ彼の言う事もある意味正論であろうし、これが真っ当な人間の反応と言える。
「霊力は本当なのよ! ほら、私のドールの身体を見れば直ぐに分かる事なのよ!」
「黙れ! それにだって何か仕掛けがしてあるんだろうが!」
バングランのエナジーライガーはファントマーへ矢継ぎ早の砲撃を仕掛けるが、やはり
アストラルミラージュで全て回避されてしまっていた。
「やっぱり信じようとしないのね〜。可哀想なおじちゃんなのよ〜。」
「あの手の人間ならば仕方が無い話…。ならば精々イカサマであると思わせておけば良い。
後で痛い目を見るのはどうせあの男の方だから…。」
ファントマーと並んで飛ぶエアットの中からスノーがそう諭していたが、そんな言われ方
をしたバングランが怒らないはずはない。

74 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/03/16(日) 18:00:26 ID:???
 虚空を切り裂いて、異形の翼を二対背負った竜が飛ぶ。
 短距離ワープの連続跳躍によって敵を撹乱し、死角からの一撃で仕留める。暗殺部隊と
しての必勝戦術だったそれが、この騎士には悉く通じていなかった。
 敵は空間に穴が開くと即座にそれを察知し、死角を見せないのだ。
「これは……能力ではなく、戦士の勘という奴ですか」

 そして、こちらの攻撃も防御もかき消す圧倒的な力。その効果範囲は機体のみに限られ
ているため、騎士がやっているのは単なる格闘攻撃に過ぎないのだが、彼の場合はその一
挙手一投足が致命的な破壊力を有すると来ている。
 ただの怪力かと思いきや、機動性も反応速度もある。クレバーな戦い方とは言い難いが
むしろこれほどの力がある場合、小細工を弄せぬ力押しこそが最強の手なのかもしれない。

 ただ一歩の踏み込みで音速を突破した巨体が、ヴォルフガングに肉薄する。
「空間操作は最強の能力です。そこに、古代文明のナノマシンを加えた僕の機体は……」
 虚空に描かれるは光輪。一回、二回、槍が回るたびに円が出来る。一つ目の円に騎士の
機体が拳を叩きつけ、激しいエネルギーの干渉に七色の光が乱舞する。
 一つ目の円が破壊された先には、すぐさま第二の障壁。天体を砕くために作られた、巨大
な万力のような拳から加えられる力が、空間の歪みを矯正してゆく。
 二つ目の円が遂に壊れる。この間、数秒。しかしヴォルフガングが稼いだ時間は充分に
長い――騎士の機体を取り巻いて、銀色にきらめく霧のようなものがその場を覆っていた。
「……どんなにパワーがあったって勝てませんよォ、強いですからねェ!」

 地球文明のナノマシンはアセンブラとディスアセンブラの機能を兼有する。この霧に
包まれれば、あらゆる隙間から侵入した分子機械群が機体を分子レベルで解体してしまう。
「ほーら、僕は指一本貴様に触れることなく、その機体を粉末にしてしまえるんですよォ」
 砲口、間接部、排気口――ゾイドを喰らう悪魔の霧が忍び込み、騎士の機体を侵して
ゆく。もはや騎士はただ、機体ごと分解されるのを待つばかりの存在。
 ……の、はずであった。

75 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/03/16(日) 18:03:23 ID:???
 巨竜が歩き出す。決して早くはなく、しかしその一歩ごとが恐ろしいほどに重い。
 その歩みは己が身を貪っているはずのナノマシンなど、意にも介していなかった。
「効いて……!?」
「おれはな、相手が誰であれ、何人であれ――」
 唐突に聞こえてきた声は、騎士の機体から発せられている。低い、男の声だった。
「戦えればそれでよいのだ。戦いこそがおれの娯楽、闘争本能こそがおれの理性を律する
絶対者なのだよ。飯も、女も、眠りも不要なほどに」

 何故、ナノマシンによる分解が届いていない?
 運動エネルギーの制御能力を持つ敵とは、当然戦ったことがある。が、そうした相手に
攻撃が通らなかったことはない――通常、彼らの力は攻撃や移動に使われるからだ。
「戦闘狂、ですか……生体兵器が持つ人格としては最適でしょうねェ」
 考えろ。力を発生させる能力で、機体内部に入り込むナノマシンをどうやって防ぐ。
 一気に踏み込んできた騎士の一撃を、間一髪ワープでかわし、彼は分析する。そうする
うち、過去に戦った同系統の能力者の中に例外が居たことを思い出す。
「機体の表面に、斥力場を……」

 斥力場は、正面から飛来するあらゆる物質の運動エネルギーを大きく減ずる。半端な
実弾では装甲に届かず地に落ちるし、ビームでもデスザウラー級の加速性能がなければ
90度偏向されて終わりとなる。自らの能力を、そうして守りのために使った能力者が、
かつて彼の処理した敵の中に存在していた。
 その少年は空間歪曲を利用した前後同時攻撃によって容易に破ることができたものの、
いま向かい合っている騎士は非常な難敵であると認めざるを得なかった。
「極めて質量の小さいナノマシンは、微弱な斥力場でも通り抜けることができない……
だが、内装パーツ一つ一つに至るまでそれをやっていると言うんですか?」
 何という精度で己の力をコントロールしているのだろう。異常なほどに高められた能力
を、限界まで使いこなしている。攻防速すべてに、隙がない。

76 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/03/16(日) 18:10:05 ID:???
「能力者たちやお前のような人間は、固定観念に縛られている」
 戦うために生まれ、戦いだけを求め、戦いを極めた者。その分身たる巨竜から立ち上る、
この破滅的な闘気はなんなのだ。
「ほう、どんな固定観念だと?」
 頭の中であれこれと策を巡らしながら、ヴォルフガングは次々とそれらを切り捨てて
ゆく。破棄されたシミュレートの結果は全て一つに収束している。
 すなわち、彼の敗北である。

「能力者は無意識のうちに『できること』を自分の中で定義し、その枠に沿って戦おうと
する。自分で限界を作り出し、己が力の真価に気づかんのだよ。本来、ヒトに与えられる
能力に優劣などない。根源にある作動原理を正しく理解した者だけが、強者となる」
「自分だけが真理を得た、とでも言いたげですねェ。しかし!」
 槍を敵機に向け、その穂先で空間を二次元面に圧縮。次の瞬間、空間そのものの揺らぎ
が波動となって騎士に放たれる。騎士も大剣から超圧縮した重力波を発し、これを迎撃
する。

 空間のゆがみと重力は同一のものである。ぶつかり合った両者は同心円状に広がる重力
波の形でエネルギーを逃がし、霧消。その余波が周囲の景色を歪ませる頃には、両者は
既に動いていた。自身の運動エネルギーを増幅し、凄まじい加速でデッドボーダーに迫る
騎士と、槍を振り回して虚空を千々に切り裂くヴォルフガング。
「頭使って戦ってんのは、僕も同じ事でねェ!」

 そこに刻まれ輝く軌跡は、何者をも断つ質量断層の刃。なおも繰り出される刃は、空間
を歪めてあらゆる方向から騎士を襲う。
 死角は皆無、凶刃の絶対包囲。
「回避もガードも不可、とくれば――」
 この攻撃で仕留められるなら楽だが、そうもいかないだろう。ヴォルフガングはその先
を読むべく、騎士の挙動を注視する。

 敵がその場から動かず防御しようとすれば、勝負はそこで付いていた。しかし巨竜は
前方に突進し、大剣のひと薙ぎで包囲を突破すると、そのままデッドボーダーに向かって
来た。包囲は完成される前に突破するのが最善の対処法だ。

77 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/03/16(日) 18:13:21 ID:???
「やはり一点突破! しかし、せめて僕の方に来ないだけの分別があればねェ――」
 読みは完全に的中した。騎士と彼の間にある大気が、陽炎のように揺らぐ。それは空間
転移に用いるゲート。勢いのままその中へ飛び込んだ騎士が、出てきた先は。
「チェックメイト、と言わせてもらいますよォ」

 そこは、限界まで狭まった質量断層の包囲陣中。完成した包囲の中に、敵を直接放り込む
空間操作能力ならではの荒業。
 確実に決まった――そう思った。いかに騎士の力が常識を逸脱したレベルにあっても、
あの密度で迫る質量断層の刃は防げない。
 ロジカルに考えたのが、彼の失敗だったかもしれない。

「解らんのか。『限界を定義するな』とは、自分が定めた枠の中であがく事ではないと」
 白い光の一閃――
 空間を伝播する全ての歪みは正され、強烈な衝撃波が洞窟内を駆け巡った。壁や天井
が、一斉に爆破されたように吹き飛び、剥がれ落ち、岩塊の雨を降らす。
 ヴォルフガングは歪曲障壁でそれを防いだが、後方で戦況を見守っていたヴィクター
たちの防御フィールドをも、その波動は軋ませた。

「なんだ……今の攻撃は? フォイアーシュタイン、無事か」
「機体はまったく問題ありません。が……つくづくバケモノですねェ、騎士ってのは」
 質量断層の網がぎりぎりまで近づいたところで、超強力な斥力場を瞬間的に発生させ
全ての空間歪曲を中和する。こんな芸当ができるほどの力は流石に出せないと、高を括って
いたのか。いや、そもそも思いつきさえしなかったのだ。
「それが僕の……想像力の限界だと、そう言いたいのか」
「能力者や騎士の領域――ゾイドを介して、意志の力でエネルギーを操る者同士の戦いは
想像力が全てを決すると言っても、決して過言ではないぞ。
 おれに出し惜しみなどするな。撃って来い、お前の最強の技を」

 皮肉にも、ヴォルフガングに覚悟を決めさせたのは、敵の口から出たその言葉だった。
「……いいでしょう。情報収集のつもりでしょうが、後悔しますよ」

78 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/03/16(日) 18:18:52 ID:???
「フォイアーシュタイン! 奥の手を見せるにはまだ早いと思うが」
 ヴィクターはそれがどんな技か知らない。が、ここで敵に手の内を晒しすぎては、後々
別の騎士との戦いで不利になるかもしれない。ヴォルフガングには、GX-00を倒してもらわ
なければならないのだ。
 が、議長の影武者は意味深に笑う。
「大丈夫です。この技を受ければ、誰にも情報を送ることなどできない……!」

 それはもともと、暗殺のために編み出した攻撃だった。助けを呼ばせず、証拠も残さず、
相手を完全にこの世から消してしまうための技。
「おれは天変地異さえ起こすこの剣の力を全て解放する。お前の攻撃がそれを封じられない
ならば、その後でおれは向こうにいる連中を殲滅するまでだ」

 行くぞ――静かに宣言した騎士、亜光速に達する速度で突撃。発生する猛烈な衝撃波は
いまこの時においてはあまりに遅く、まるで白いさざ波。
 予備動作と殺気の発散からその突撃を見切っていたヴォルフガングは、亜光速の敵機が
動くのを確認する前に槍の力を発動していた。彼の前に現れたのは、光を跳ね返さない
暗黒のドーム。飛び込んだ騎士は、その中に封じ込められている。

「全球状にゲートを作り、原点対称の位置と繋げる。まずは、脱出を封じてと」
 巨竜はクラインの壷に閉じ込められた。どの方向へ動いても、球の反対側から内側に
戻ってしまうのだ。ならばと剣の力を使い、再び空間歪曲を破壊することを試みる。
 だが、ヴォルフガングが用いる文字通りの『必殺』はそこで終わらない。
「脱出される前に、こうする!」

 ゲートを介して球の中心に槍の穂先を転移させ、そこで空間をねじ曲げる。それまでの
攻撃とは比較にならないほどの歪みに、甚大な重力偏差が生まれる。
「空間の曲率と重力の強さはイコールです。では、曲率が無限大になると……?」
 騎士はヴォルフガングの狙いに気づき、重力偏差を斥力場で打ち消そうとした。が、
一歩遅かった――空間の曲がりが破綻し、四次元時空に『穴』が開いたのだ。
「そうです。そうなんですよ、ブラックホールが出来ちゃうんですねェ」

79 :Innocent World2 円卓の騎士:2008/03/16(日) 18:20:44 ID:???
 物質としての限界に迫るほど速く動くことができても、事象地平面の内側でブラック
ホールの重力から逃れることは不可能だ。そのためには、リノーのように光速を越える
しかない。しかし、この騎士の力はそれを可能にするものではなかった。

「所詮おれも、限界に縛られたモノか」
 自嘲的に哂う彼の心中には、セラードたちのように己の過去が去来することも無かった。
彼は今の『兵器として生まれた自分』に納得していたし、疑問も持たなかったのだ。
 戦いへの渇望だけが突き動かしてきた身体。中心へ近づくにつれ、潮汐力で原子レベル
に分解されながら、その役目を終えようとしている。

 なかなか意外な攻撃で幕切れとなった。なるほど、これは自分の剣ではどうにもならない。
正面から突っ込まなければ勝機は十二分にあったが、まあ面白かったからいい。
「だが、これでも“王”に勝つことは不可能だな」

 意外なほどに明るいブラックホールの中で、燦然と輝く一つの光がある。あれが特異点
というやつなのだろうか。
 騎士となってからはワッドと呼ばれていた彼は、最後に自分が人間だったことを思い出し、
当時の名前を思い出そうと試みたが――やめた。
 同じ人間が、二度も死ぬことはあるまい。

 機体が特異点に触れる。怯懦も焦燥もなく、騎士ワッドはこの宇宙から消滅した。

   <続く>

80 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 43 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/17(月) 12:24:52 ID:???
「貴様等ガキの癖に生意気な事ばかり言いやがって! てめぇらだって同じ人間のくせに
偉そうな口が叩けると思ってるのかよ!」
「違う…。私達は貴方達大多数の人間とは違う…。」
「何ぃ!? そりゃどういう事だ…。」
「でもそれを知る時…貴方はこの世にはいない…。」
直後、ファントマーと並んで飛んでいたエアットが編隊からそれ、エナジーライガーへ
急突撃を仕掛けた。それに気付いたバングランは対空迎撃を行うが、エアットの全身を
覆うスペースアダマンタイト製装甲には意味を成さずに弾かれるだけだった。
「くそぉ! 何だあの装甲は!」
バングランは肝を冷やしながら何とかエナジーライガーを急上昇させてエアットの突撃を
回避した。エアットの強靭な装甲と超音速から来る突撃を受ければ木っ端微塵にされる
のはエナジーライガーの方だからである。まあそれも当たらなければどうと言う事は
無かったのだが…
「おわっ!」
突如不意打ちのごとく飛んで来た鉄の塊がエナジーライガーのチャージャーガトリングに
打ち付けられ、砕かれた。しかも良く見ると友軍のシールドライガーの脚では無いか。
「僕にも見せ場を下さいよ!」
いつの間にかアールスのゴルヘックスがスペースホープ号上空まで戻って来ており、
しかもサイコキネシスによってエナジーライガーと同じ高度で制止していた。さらに
同じくサイコキネシスによってライオ共和国側ゾイドの残骸がゴルヘックスを護るかの
様に周囲を旋廻していた。
「な! 何だアイツは…ゴルヘックスが浮いてる!? しかも俺達の仲間の残骸が…。」
「ちなみに彼は超能力者でサイコキネシスを使ってあの様な事が出来る。」
スノーはご丁寧にアールスについて説明していたのだが、バングランは鼻で笑った。

81 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 44 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/17(月) 12:26:30 ID:???
「ハッ! 馬鹿馬鹿しい! 超能力なんてあるわけねーだろうが!」
「そんな…僕の超能力を直に見ても信じない人がいるなんて…。」
確かに超能力だって世間一般から見ればオカルトだろう。そのイメージを払拭するべく
アールスの所属するエスパリアン機関は日夜戦っていたのだが、最初は信じていなくても
直接超能力を見せれば信じる様な人は沢山いても、バングランの様に直接見せても頑なに
否定する者はアールスとしても珍しいパターンだった。
「そちらが超能力を否定するのは勝手。しかし彼がやっている事はどうやって説明する?」
「そりゃアレだろ? 糸で吊ってるんだろうが! 俺ぁ騙されねぇぜ!」
「で、その糸は何処から吊っている?」
「何処からって…………。」
これはバングランとしても痛い所を突かれた。ここは大空のど真ん中であるし、糸を
吊るせる場所などあろうはずもない。かと言って超能力の存在を信じたくは無かった。
「うおらぁぁぁ! 霊力だの超能力だのワケの分からねぇ御託を並べやがってぇぇ!
あのロボ女の胸っ糞悪いが、お前等も胸っ糞悪いんだよ! 何がオカルトだ!
馬鹿馬鹿しい! なら俺が普通の人間の底力と言う奴を見せてやる!」
「確かに貴方は何の特殊な力も持たないただの人間だ。しかし…そんな貴方が
もし仮に私達に勝てたとすると…その時点で…貴方はただの人間では無くなる。」
「う………。」
スノーの指摘にバングランは気まずくなった。確かに怪物を倒した時、その者も怪物と
なっていると言う話がある様に、仮にティア・スノー・アースルらに勝てた時点で
明らかに普通の人間では無くなっているに違いない。確かに普通の人間のままである事
には間違い無いのだが…それでもやはり普通では無いのである。これは普通の人間で
ある事を美徳とする考えの者にとって致命的と言える。
「ええい黙れ黙れ! とにかくお前達は死ぬべきなんだぁぁ!」
もはやバングランは余計な事を考えるのをやめた。ただ一人のライオ共和国軍人として
目の前の敵艦隊発進阻止の為の戦いに集中し、エナジーライガーは再度飛びかかった。

82 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 45 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/17(月) 12:28:02 ID:???
「たぁ! やぁぁ!」
スペースホープの尾の上ではセブンズソードが駆け回り、七つの刀を振って大龍神へと
斬り付けていたが、大龍神も両翼のTMO鋼製の切断翼“ドラゴンウィングカッター”で
受け止め弾き返していた。
「くそっ! 何故だ!? 何故斬れない!? あんな魂のこもってない相手を!」
「多分そんな事ほざいてるからだと思いますよ?」
真剣かつ必死に叫ぶルイスをミスリルが呆れ眼で諭した。
「あ、もしかして貴方の国では“物にも魂が宿る”って考え方は受け入れられて無いって
事ですか? なら仕方ないでしょうね。貴方の国では獅子以外はカスって考え方なんです
って? アイタタタ…そりゃ確かに無理な話ですね。」
ミスリルは故意にルイスを怒らせる様な言い回しで煽って見た。こうやって相手を怒らせ、
冷静さを失わせる事は戦術の常套手段であるし、実力を見ずに機械と言う理由だけで
見下す輩には少し痛い目を見てもらおうと言う思惑もあった。そして純真と言うか…
割と直情な感じのルイスは物の見事に引っかかってしまった。
「くそぉ!! 血の通って無いロボットごときが偉そうに!! 人間を舐めるな!!」
「出ましたぁ! 人間を舐めるな発言! ミスリルにそのセリフは敗北フラグです!」
さり気なく高速で飛び出して来たスクープマスターの中からハーリッヒがその様に
叫んでいた。せっかくルイスが人間の尊厳を賭けた必死の主張をしていたと言うのに
同じ人間であるハーリッヒに馬鹿にされてしまえばルイスが怒らないはずがない。
「くそぉぉ! お前人間のくせにロボットの肩を持つのかぁ!?」
「その通り! 私はただの人間に興味はありません!」
「黙れぇぇぇ!!」

83 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 46 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/17(月) 12:29:43 ID:???
ルイスは目から涙を飛び散らせながら操縦桿を必死に前後左右に動かし、それに合わせて
セブンズソードも七本の刀を高速で振り回しスクープマスターに襲い掛かるが、スクープ
マスターには一刀も当たってはいなかった。
「ちょっとちょっと! 私はただのジャーナリストであって戦士じゃないんですよ!
私なんか斬ったって何の得にもなりませんよ〜!」
「うるさい黙れぇぇ!」
ハーリッヒの一言一言がルイスにとって腹立たしかった。それに続けてハーリッヒを
守る為に大龍神が前に出るのである。
「とりあえずハーリッヒさんは下がってください。戦いは私の仕事ですから。」
「ミスリルありがと。」
そうしてスクープマスターは一時撤退し、後方から撮影を再開していたのだが…そこで
スペースホープ号の尾を伝ってまた何者かがやって来ていた。
「あれはルイス少尉のセブンズソードじゃないか! 援護するぞ!」
それは10機のライガーゼロフェニックスで構成された小隊だった。続けて彼等は
大龍神へ向けて突撃する。
「四方に散って多方向からの同時攻撃を仕掛ける!」
「了解!」
小隊の真ん中にいた隊長機と思しき機が他機に指令を送り、他の9機がそれに合わせて
大龍神の四方を取り囲んでいた。
「護衛対象であるこの艦のダメージを気にして奴も派手な攻撃は出来ないはずだ!
今の内に一斉にかかれ!」
「了解!」
一斉にそれぞれの方向から大龍神へ飛びかかるライガーゼロフェニックス隊。だが…
「四方からの同時攻撃…ですか? でも…ドラゴンニードル発射ぁ!!」
「うごぉ!?」
次の瞬間…大龍神の全身から飛び出したTMO鋼製のニードルが全機のライガーゼロ
フェニックスを串刺しにし、瞬時にニードルを引っ込めると共に彼等は全機崩れ落ちた。
ちなみに何処にそんなニードルの収まるスペースがあるのか? と突っ込んではいけない。
「ザコは引っ込んでろ!! って一度言ってみたかったんですよね〜!」
ニカニカと笑うミスリルであったが、これがルイスにとって余りにも腹立たしかった。

84 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 47 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/23(日) 12:29:38 ID:???
「貴様ぁ! ロボット三原則を知らないのかぁ!」
「そんな物は知りません。」
ロボット三原則。要するにルイスはロボットごときが人間様を傷付けるなと言う事を
言いたかったのだろうが、ミスリルのルーツであるSBHIシリーズは元々殺人用の
ロボット兵士。それの発展に当たるミスリルにそんな物知ったこっちゃ無い。

大空ではバングランのエナジーライガーがティアのファントマー・スノーのエアット・
アールスのゴルヘックス相手に奮戦していた…が、まだまだ余裕を残している三人と
違ってバングランの方はもはや限界に近かった。
「な…一体何なんだこいつ等は…ワケのわからねぇ事ばかりしてきやがってぇぇ!!」
攻撃を行えばファントマーのアストラルミラージュによって作り出す霊力幻影のせいで
一発も当たらず、逆にエアットのトラクタービームによってエナジーライガーが持ち上げ
られ、ゴルヘックスのサイコキネシスによって質量砲弾化されたライオ共和国側ゾイドの
残骸がエナジーライガーの全身を打ち付ける。もはやバングランもエナジーライガーも
ボロボロだった。
「何故だ…幾多の戦場を駆け抜けた俺が…何故こんなワケの分からん奴等にやられる…。
いやダメだ! そんな事になってはいかん! 落ち着け! 落ち着け俺! 死中に活を
見付けるんだ! 今の様な追い詰められた状況にこそチャンスがある! そして勝利を
確信し、奴等が慢心した所に隙が出来るはずだ! そこを突けば逆転出来る!」
バングランはそう自分自身に言い聞かせる事によって己を奮い立たせた。しかし…その
直後に突如としてファントマーがエナジーライガーの背中に付き、強制的に合体を行って
来ていたのである。しかも一方的に操縦系がファントマーへ乗っ取られて行くでは無いか。

85 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 48 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/23(日) 12:30:35 ID:???
「何ぃ!? クソ! 一体どうなってるんだ!?」
「おじちゃんごめんなのよ〜。」
「うおわぁぁぁぁ!!」
思わずバングランは真っ青になって叫んだ。無理も無い。正面コックピットモニターから
ティア(本体である霊体)が出て来たのだから。しかもこのシチュエーションが何処かの
ホラー映画みたいであり、オカルト否定派のバングランだって恐怖の余り腰を抜かし、
失禁し、口から泡を吹いて失神してしまった。
「あらあら、おじちゃんって意外とだらしないのね〜。それじゃ操縦はこっちに代わらせ
てもらうのよ〜。」
ティアはバングランの体たらくに呆れながらファントマーコックピット内のドール体へ
再憑依し、エナジーファルコン化したエナジーライガー&ファントマーの操縦に入った。
「わぁ! 噂には聞いていたけど凄い出力なのよ!」
ただでさえ出力の高いエナジーチャージャーがファントマー=ジェットファルコンと
合体する事によってより強力な出力を発揮する。そしてこの有り余る超パワーを
逆に利用してやろうとティアは考えていたのである。
「さ〜て! 何処に撃ち込んじゃおうかな〜?」
エナジーチャージャーのエネルギーをバスタークローへ流し込みながら照準を定める。
目標は可能な限りライオ共和国軍ゾイドだけで固まっている一団。
「それぇ! 吹っ飛んじゃうのよ!」
二本のバスタークローからタキオンエネルギーが放たれた。一本分でもデスザウラーの
大口径荷電粒子砲級の威力を持つ極太の粒子線は射線上にいたライオ共和国側ゾイドを
薙ぎ払い、消し飛ばした。直撃は免れてもその周囲にいただけで吹き飛ぶ者もいる始末。
しかもこれはライオ共和国軍側のエナジーライガーによる攻撃なのだから彼等の精神的
動揺は凄まじかろう。

86 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 49 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/23(日) 12:31:33 ID:???
「あれはバングラン大尉機のエナジーライガーじゃないか! 何故友軍を攻撃する!?」
「大変です! バングラン大尉のエナジーライガーが敵ジェットファルコンに乗っ取られ
我が軍を砲撃しています! バングラン大尉からの応答はありません。」
彼等の言う通りバングランからの応答は無かった。何故ならエナジーライガーの
コッククピット内部で気を失い、しかも失禁もしていると言う情け無い姿を晒しているの
である。しかも操縦系は完全にティア&ファントマーに乗っ取られている故に通信も
出来なかった。

「バングラン大尉! どうしたんですか!? 応答して下さい!」
エナジーライガーがファントマーに乗っ取られた事はルイスも知った。だからこそ
大龍神の全身から矢継ぎ早に飛び出しては引っ込められるドラゴンニードルをセブンズ
ソードと共に必死にかわしながらバングランへ通信を送っていたが、応答は無かった。

その間にもエナジーライガーを乗っ取ったファントマーはバスタークローからのタキオン
粒子砲で次々に空中からライオ共和国側ゾイドを薙ぎ払っていたが、ついにエネルギーが
空になっていた。確かにエナジーライガー単体で稼動させるよりもジェットファルコンと
合体したエナジーファルコンになった状態の方がより効率良い稼動が可能であるが、
これだけタキオン粒子砲を撃ちまくっていれば直ぐにエネルギーは無くなるわけである。
「あらら、意外とだらしないのよ〜。それじゃあおじちゃんさようなら…。」
ティアはエナジーライガーのコアをオーバーロードさせると共にファントマーと分離させ、
ライオ共和国軍部隊が大勢で固まっている場所へと放り込んだ。そうなればどうなるか
誰でも想像が付く。要するにエナジーライガーは自爆し、大爆発を起こして彼の友軍を
次々に吹飛ばすワケである。エナジーチャージャーのエネルギーは空である為にそこまで
大きな爆発にはならなかったが、機動力は高くとも打たれ弱い機体の多いライオ共和国軍
ゾイドは誘爆が誘爆を呼び、次々に破壊されて行った。そして…エナジーライガー内部の
バングランもまた気を失ったまま愛機と運命を共にする事となる。

87 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 50 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/23(日) 12:33:21 ID:???
「バングラン大尉ぃぃぃぃぃ!!」
その瞬間ルイスは大切な者を一つ失った。確かにルイスが新兵だった頃、バングランには
本当地獄と思える厳しいしごきを受けた物だ。だが…その日の晩にクタクタになった
ルイスに笑いながら焼肉を奢ってくれ、ただ厳しい人では無い事を彼は理解した。
ルイスにとってバングランは厳しくも温かい親父さん的な存在だった。しかし…その
バングランもルイスにとって忌むべき者達によって殺されてしまった。
「うおおおおおおおお!! このロボットがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バングランを失った怒りか、ルイスは涙目になりながら物凄い形相でセブンズソードと
共に飛びかかった。が…次の瞬間、大龍神のドラゴンニードルによってコアを貫かれた。
「余計な事を考えずに敵として私に向かってくるならともかく…ロボットが人間様に
敵うはずが無い…なんて腐った根性で向かって来るのが不味かったですね。だってそう
でしょう? 人間がこの世で一番偉いんですか? 本気でそう思っているのなら…
貴方はどうあがいても私に勝つ事は出来ません。まず上には上がいる事を知るべきです。」
上には上がいる。この世は科学では説明も付かない領域がある事を知っているミスリル
だからこそその様な事が言えた。だが、コアを貫かれ、動く事も出来なくなったセブンズ
ソードはただただスペースホープ号の甲板上に寝転がるのみであった。

88 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 51 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/28(金) 15:25:48 ID:???
大蠍神はなおも高速で地上〜地下を出たり入ったりしながら戦場を駆け回り、行く手に
存在するライオ共和国側ゾイドをシザースで斬り潰し、荷電粒子砲で吹飛ばした。
一見無造作で乱暴に見え、かつての様に暴走しているんじゃないのか? と思えるそれも
友軍には一発として当てていないだけ彼が理性的である事を伺わせた。
「こらぁぁぁ! 待てぇぇ!」
むしろヴァルキリーシーザーと共に大蠍神を狙うレイアの方が理性的では無かった。
大蠍神は彼女にとって親の仇である事は仕方ないにしても、その目は憎悪に狂うと共に
真っ赤に充血し、涙を滝の様に流しながら必死の攻撃を仕掛けていたが、怒りが逆に
彼女の冷静さを奪い、太刀筋も甘く、一撃とて大蠍神への有効打を与えられずにいた。
そして大蠍神もまたレイアを眼中に入れていないとは言っても、完全に無視しているとは
言っておらず、彼女のヴァルキリーシーザーの突撃をその都度かわし、弾いていた。
その結果、未だ煌びやかに輝く白銀のボディーを維持する大蠍神に比べ…レイアの
ヴァルキリーシーザーはもはやボロボロで動いている事の方が奇跡と思える程だった。

「スペースホープ号及び各艦の発進準備が整いました!」
「何!? それは本当か!? ならば覆面X氏に連絡! 今すぐに急いでこの場から
退避せよと!」
「了解!」
ついにスペースホープ外宇宙移民船団各艦の調整が完了し、発進準備が整った。
そしてその連絡を受けた覆面Xは各地で戦っていた傭兵達にその報告をするのである。
「スペースホープ外宇宙移民船団がまもなく発進する! 皆はこの場から退避せよ!」
「了解です!」

89 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 52 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/28(金) 15:27:44 ID:???
覆面Xの指令によって傭兵達は各自スペースホープ号から撤退して行く。無論ドール
チームもそうなのだが、とりあえず大龍神はスペースホープ号の足元で支援砲撃を
行っていた大砲神を元のカプセルに戻してから撤退し、続けてミスリルは大蠍神にも
撤退命令を出していた。
「大蠍神もそろそろ撤退おねがいね!」

「ん? どうしたんだ? 連中が逃げて行くぞ?」
スペースホープ号から撤退して行く傭兵達の姿を見てライオ共和国軍は面食らっていた。
「だが、今がチャンスと言える! 今の内にがら空きになった滅びの龍を撃てぇ!」
ライオ共和国軍残存部隊は一斉にスペースホープ号及び移民船団各艦のギルタイプへ
突撃を仕掛けた。が、次の瞬間には各艦発進時の噴射に巻き込まれ吹飛ばされていた…。
「も…もう…終わりだ…。」
スペースホープ外宇宙移民船団各艦が空高くへ飛びあがった時、ライオ共和国軍は誰もが
呆然と息を呑んでいた。未だに彼等の目的を惑星Zi全土の蹂躪だと勘違いしている彼等
にとってそれはもう絶望だったに違いない。

「うああああ!」
大蠍神の右腕部の一振りで吹飛ばされたレイアのヴァルキリーシーザーは岩山に強く
叩き付けられ、四肢の関節は完全に逆方向に折れ曲がる等もうダメージは限界まで
来ていた。ツインインパクトキャノンで大蠍神を狙おうとしてもエネルギーが無い。
もうヴァルキリーシーザーもレイアもこれ以上戦えなかった。
「は…はは…殺せ! お前の勝ちだよ! さっさと殺しなさい!」
レイアは笑いながら叫ぶが…大蠍神はこれ以上攻撃を行う事は無く、撤退を開始していた。
「な! 何故だ!? 何故お前が私の命を助ける!? 私の家族や友達を殺したくせに…
今だってこうやって私達の仲間を次々に殺したくせに何故! 何故私だけを助ける!?」
必死に叫ぶレイアも空しく、大蠍神はただただ撤退して行くのみだった。彼は別にレイア
を見逃したワケでは無い。ただただミスリルの撤退命令を優先しただけの事であった。
「そん…な…。」
そして、次の瞬間にはレイアの体力は限界に達し、気を失っていた。

90 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 53 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/28(金) 15:32:17 ID:???
スペースホープ外宇宙移民船団は空高くへ飛び上がり、宇宙へ昇って行く様を遠くへ
退避した傭兵達が見つめ、皆は手を振っていた。
「頑張れよー!」
「俺達がここまで頑張ったんだ! 宇宙で全滅なんてするんじゃねーぞー!」
デスザウラーやらバイオティラノやらがそうやって外宇宙移民船団に手を振る様は
かなりシュールな物だと思えたが、その場にミスリルと大龍神の姿は無かった。

宇宙へ昇って行くスペースホープ号の甲板上にただ一体ライオ共和国側のゾイドが
残っていた。それはルイスのセブンズソードである。と言っても、先の大龍神との戦闘で
コアを貫かれ動けない状態にあるそれはこのままスペースホープ号から落下するのは
時間の問題であろう。
「動け! 動いてくれ! お願いだから動いてくれセブンズソード!」
ルイスは必死に操縦桿を動かし、ありとあらゆるボタンを押し続けるが…それでも動く
はずは無い。しかし、ルイスは涙を流しながら必死に動かそうとしていた。
「おねがいだ! このままこいつ等が飛び立ったら世界が焼かれてしまう! 僕みたいな
孤児が世界中で生まれるんだ! そんなの嫌だ! 僕は僕みたいな孤児を作らない為に…
力無き人々を守る為に兵士になったんだ! だからお願いだ! あと少し…ほんの少し
でも良いから動いてくれ! お願いだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その時だった…明かりの消えたコックピットに灯が灯り、機能が回復して行くのである。
これはどうした事であろうか。だがそれだけでは無い。セブンズソードの全身が赤く
燃え上がり、その全身を変質させてしまうのである。
「え? え? これは…え?」
ルイス自身も何が起こったか理解出来なかったが、それはまさしくエヴォルトの光だった。
かつてルージ=ファミロンと名乗る男が使っていたムラサメライガーもエヴォルトの力に
よってコアを破壊された状態から復活したと伝えられる。すなわちルイスのセブンズ
ソードにも同じ事が起こったのである。しかしここからが違う。同じ赤く燃え上がる様な
エヴォルトを行っていてもハヤテライガーへ変身するのでは無い。まるで全身が炎の様に
燃え上がっている様な姿。そしてコックピットモニターにも“火炎”の文字が表示された。

91 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 54 ◆h/gi4ACT2A :2008/03/28(金) 15:34:02 ID:???
「火炎? そうか…そう言う事なんだな…ならば行こうカエンライガー! こいつ等の
世界蹂躪を防ぐ為に…その力を僕に貸してくれ!」
“カエンライガー”となったセブンズソードはスペースホープ号甲板を駆け出した。
目標は頭部に存在するブリッジ。そこを破壊して内部に侵入し、内側からエンジンを
爆発させてしまおうと考えていたのだが…
「ハッハッハッ! これは凄いですね! 流石の私もエヴォルトは初めて見ました!」
「お前は!」
ルイスとカエンライガーの前に立ち塞がったのはミスリルの大龍神であった。
確かに既にスペースホープ号が成層圏にまで昇っている以上、現時点でカエンライガーと
戦えるのは単独大気圏突入離脱が可能な大龍神以外に無いのかもしれない。
「あくまでも最後まで邪魔をすると言うのかロボット!」
「まあそういう事ですね。その為に雇われたのですし…。」
ルイスの問いに対してミスリルが軽く答えると、次はスペースホープ号へ通信を送った。
「後は私がやりますんで、貴方達は宇宙への旅立ちに集中してください。」
「ああ、頼むぞ!」
スペースホープ号からもスペンリーの軽い返事程度に過ぎなかったが、今は戦闘中。
だからこそ手短な返答で十分だった。
「やはりお前は人の心を知らないバケモノか! こいつ等の世界蹂躪に手を貸すなど!」
「何とでも言いなさい…。私はただの雇われの身ですから…。」
「その生意気な口…二度と叩けなくしてやる!」
カエンライガーは大気圏離脱時の高熱も物ともしないどころか、逆に高熱を味方に付けて
大龍神へ飛び掛り、真っ赤に燃え上がった刀を振り上げ襲い掛かった。が…
「ドラゴンフリーザァァ!」
大龍神の口から冷凍エネルギーが放たれ、カエンライガーは思わず横に跳んでいた。
「高熱には冷凍兵器って昔から相場が決まってるでしょ!?」
「くそ! そんな物も持っているのか!? だが…ならばそんな物でも凍らせられない
様な熱い攻撃を行うのみだぁぁぁ!!」
ルイスの叫びに呼応するがごとく真っ赤に燃え上がる刀さらに巨大化し、そこから激しく
振り下ろされる一刀は大龍神を吹飛ばす威力を見せ付けた。

92 : ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 01:53:48 ID:???
☆☆ 魔装竜外伝第十五話「見えざる包囲網」 ☆☆

【前回まで】

 不可解な理由でゾイドウォリアーへの道を閉ざされた少年、ギルガメス(ギル)。再起
の旅の途中、伝説の魔装竜ジェノブレイカーと一太刀交えたことが切っ掛けで、額に得体
の知れぬ「刻印」が浮かぶようになった。謎の美女エステルを加え、二人と一匹で旅を再
開する。
 八百長の濡れ衣を着せられたギルガメス。激昂は憧れの人を傷つける事態にまで発展し
た。再戦に勝利したのは冷静さを取り戻したからだ。一方対戦相手のアルンは敗北の後、
水の軍団に暗殺された。彼の額にも刻印が輝いていたのをギルは覚えている…!

 夢破れた少年がいた。
 愛を亡くした魔女がいた。
 友に飢えた竜がいた。
 大事なものを取り戻すため、結集した彼らの名はチーム・ギルガメス!

【第一章】

 双児の月が今日もこの星を淡く照らす。…月が二つも浮かぶのは、昼が苛烈を極めるか
らだ。愛も自由もあっさり踏みにじられるこの星で、綺麗事を呟けるひとときは唯一夜の
平穏のみに与えられる。慈愛の輝きは、一つでは足りない。
 そんな穏やかな光の下を、滑るように進む竜が一匹。…姿勢は読者の皆さんも良く知る
ところだろう、背を屈め、尻尾を後方に伸ばす所謂T字バランス。なれど、纏う鎧は色も
形も全く違う。張りぼてのように角張った鎧は薄い菫(すみれ)色。それが全身を見事な
までに覆い尽くしている。その上背中には自分の首程もある箱が乗っているという何とも
角張った風体。但し惑星Ziの自然界は調和を崩すのもお手のもの。箱の左右には鶏冠が
一対、傘を折り畳んだような奇妙な銀色の突起が一対生えており、この張りぼてのような
竜に見事生気を宿すのだから不思議だ。

93 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 01:56:24 ID:???
 張りぼての竜は短かめの両腕で腹部を固め、両足は大の字に広げたまま。足元には土煙
が立ち篭める。爪先の辺りを見れば地面よりひと一人分程浮き上がっているのがわかる。
この竜によく似た種類も時たま使うホバリングという移動方法。さしたる助走もせず当た
り前のように行なう辺り、生半可な自力の持ち主ではないことが伺い知れよう。
 さてこの張りぼての竜が行く道は、いつしか獣道のように狭まっていた。左右は切り立
った崖で覆われ、月光も届き難い。それでもこの竜の体格を考えれば、決して狭い道では
ない。何しろ竜の上顎内には比較的ゆったりとした作りのコクピットが埋め込まれており、
筋骨隆々たる男がゆったりとした姿勢で乗り込んでいる。彼と竜の体格とを比べればそ
の大きさが伺い知れるというもの。
 さてこの男、頬は茹で蛸のように赤い。右手がふとレバーより離れると、脇のコップ立
てに乗せられた茶色い瓶を掴む。口元に寄せてぐいとひと呑みするや深く息吐くその仕種。
泥酔とまではいかないものの、酔いを自覚できる位には呑んでいるに違いない。
 ふと、男の眼差しが途端に鋭く瞬いた。飲みかけの茶色い瓶を無造作にコップ立てに乗
せると両肩を怒らせる。レバー握り締め、全身で重力を受け止めるのを合図に、張りぼて
の竜も軽く前傾。踏ん張ったところでようやく進行が止まり、浮き上がった両足が接地す
る。途端にもうもうと舞い上がる土煙。しかし酔っ払いの見つめる大きめのモニターは土
煙の向こうをしっかりと映し出していた。
 雲の白色した二足竜。人のように直立し、胸を張る。上顎を曇りがかったキャノピーが
覆い尽くした風貌以外、さしたる特徴はない。強いてあげるなら小さく、しかし少々長い
両腕を肘で曲げ、腰の辺りに構える独特な姿勢位か。飄々とした雰囲気漂わせる何とも不
思議な二足竜だ。
 ゆっくりと持ち上がったキャノピー。立ち上がった者は東方大陸伝来の白い功夫服を着
た男。隈取りの紋様を描いた張りぼてのお面を被っているため表情は伺えない。但し頭髪
は黒く、そして無造作に長い。面を被ったところで彼の正体など想像が付くのは言うまで
もあるまい。朗々たる調子で面を被った男は言い放つ。
「チーム・ジャイアントクローのヴォゾン殿とお見受けした」

94 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 01:57:45 ID:???
 張りぼての竜の上顎も持ち上がる。酔っ払いは驚く程身軽にその身を持ち上げるや厳し
い眼差しを功夫服の男に向ける。
「そうだとしたら?」
「『刻印』持ちの腕前、お見せ願おう」
 酔っ払いは薄笑いを浮かべた。
「成る程、最近ゾイドウォリアーばかり襲う辻斬りが出ると聞くが…」
 茶色い瓶を今又手にし、ぐいと呑み干すとおもむろに腰を落とせば、それが合図である
かのように閉じる上顎。それまでには二足竜のキャノピーも閉じられていた。いずれかが
文字通り棺桶の蓋となるのだ。
 酔っ払いの天井が上顎で覆われるや否や、コクピット内が眩く照らされる。光源はこの
部屋の壁一杯に敷き詰められた計器類によるものではなかった。
「用があるのはこの額か、洒落臭い!」
 酔っ払いの額には不規則に明滅する妖しげな紋様。その輝きに瞳が照らされ、澱みが完
全に失せた。力一杯レバーを引き絞れば、たちまち張りぼての竜の足元より立ち上がる土
砂の柱。左足を一歩大きく踏み出せば傘のような銀色の突起一対が前方にすらり。
 右足を踏み出せば、突起の根元がぐいと伸びる。触手だ。さしずめ長剣を握った蜘蛛の
足。この蜘蛛のような触手は節々を妖しくくねらせ、突起を振り回しながら目前の二足竜
目掛けて突きに掛かる。右から左から、頭上から足元から。一回り小さな二足竜を包囲す
るかのように、あらゆる角度から繰り出される突起。先端は錐のように回転し、悲鳴のよ
うな金属音を立てて月夜を切り裂く。
 変幻自在の竜の攻撃を前にして、しかし白色の二足竜は一向に慌てる仕種を見せない。
柳が風に流れるかのように左へ右へ。頭を下げて仰け反って。傍目には全く手が出せない
ようにも見えるが、やかましい金属音はこの白色の二足竜からは一切発せられないまま。
 操る功夫服の男も小刻みにレバーを捌きつつ、息を切らしも乱しもしない。
「ドクター・ビヨーの眼力は大したものだな。ゾイドの選定も、ウォリアーの実力も。
 ガイロス帝政時代の『BF』を間近で見れたのも驚きだが、これを自在に操ってみせる
のだからな」

95 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 01:59:04 ID:???
 敢えてマイクを通して呟いてみせる功夫服の男。音声を拾った酔いざめの刻印の戦士は
血相を変えた。…功夫服の男は酔っ払いが駆る張りぼての竜の出自は愚か、誰が彼に授け
たのかまでズバリ言い当ててみせたではないか。
「貴様、一体何者…!?」
 一層加速する戦士のレバー捌き。応えた張りぼての竜、ひと吠えするや、左右から強敵
を抱え込みに掛かる突起一対。真正面からは顎を、そして短かめの前足を揃えて伸ばす。
しめて三方からの肉迫。…ここまで、動揺の表情は浮かべても手が止まらぬのだから流石。
 しかし彼ら主従の不幸は強敵の出自など全く知らぬことにあった。正面から、そして左
右から空気切り裂く風の音を耳にしても白色の二足竜は恐れる様子を見せず、影が這うよ
うに前のめり。
 モニターから一瞬、敵の姿が消えた。刻印の戦士は目を見張ったが、直後、全身を襲っ
た衝撃に敵の居所を瞬時に察知した。懐だ。張りぼての竜の、懐深くに飛び込んだ二足竜。
挙げ句に相手の腹をまさぐる。この敵の弱点を見つけるだけなら簡単だ。腹部だけは薄い
菫(すみれ)色が覆っておらず、蛇腹状の鉄の皮膚のみで守られているに過ぎない。しか
しここを狙うのは困難を極めよう。T字バランスの姿勢は腰が低く、腹部を完全に覆い隠
している。…そんな腹部に難なく飛び込んでみせたのがこの二足竜と主人の実力だ。
 慌てて伸ばした両腕を引き戻す張りぼての竜。二足竜の小さな身体を掴みに掛かる。し
かし二足竜は低い姿勢を一層低くし、容易に身体を掴ませない。ならばと張りぼての竜も
膝を、足首を曲げに掛かる。自慢の脚力で身体を持ち上げる狙いは、しかし二足竜にあっ
さりと看過された。…戦士の左足に走る激痛はシンクロの副作用。相棒の左の爪先には二
足竜の右足が杭のごとく打ち込まれているではないか。身動きの取れぬ相棒を目の当たり
にして、戦士の脳裏に後悔の念がよぎる。

96 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 01:59:57 ID:???
 かくして勝敗はあっさりと決まった。張りぼての竜はひとしきりもがいていたが、やが
て膝から崩れ落ちた。布団でもひっくり返すように払い除ける二足竜。仰向けになった張
りぼての竜の腹は真っ赤に焼けただれていた。金属生命体ゾイドの生命の源であるゾイド
コアがゼリーのように溶け掛かっているのが遠目からでもはっきりと確認できる。…だが
二足竜の暴虐はこれで終わりではなかった。焼けただれたゾイドコアになど目もくれず、
長い両腕で張りぼての竜の頭部を掴む。上顎のハッチは開き掛かり、中から戦士が胸まで
飛び出し脱出を計っていたところ。だがこの二足竜には容赦する余地などない。
 程なくして、覆った両腕の隙間から漏れ出した火花、煙。両腕を離した二足竜。掴まれ
ていた張りぼての竜の頭部は鎧の部分こそ無傷ではあるものの、目やハッチ部分など鎧と
鎧との隙間に当たる部分はすっかり炎上し、飴玉のように溶け掛かっていた。
 直立の姿勢に戻った二足竜。強敵にとどめを差した両腕を腰にまで引き戻すとゆったり
と身構える。勝利しても雄叫びなど上げる素振りも見せない。
 頭部コクピット内に乗り込む功夫服の男も又、平静そのもの。コントロールパネルを弾
くとキャノピーに複数のウインドウが浮かび上がる。
「作戦終了。皆の協力に感謝する」
 浮かんだウインドウに表示された者、三名。いずれもシルエットのみ。それでも髪型や
体格がまちまちなのは確認できる。
「つまらないよ、パイロンさん」
「協力と言っても俺ら見張ってるだけじゃん」
 シルエットの内二名が不満を並べ立てる。いずれも声が若い。それを残る一名がたしな
めた。こちらは功夫服の男より嗄れ、重みもある。
「馬鹿なことを申すな。お前達に出番があるようでは作戦失敗の危機ではないか」
 彼らは何処にあるのか。…この獣道を囲む左右の崖の上に声の主はいたが、しかしその
配置まではわからない。いずれもゾイドに搭乗しているが、互いの位置は周囲を見渡した
だけではわからない。だが、それで良いのだ。結集したのはいずれも遠距離を攻撃するの
に長けたゾイド。

97 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 02:00:55 ID:???
 一匹はT字バランスの姿勢を崩さぬ灰色の二足竜。所々配された大人しめの青が、そし
て上顎を覆う橙色のキャノピーが派手な印象を与える。上顎の後ろからは耳とも角ともつ
かない突起。背中には二本の鶏冠と思いのほか過剰な装飾。尻尾は百足の節のように折れ
曲がり、先端には銃口が。今回は火を吹かなかったが、その銃口こそ巨大な敵を屠る武器
なのだ。人呼んで砲竜ガンスナイパー。
 別の場所で佇む二足竜も又、灰色の二足竜と同様のT字バランス。なれどこちらは全身
白一色。一方で背中の鶏冠も短く、頭頂部には短かめの角一本のみと装飾は少ない。一方
で両腕の爪は不自然に大きく、又尻尾は小銃のように真直ぐで却って奇異な印象を与える。
この尻尾もガンスナイパー同様、殺傷力の高い武器。人呼んで弩竜(どりゅう)スナイプ
マスター。
 残る一匹は腹這いの上に、四本足は極端に短い。地球で言うところの亀によく似ている。
全身濃い緑色で染め上げられ何とも地味なことこの上ないが、只一つ背中には自らの身長
程もある大砲が積まれ、体色に似合わぬ威容が黙っていても発せられる。人呼んで轟鼎
(ごうてい)カノントータス。
 三匹は異なった位置にいても、その尻尾なり大砲なりは皆、先程の戦闘地点に向けられ
ていた。崖の上へと飛び越えようものなら尻尾の物騒な二匹が狙撃し、落下地点目掛けて
大砲積んだ亀が砲撃する算段だったのだろう。功夫服の男はキャノピーに浮かび上がる鳥
瞰図を目にし、表情を変えず呟く。
「相手が未熟だったのがもっけの幸い。もし一目散に逃げ回りでもしたら我が相棒『オロ
チ』では追いつけなかったに違いない。
 ともあれ、これでようやく十人屠った」
「刻印の戦士が十人も見つかかったのは驚きですが、ことごとく葬ることができたのも奇
跡的です」
 声の重いシルエットが返事するが。
「…チーム・ギルガメスがいる」
 その名を耳にしては三人とも黙りこくらざるを得ない。
「連中の台頭はB計画の遂行に都合が良い。だからドクター・ビヨーもここぞとばかりに
刻印の戦士を育て上げ、野に放し、そして殺し合わせようとした。

98 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 02:01:52 ID:???
 だからこそ、もしビヨー子飼いの刻印の戦士が『それ以外の要因で』尽く敗れたのなら、
奴も決断せざるを得なくなる。計画の修正か、もしくは計画に邪魔なものを排除するか、
いずれかだ。その時が勝負よ」
 白色の二足竜は夜空を見上げる。双児の月は今も曇ることなく大地を照らすが、足元よ
り立ち篭めた煙はそんな淡い輝きを遮断する。…敗者が業火により燃え盛って上がる煙だ。

 ヴォルケン・シュバルツは溜め息を突きっ放しだ。幼い顔立ちは目を見張ったりしかめ
たりと忙しい。…彼が胡座を掻くテーブルの上にはノート大の端末が展開され、そこには
奇妙な画像が幾つも表示されている。そのいずれもがゾイドの一種であろう金属の光沢を
放っていたが、描かれたものは我々地球人の目からしても奇異な印象を受けるものが多い。
「バイオヴォルケーノか。ビヨー氏の趣味丸出しだね。『独月抄』、レガックは読んだこ
とある?」
 広いが薄暗い個室。カーテンが張り巡らされているために外の様子は伺えない。さて絨
毯の敷かれたこの部屋の床の上に、座る者はこの若者一人。なれど室内にはもう一名の気
配あり。
 その者の気配を若者は十分把握していた。だが気配の発せられる場所は奇妙。何しろ天
井に足を付け、逆さにぶら下がっているではないか。全身黒の衣装を身に纏い髪も真っ黒
なこの男、頬も適度にこけ見掛けには優男とさえ呼べる風貌。しかしその瞳だけは青に緑
にと妖しげに明滅を繰り返している。レガックと呼ばれたこの男は落ち着いた、しかし極
めて機械的な口調で答えに応じる。
「はい。月が一つしかない世界とはいささか突飛ですが、戦いに身を委ねる者からすれば
興味深い話しも多数見受けられます」
「その、『独月抄』にしか出てこないゾイドを用意できるなんてね。彼のパトロンも物好
きだよ。
 それでもって、今度は『BFー02』と来たか。元はと言えば僕達ガイロスのゾイドじ
ゃあないか」

99 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 02:04:20 ID:???
 栗色髪を掻き上げる若者。彼の頭上でぶら下がる優男の表情にも少し主人の憂い顔が伝
染したかに見える。…旧ガイロス帝国産ゾイドの中には共通の思想の下で品種改良が施さ
れたグループが多々ある。その一つがBF(バーサークフューラー)シリーズと呼ばれる
もので、優秀な性能故に長年に渡ってガイロスを守護してきた。その技術も「最後の大戦」
でヘリック共和国に敗れてからはゾイドは尽く安楽死させられ、技術資料は没収となった。
 ガイロス公国の貴公子ヴォルケンからすればこれ程口惜しい話しはない。祖国の権勢を
回復させるために必要なゾイド技術をどこぞの職業戦士にポイとくれてやるのだから勘弁
して欲しいところだ。
「『独月抄』に『BFー02』、超古代技術にユニゾン、もう何でもありだなぁ。
 ビヨー氏にとってゾイドバトルはさしずめゾイド技術の実験場だ。少なくとも、そうい
う側面はある」
「ですが、只の実験ではございますまい。先程も御説明しました通り、これら全てのゾイ
ドの搭乗者が額に刻印を備えていることを確認済みです」
 ぶら下がる優男は両の拳を握ってみせた。
「…内、二名はチーム・ギルガメスと試合し、敗北後水の軍団の襲撃を受けて死亡しまし
た(※第十四話参照)」
 右の人差し指と中指を広げる。
「又、内二名はチーム・ギルガメスに野試合を仕掛け、敗れたところをやはり水の軍団に
襲撃され死亡。残る六人は水の軍団に直接襲撃されて死亡」
 右の薬指と小指、そして残る親指と左の指全部を広げる。
「占めて十人。刻印の戦士が倒れました。
 手駒である筈の刻印の戦士同士を戦わせるのは誠に不可解ですが、もしドクター・ビヨ
ーが『某国』なるものの要人であり、彼の率いる刻印の戦士が『B計画』と関係あるとす
るなら、水の軍団の度重なる横槍を阻止するために何かしらのカードを切ってくるに違い
ありません」
 正しい重力の下で胡座を掻く若者は腕組みした。ゆったりとした祖国の民族衣装がふわ
りとなびく。
「こちらも色々手を打たなければいけないね。間に合えば良いけど…」


100 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 02:06:57 ID:???
 双児の月の下で穏やかな夜更けを迎える者達もいた。
 小高い丘の上にはテントが二つ、横並び。貯水タンクや簡易キッチン、仮設トイレやカ
ーテンに囲まれた薬莢風呂などが弧を描きつつ立ち並ぶ。奇妙な調和の雰囲気。これらの
道具を借りてきた者達は予め望ましい配置を決めているようだ。
 布が揺らいだ左のテント。中から現れた者は灰色のパーカーを羽織っている。下半身は
膝下で切れた半ズボン、素足でスニーカーを履く出立ち。パーカーの頭巾の中から現れた
顔は円らな瞳とはみ出たボサボサの黒髪が目立つ。ギルガメスは軽く息を吸い込み、そし
て吐く。…幾分、吐息が白いのはやむを得まい。見渡す限りの荒野だ、彼らを暖めるもの
など他には見当たらない。
 少年は簡易キッチンに足を忍ばせる。音を立てぬ歩き方はどこか遠慮勝ち。冷たい水で
顔を洗い、タオルで拭うとじっと月夜を見上げる。…同じ月夜の下で、もしかしたら惨劇
が繰り広げられているのか。彼は重い溜め息をつくばかり。だがそれも数秒、この平等な
のは輝きだけの残酷な女神にそっぽを向くと、思いのほか軽い足取りでキャンプの輪から
出ようとする。
 と、振り向いた真正面にはいつの間にやら壁が立ち塞がっていた。しかし少年は不意の
出来事に驚きはするものの、それ以上の動揺は見られない。何しろ目前の壁は、彼自身が
今まで見慣れてきた竜の相棒だから。民家二軒分程もある巨体から近付けてきた鼻先は、
雨戸よりも広い。魔装竜ジェノブレイカー、今は若き主人に単にブレイカーと呼ばれる深
紅の竜は背負いし六本の鶏冠、二枚の花弁翼を広げつつ、常ならばT字バランスの姿勢を
幾分丸めて宙に浮かんでいる。これでは地響きも立てないから少年も気が付かないわけだ。
 深紅の竜は不安げに少年を見つめている。微かに漏れる息遣いは鳴き声を押し殺してい
るかのようにも聞こえる。このゾイドにとって夜は狩りの時間だが、Zi人にとっては眠
る時間だ。だからこそ、突如夜更けに起き出した少年の挙動には動揺せざるを得ない。
 だが少年は小さな身体を思い切り広げてみせた。両腕一杯、左右に。
「狩りはおしまい? お腹は一杯になったの?」

101 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 02:09:34 ID:???
 若き主人の声を受け、深紅の竜は鼻先を少年の胸元に寄せた。少年も二度、三度と頬ず
りしてやると意志の強そうな眼差しを向けてやる。
「ちょっと、走ってくる。ブレイカーはエステル先生をお願い」
 深紅の竜は押し殺した息遣いのままピィと一声、甲高く鳴いた。
 遠くで、足音が聞こえる。丘を駆け降りる音だ。その方角を凝視しつつ、深紅の竜は翼
を一回、柔らかく羽ばたく。鋼鉄の巨体が羽毛のように舞い降り、音も立てぬ奇跡。それ
でも風圧の影響だけは避けられず、正面のテントが風に揺れる。竜は子犬のようにうずく
まると首をもたげ、足音の方角をじっと見つめていた。金属生命体の五感は常人では計り
知れないが、なまじ心情豊かだと不意打ちも受けるものだ。
「大丈夫よ、心配しなさんな」
 落ち着いた女性の声を耳にして、竜は肩をすくめ、真正面に向き直した。…テントの片
割れから上半身だけ出してきた彼女の瞳は切れ長で、鋭く輝く氷の蒼を帯びている。面長
で端正な顔立ちなれど、流石に就寝中だったのか肩にも届かぬ黒の短髪は若干乱れがちだ。
彼女…エステルは寝巻きの上にコートを羽織る出立ちのまま、竜が凝視していた方角を見
遣る。
「自分で乗り越えようとしているんだからね」
 女教師はあくびの出そうな自らの口元を押さえた。…深紅の竜にああやって言い聞かせ
はしたものの、愛弟子のことが全く心配でなければ嘘になる。ギルガメスは自分と同じ境
遇に陥っていた者が他にもいると知ってしまった。ジュニアトライアウトを不可解な理由
で不合格に処された者達。その中の一部は刻印の力に目覚め、ドクター・ビヨーなる人物
より見たこともないゾイドを授けられた。彼らは恩人たるビヨーに報いるために、或いは
同じ境遇であるギルガメスとわかり合うために対戦を望んだ。但し、一つだけ違っていた
のはエステルが傷付いたギルガメスを労ったのに対し、ビヨーは容赦なく切り捨てたこと。

102 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 02:11:04 ID:???
 少年とて仲間が欲しい筈だ。苦しみを分かち合える仲間が。生真面目なアルンはギルと
気が合ったかも知れない。なのに現実は、対戦後に水の軍団の襲撃にあって死亡と来た
(第十三話・十四話参照)。エステルは監督としてすぐに決断した。契約中の全試合のキ
ャンセル。対戦相手の中に刻印の戦士が紛れ込んでいたら前回のような悲劇は繰り返され
るからだ。…だがビヨー配下の刻印の戦士は執拗に、チーム・ギルガメスに接近してきた。
如何にもゾイドウォリアーらしい方法でだ。
 かくして、放浪の旅を続ける二人と一匹がいる。水の軍団のみならず、刻印の戦士の追
撃を振り切るための旅路は厳しい。…只、少年は一年程前よりは遥かに逞しくなった。あ
の頃はテントの中で泣いていた。それを考えれば無我夢中で走るのは見違える進歩だ。
「ブレイカー、ギルを守ってあげてね。
 私は…彼の呪いを解く手掛かりを、何とかして見つけ出すわ」
 深紅の竜は甲高く鳴いた。眠る者がいない以上、遠慮はいらない。女教師は切れ長の瞳
を細めた。
                                (第一章ここまで)

103 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:09:27 ID:???
【第二章】

 夜が明けた。残酷な朝が今日も幕を開ける。
 一部のゾイドにとって朝はお休みの時間。これもイブの配剤。かように巨大な肉体の持
ち主が昼に夜に暴れ回っていたら、Zi人は文明を築き得なかったに違いない。
 我らが深紅の竜も微睡んでいた。首と尻尾を丸めてうずくまり、大きな爪で顔を隠して
こくり、こくり。非常に多くのゾイドは瞼を備えていない。弱肉強食の世界に適応した結
果かも知れぬが本当のところはどうか。いずれにしろ熟睡するには視界を遮った方が効率
が良さそうだし、今はそれ位やっても許される筈だ。
 図体に似合わず可愛らしい寝息を立てる深紅の竜。このゾイドを背にしながら入念にス
トレッチを繰り返す師弟。いつも通りの練習風景だ。
 それにしても、少年の身体は柔らかい。股を割りつつ尻餅つけば、両足は左右一杯に広
がる。そこに加えて女教師がグイグイと背中を押すのだ。常人では悲鳴が上がるところを
少年は無難にこなす。流石にゾイドウォリアーになる程の少年がこれしきのことで音を上
げたりはしない。
 そんな中、彼が想定していないことが起きた。次の姿勢に変えようとした隙のことだ。
不意に彼の口が開く。出掛かった、軽いあくび。咄嗟に口を覆った手。しかしその行為自
体が少々微妙な「間」を作った。若干引きつる口元。
 女教師は表情を変えず、しかし手は動かしながら呟く。
「寝不足?」
 少年は内心舌を巻いた。彼女はこちらのちょっとした変化をちゃんと見ているのだ。そ
れは時に頼もしいが、時に後ろめたい気持ちにもさせられる。
「え、ええ、中々寝付けなくて…」
「仕方ないかしらね。ここしばらくトラブル続きだもの」
 言いながら、黙々と少年の背中を押す。意外な無反応に少年は却って狼狽えてしまった。
深く追及されるものだとばかり思っていたから余計にだ。
 女教師は愛弟子の動揺を知ってか知らずか、黙々と背中を押し続けるのみ。
 少年は困ってしまった。彼女の真意が計りかねる。いっそ怒鳴ってくれた方が気楽。
 ふと、止まった彼女の手元。彼の心情を察したのか。

104 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:10:13 ID:???
「教師って、人を導くのが仕事よ。でも…」
 言葉を選ぶために、口をつぐむ。数秒も経たぬ間の重苦しさ。耐えかねた少年はくるり、
振り向く。
「でも…?」
「道は、結局のところ一人で進まなければいけないのよ」
 視線が重なる。少年の円らな瞳、女教師の鋭い瞳。投げかけられたものを視線で受け止
めると、彼はうつむき、もとの柔軟体操の姿勢に戻さざるを得ない。
 取り敢えず、彼女が全てお見通しだということはわかった。その上で咎めるつもりがな
いことも。少年を多少なりとも認めているからこそ口喧しくは言わなかったのだ。しかし、
彼女が心配しているのも明らかだ。でなければさっさと彼女なりに用意した正解を言う筈
である。急がなければいけない…少年は考える。
(そのためにも、もっと強くなりたい。強く、強く、強く…)
 少年が念じ始めた時、ふとアラームが朝の静けさを掻き破った。ビークルから発せられ
たものだ。女教師は立ち上がると早速駆け寄っていく。きっと、近場のゾイドウォリアー
ギルドからだろう。興行でも持ち掛けてくるのではないか。少年は彼女が離れようが関係
なく練習を続けるのみ。
 しばらくの応対の後、すぐさま掛け戻ってきた女教師。少年の背中に回り、しゃがみ込
むと何事もなかったように練習の再開。しかし本題はこのすぐ後切り出された。
「ギル。一日教師でも、やって見る気はないかしら」

 背筋を弓のように反り返した深紅の竜。大あくびすると二枚の翼を水平にぐいと広げ、
軽いステップを数歩も踏めば滑空の開始。武骨な巨体に似合わぬ軽快な足取りは、このや
んちゃなゾイドの気分そのもの。
 竜の後ろからはビークルがエンジンを吹かしながら近付いてくる。年代物のこの機械で
も追いつける速度だ。ゴーグルを掛けた女教師がレバーを傾ければビークルは竜の胸元当
たりへと宙を滑り寄っていく。竜の方も心得たもので、頃合を見計らって両腕をぐいと伸
ばせば鮮やかに、ビークルは竜の掌中へ。かくして竜は宝物を抱えるようにビークルを両
腕で抱え、何事もなかったかのように疾走を継続。

105 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:11:06 ID:???
 竜の胸部コクピット内では少年が座席の後ろに回り込んでいる。着替えの真っ最中だ。
全方位スクリーンシステムはその性格上、コクピットを大きめに作らざるを得なくなる。
これは少年にとって非常に都合が良かった。例えばこのように、室内で着替えも容易くで
きるのだから。
 Tシャツの上に卸し立てのワイシャツを着るが、ネクタイを巻くのは後回し。膝下まで
の半ズボンを脱ぎ、ブレザーのズボンに代える手際は妙に早い。こうしている間にもウイ
ンドウが開かれ、ある意味全く空気を読まない女教師に覗かれるのは御免だからだ。自分
の裸身を晒すことに全く抵抗のない彼女が相手だから分が悪い。
「…もう良いかしら?」
 突如、スクリーン中央に開いたウインドウ。幸い「SOUND ONLY」の文字が中央に巡ら
されている。流石に女教師も心得たもので、それなりに配慮しつつ計ったかのようなタイ
ミングで通信を試みてきた。
「は、はい。もう…大丈夫です」
 言いながら、着席する少年。拘束具は未だ肩の上に上がったまま。脱ぎ捨てた着替えを
まとめて席の下にある棚に突っ込むと、早速ネクタイを締め始める。一番時間が掛かる作
業は後回しだ。
 ウインドウには今度こそ映像が浮かび上がった。ゴーグルを掛けた女教師の黒髪が風に
なびく。
「…嫌がるかしらと思ってたのよ。どうして話しを受ける気になったの?」
 もっともな話しだ。多分、一年も前なら断わっていた筈だと彼自身も思う。
「わからないです。でも受けた方が良いんじゃあないかって…その、閃いて」
 真顔で聞いていた女教師はふと口を押さえた。声こそ立てないものの、笑っている。
「御免、悪かったわ。…良い閃き、だと思う」
 少年は頭を掻いた。心持ち、頬も赤い。
「僕の故郷でもウォリアー志望者向けにゾイド操縦を教えるのは専ら先生だったんです。
田舎だったから近場で試合を見ることもできなかったし…。
 僕なんかの技術でも役に立つなら嬉しいかなって。閃いてから、そう思いました」
 少年の一言一句を聞く度、女教師は何度も頷く。

106 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:13:00 ID:???
 深紅の竜はそんな師弟のやり取りを己が胸元を見つめて見聞きしながら小首を傾げてい
た。このゾイドは相当に利口な部類だが、「一日教師」などというちょっと捻った言葉は
わからない。このすぐ後で少々後悔する羽目になるのだが、今の時点では若き主人の前向
きな姿勢に満足していた。ゾイドが生きていく上で主人の成長が大きな楽しみであるのは
紛れもない事実だ。
 ワイシャツの上に拘束具が降りる。しっかりと握った操縦桿。目前には防風林に囲まれ
た山道が。この程度、駆け登ることなど深紅の竜には容易いこと。
 山道の先には小型の二足竜が数匹、繋がれている。不意の珍客には驚いたようで天を見
上げていななき始めた。鬱陶しげに睨みながらその身を伏せる深紅の竜。
 ここは「ゾイド溜まり」だ。目前には深紅の竜二匹分はある土手が更に広がっている。
目的地の村はこの先に広がっているに違いない。Zi人とゾイドが共存するには限界があ
るため、小さな村にはこうしたゾイド溜まりが必ずと言って良い位、用意されている。
 抱えていたビークルを丁重に地面に置く深紅の竜。颯爽と降り立つ女教師。ゴーグルを
外すとサングラスを掛け直す。粒の胸部ハッチが開くとブレザーの上着を着用しながら彼
女の愛弟子が降り立ち、駆け寄る。
 程なくして、土手の先から数名の人影が駆け上がってきた。いずれも、中年の域に差し
掛かった大人。但しある者はジャージを着、ある者はブラウスの袖をまくるといった身体
を動かすには楽な格好。師弟は一目見て、彼らが今回依頼してきた者達だと確信した。こ
の先の村にあるジュニアハイスクールの教師達だ。
「お呼び立てして申し訳ございません。私、リガス・ジュニアハイスクールの…」
 最年長と思われる腹の少々突き出た男性が汗を掻きつつ深々と頭を下げる。と、その後
ろで上がった歓声のやかましいこと。
「すげー! ジェノブレイカーじゃん!」
「本物だよ、本物! あそこに立ってるのがギルガメスじゃねえ?」

107 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:13:52 ID:???
 いつの間にか、土手の上に駆け上がっていた少年少女。ざっと二、三十人といったとこ
ろか。年格好は少年とほぼ互角。中には明らかに彼より背の高い者もいる。只、いずれも
瞳の輝きは純真無垢で、幾つもの修羅場を凌いだ少年の瞳がたたえる凛とした輝きとは好
対照だ。弱った教師達は振り返って怒鳴りつける。
「静かに、静かに! 早く土手から降りなさい!」
 顔を見合わせた師弟は笑いを堪え切れない。特に少年は確信していた。数年前にこうい
う場面があったらきっと同じようにはしゃいだに違いない。
「先生方、丁度良いですから今日のメニューを発表されては…」
 笑いを堪えつつもしっかり助け舟を送る女教師。
「あ、ああ、そうですね。では…。
 えー、今日チーム・ギルガメスの皆さんにお越し頂いたのは、みんなにプロのゾイドウ
ォリアーの技を学んでもらうためです。
 ギルガメス先生にはバトルローバーに騎乗しての基本動作をみっちり教えて頂きます。
さあ、みんな先生に…」
 言いかけた時、素頓狂な声を上げる者がいた。いや、これはゾイドの鳴き声。師弟は聞
き慣れた声を耳にして振り返る。
 深紅の竜だ。前肢をついて身を乗り出し「本当か」とでも言いたげに師弟の顔を覗き込
む。少年は狼狽えたが女教師は冷ややかだ。
「ブレイカー、大人しくなさい。
 3Sクラスゾイド(※人よりは大きい程度のゾイド)の操縦は基本中の基本よ。貴方に
出る幕はないわ」
 口を大きく開けてみせる深紅の竜。威嚇の矛先は自分の出る幕に対してではない。愛す
べき主人が他のゾイドに触れることに対してだ。大体、この馬鹿でかい竜は自分の何分の
一もない少年と毎日スキンシップして暮らしているのだ。あれこそが竜の生き甲斐。あの
暖かい肌が他のゾイドに触れるなんて冗談じゃあない。
 しかしこの場は、抗議する相手が悪過ぎた。女教師はサングラスをつまむと軽く下げる。
切れ長の蒼き瞳が一層強く輝き。竜を睨み付ける。周囲の人間は彼女が背を向けているか
ら何が起こっているのかわからないが、異様な雰囲気だけは理解できた。唯一この一方的
な攻防を察知した少年はバツが悪そうにそっぽを向かざるを得ない。

108 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:15:18 ID:???
 数秒も経ずして深紅の竜はがっくり項垂れた。おずおずと身体を引っ込め、丸くなる。
容赦のない女教師は一転して笑顔を浮かべた。
「そんなに時間は掛からないから、大人しくしてなさいね」
「ブレイカー、ごめん」
 両手を合わせる少年の申し訳なさそうな表情を見て、さしもの深紅の竜も少し溜飲が下
がったのか健気に軽く鳴いてみせる。…鳴いて、彼らを見送ることにしたこの竜は、ボオ
ッと後ろ姿を見つめている内に、妙な鳴き声が聞こえてくるのに気が付いた。耳慣れない、
そして不快な鳴き声だ。

 土手を越え、そこら中に広がる防風林を越えた先に案内された。取り壊し寸前の旧家と
言い張れば通りそうな程、老朽化した小さな校舎が一棟。その目前に広がる校庭も、深紅
の竜のごとき巨大なゾイドを数匹受け入れれば一杯になってしまう程度の規模だ。
 しかし情熱は、古びた校舎などものともしなかった。よく整備された校庭の中央には人
だかりが出来上がっている。勿論その大半は子供達の寄り集まりだ。大人達は彼らの外周
で見守るように囲んでいる。
「ああ、あの鳴き声ですか? あれは輸入ノルマ絡みで、村で買ったローバーの声ですよ」
 腹の出た教師は苦笑い。女教師は事情を察した。ヘリック共和国議会は満場一致でゾイ
ド貿易自由化法を制定(第八話参照)。周辺各国や民族自治区に自国産ゾイドを売り付け
ようとしたものの、思惑通りには行かなかった。そこで議会は各国・民族自治区にゾイド
輸入ノルマを突き付け、これを了承させるに至ったのである(第十四話参照)。
 報道では自治体レベルにまで徹底されるとのことだったから、リガスというこの辺境の
村にまで共和国産ゾイドが飼われていてもおかしくはあるまい。もっとも、歓迎されてい
るかどうかとなると話しは別だ。
「随分と神経質そうに鳴きますね」
「ええ、村の誰にも中々懐きませんもので。ひとまず我が校の厩舎で預かっているのです
が、今後はどうしたものか…」

109 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:16:03 ID:???
 談笑する二人の十数メートル先では少年と子供達の掛け合いが繰り広げられていた。青
く透き通った体皮の二足竜・バトルローバーは人よりは若干大きい程度なので居住区内も
出入りできる。ジュニアハイスクールで飼われるのも当然と言えた。三匹程横に並んでい
るが興奮気味なのか、落ち着きなく周囲をキョロキョロ見渡している。
 右端のローバーの前に立ったギルガメスは周囲を見渡す。好奇心で輝きが溢れてきそう
な瞳の群れに少々圧倒されるが怯んでもいられない。
「ええと、とにかく大事なのはスキンシップ…です。ゾイドは寂しがり屋が多いんだ。ど
んな時でも優しくしてあげて。こんな風に…」
 首元を撫で、頬を寄せてやる少年。幾ら小さなゾイドとは言え体格の小さな少年には十
分に大きい。だから思い切り背伸びするが、相手のローバーは少年の息遣いを耳にするや
嬉しそうに腰を下げ、頬を寄せてきた。何しろ少年の頬擦りは大胆だ。体格差をまるで恐
れず官能的なまでに濃厚に触れ、撫でてやる。これも深紅の竜を相棒としてきた経験から
為せる技。おかげでこの一匹はあっさりと少年に懐き、低く屈んでみせる。少年を背の上
に受け入れる準備は万端だ。
 注目していた子供達の一部からは黄色い悲鳴が上がる。女生徒のものだ。男子は一様に
溜め息をつくが、中には表情が緩み切ってしまう者もいた。
「何かエッチっぽいよ〜」
「ギルガメスさんって彼女にもそんな風にしてるの?」
 不意をつかれた質問に赤面を堪え切れなかった少年。ちらり、移した視線の先にはこち
らを真剣な眼差しで見守る女教師の姿が映る。彼女が気付かぬ内に視線をすぐさま戻すと。
「ば、馬鹿、変なこと聞くなよ! それより優しくするのは誰に対してでも同じだろ?
 さあ、みんなもやってみて」

 歓声はゾイド溜まりにまで届いてきた。防風林しか隔てていない上に、ずば抜けた五感
の持ち主であることが災いした。声が耳に届く度に深紅の竜は肩をすくめ、悲しそうにす
きま風のような我慢の鳴き声を発する。

110 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:17:42 ID:???
 すぐ側で繋がれていたバトルローバーの群れは、既にこの竜が滅法寂しがり屋であるこ
とに気が付いていた。だから竜が身体を動かす度、ひそひそ内緒話しでもするかのように
鳴いてみせる。深紅の竜が睨み付ければひとまず黙るのだが、既に底は知れていた。竜が
しゃがみ込むと今度はさっきよりも小さく囁き合う。竜は最早怒る気にもなれない。…あ
の小さな主人のことだ、自分自身に対するのと同じように熱心なスキンシップを重ねてい
るに違いない。竜の心の奥底で嫉妬の暗い炎が巻き起こるがどうすることもできず、仕方
なく地面に「の」の字を書き始める始末。自慢の爪で書くのだからマンホールの蓋のよう
に大きな「の」の字だ。
 だが情けない深紅の竜も流石に気付いた異変。さっきから聞こえる鳴き声が激しさを増
している。危機を訴えるかのような悲痛な叫び。

 校舎の裏手には厩舎が広がっている。その一番右端より、鳴き声は聞こえてきた。その
バトルローバー、見掛けの上では周囲の二足竜とさして違いが見当たらない。なれど先程
から狭い厩舎内を前に後ろにと動き回り、天井を見上げては甲高く吠え立てる。この奇妙
な行動、師弟がここに到着した頃から続けていたとしたら、もう一時間以上は繰り返して
いることになる。
 近くのローバーはうんざりした様子でうずくまっていた。仕方ないことだ、彼らが幾ら
吠え返そうがこの迷惑な隣人は奇行を止めようとはしない。だがそんな彼らにも待望の援
軍が現れた。
「折角ゾイドウォリアーの方が来て下さってるのにやかましいったらありゃしない」
「余りしつこいようなら引っぱたくしかありませんか」
 二、三人の教師が駆け足で向かってきた。問題児の前に立つと早速怒鳴り立てる。
「うるさい、静かにしろ!」
 問題児は吠えるのを中断して教師達をじっと眺めたが、数秒も持たない。それどころか。
 揺れる、厩舎。響く、轟音。力任せに叩き付けた鐘の音のよう。
 教師達は尻餅をついていた。当たり前だ、轟音を真正面から受け止める羽目になったの
だから。そして、轟音は繰り返される。音源は今まさに厩舎を構成する鋼鉄の柵に向かっ
て何度も何度も、Zi人よりは明らかに大きい自らの五体を叩き付けている。徐々に、だ
が着々とひしゃげ始める柵の意外な脆さ。


111 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:18:39 ID:???
 一方、ギルガメスの熱心な授業は着々と進行していた。根が生真面目な彼の教え方は、
とにかく実例を自ら示し、それを生徒達にも試してもらうことで一貫していた。
「僕らとゾイドは対等なんだ。だからゾイドに何かしてもらう時はお願いするつもりで。
例えばほら、そこの林檎を掴んで欲しい時はこうやって…」
 騎上で前屈みになると、ローバーの首の後ろから何か囁く。レバーは軽く握るのみだ。
声に応じたにわかな相棒は黙々と手を伸ばした。コンビの前方には女教師。林檎を頭上に
乗せ、両腕は後ろ組み。その上に被さるにわか相棒の長い指は布を被せるように柔らかい。
 林檎はにわか相棒の長い指に吸い付くかのように摘まれた。女教師は微動だにしない。
無理な力が掛からなかったから、彼女の身体が揺れる余地など全くなかったのだ。余りに
も繊細な技を目の当たりにし、子供達も彼らの教師達も皆一様に溜め息を漏らす。少年は
そんな彼らをぐるり、見渡すと適当に指差し。
「…君、やってみる?」
 段々、少年の教え方もさまになってきた。女教師は表情こそ崩さないものの、内心御機
嫌だ。愛弟子はもともと長男坊。その上あのわがままな深紅の竜を手なずけたのだ。面倒
を見る素質はあったと看做すべきかも知れない。
 そんな少年の隠された一面が見え始めた時、事件は起きた。
 轟音は校舎の裏側から。師弟は咄嗟に気付いた。ゾイドが滅茶苦茶に体当たりでもしな
い限りあんな音は響かないと。しかし彼らが轟音の方角を向いた時には、既に発信源は怒
濤の勢いで向かってきたところだ。
「『避けて!』」
 叫ぶ師弟。左右に散ると麦穂を分けるように子供達の前に両腕広げ、自ら柵となる。そ
の中央を突っ切っていく暴れ馬ならぬ暴れローバー。災厄は弾丸のように一方通行ではな
い。砂塵巻き上げ急旋回すると再び子供達目掛け向かってきた。
 両腕広げたままくるり、振り向いたギルガメス。怒濤の勢いで突っ込んでくる暴れロー
バーを前にして、意を決した。
「何を考えてるんだよ!」
 自ら前に走り出す。向こう見ずな行動に上がる悲鳴。冷静に状況を観察できたのは女教
師だけだ。

112 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:19:53 ID:???
 少年、身軽な跳躍。両腕で首に掴まると間を置かず、右足を塀に引っ掛けるようにロー
バーの背中に伸ばす。いともあっさり背中に乗った少年。あとはレバーを握り、宥めつつ
操縦するだけ…その筈だった。女教師でさえそこまでは確信していたのだ。
 少年は首元に頬を寄せる。さっき皆の前で見せたように話し掛けたところ。
「押さえて、押さえて…う、うわぁっ!?」
 不意に、高らかに背を伸ばしたローバー。バネのように上半身を振り上げると辺り一帯
を飛び跳ね始めた。まるでボールを地面に叩き付けたようだ。
「ギル、村の外に誘導しなさい!」
「は、はいっ!」
 子供達の前に出て両腕広げる女教師。彼女の目の前を、暴れローバーは飛び跳ねながら
迂回していく。校門の方へと抜けていくのを確認すると息つく間もなく皆の前に振り返り。
「すぐに戻ります。皆さんはしばらく待っていて下さい」

 すっかりしょげて丸くなっていた深紅の竜は、不意の事態に首をもたげた。少年の声が
聞こえる。それだけではない、異様な雰囲気のローバーまでもが一緒だ。
 竜が首をもたげた時、既に真正面を突っ切っていたローバー。その異様にポカンと口が
開く。この竜自身、今までに様々なゾイドを見てきたつもりだ。ではあの体格であそこま
で早く走れたゾイドは果たしていただろうか。…だがそんな些末なことで驚くわけにはい
かない。もっと大事なことがある。
 ローバーの後を猛然たる勢いで追い掛けてきたのは女教師だ。背も高ければ手足も長い
彼女がしなやかに躍動するから遠目にも目立つ。彼女が竜に指示を出すのとビークルに飛
び乗るのはほぼ同時。
「ブレイカー、追うわよ!」

 防風林に囲まれた山道を、波でも描くように駆け降りていくローバー。尋常ならざる勢
いに騎上の少年もしがみつくのがやっと。だが頂上の村を出たことで作戦の幅が広がった。
(エステル先生が来てくれれば、刻印が使える…!)
 ふもとに着いたところで、頭上を影が覆ったことに気付いた。こんなに大きな影に心当
たりは一つしかない。

113 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/01(火) 23:20:44 ID:???
「ブレイカー!?」
 両の翼広げた深紅の竜。魚のように空を泳ぐ。両腕にはビークルを大事そうに抱えてい
た。と、同時に少年の右腕に嵌めた腕時計型の端末が警告音を発する。名刺並みに小さな
画面に映し出された女教師の冷静な眼差し。
「ギル、ギル、聞こえて? 刻印を発動させるわ。
 ローバーにシンクロ(同調)して、暴れる原因を突き止めなさい! 例え、その行く先
が…」
 詠唱を終えた時こそ、刻印の光芒が二人の額より放たれる時。
 ギルガメスが刻印の力によって深紅の竜ブレイカーとシンクロを計るのは熱心な読者の
皆さんなら御存知であろう。この愛らしい相棒が鬼神のごとき活躍を果たすには、己が痛
みを我がことのように受け止め感じてくれる者が必要なのだ。
 この暴れローバーをコントロールする試みも原理は同じだ。シンクロして、このゾイド
が暴れる原因を突き止めれば良い。
 少年は頬をローバーの首元にすり寄せる。頭上で深紅の竜が嫉妬の鳴き声を上げるがそ
れどころではない。
「ブレイカー、うるさい! 頼むから静かにして!
 …ねえ、君はどうしてそんなにムキになって暴れるの? 辛いことや、悲しいことがあ
ったの?」
 頭上では女教師が額に指を当てていた。刻印の明滅が激しさを増している。シンクロを
試みる少年の意識を彼女も探る狙いだ。
 暴れローバーの意識を探る少年。明滅していた額の輝きは急激に弾け、恒星のように輝
きをほとばしらせた。それは女教師の額も同じことだ。
《刻印反応アリ。拒絶セヨ、拒絶セヨ…》
 二人の意識に鳴り響く機械的な音声。
「刻印の、介入拒否!?」
「エステル先生、これは…一体どういうことなんですか!?」
 頂上では師弟を案じて子供達や教師達が砂塵を目で追うが、彼らの受けた衝撃まではわ
からない。
                                (第二章ここまで)

114 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:46:10 ID:???
【第三章】

 さてその頃、あらゆる陣営を振り回す問題人物一行は何処にあるのか。
 そこも地平線の見えない風景だった。天を幾重にも貫く山の連なり。穂先には鮮血の代
わりに万年雪が彩りを添えている。だから空は傷付くことなく雲一つなき真っ青な姿を保
っていられた。
 しかしふもとに住む者達にとって、この山脈は余りにも苛酷な障壁となって立ち塞がっ
ていた。それはかのヘリック共和国・正規軍に対しても同じこと。
 辺りは固い岩肌で覆われ、所々隆起している。頂上付近の美しさに比べるならば差し詰
め地獄の入り口と言ったところか。その上、辺りには白色又は青色の金属がそこかしこに
転がっている。…いや、これは金属生命体ゾイドの死骸。艶やかな金属の光沢の下からど
す黒い油が流れている。燃料が燻り煙を発しているものもある。どうやらさっきまで、こ
こでは血なまぐさい戦闘が繰り広げられたようだ。
「ドクター・ビヨー、これ以上無茶なことは言わないで欲しい。
『勇者の山脈』がレアヘルツで覆われていることは偉大な科学者である貴方なら御存知の
筈だ。
 レアヘルツの完全遮断がアカデミーでも共和国軍でも依然として実現していない以上、
この山脈の中心部へ侵入することなど夢の又夢というもの」
 その場には軍人と思しき人物が数名、立っている。中央に立つ者が指揮官且つ最年長な
のだろう。ヘリック共和国謹製の白い軍服・軍帽を折り目正しく着こなしている上に、眉
間の皺も胸に付けた勲章も相当な数だ。彼の左右は白いヘルメットに白いチョッキを着た
一団に囲まれている。いずれも小銃を肩に下げ、指揮官の一歩後ろで微動だにしない。
 この見るからに有能そうな軍人達を前にして、全く怯む様子を見せない白衣の科学者が
独り。左の頬に火傷の傷が広がるこの科学者は、牛乳瓶の底のように分厚い眼鏡を軽く持
ち上げて言い放つ。
「勿論です。その、従来戦力では不可能ということを実証するために皆さんの御協力をお
願いしたまで」
 指揮官らの肩ごしに遠方を見つめる白衣の科学者。先程までの戦場に対してでさえ、実
験動物でも見るような好奇の視線を投げかける。

115 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:47:21 ID:???
「…いくら無人ブロックスゾイドとは言え、ですよ。
 最新の対ジャミング処置を施した百匹がこの『勇者の山脈』ではあっけなく暴走し、同
士討ちを始めるという報告も無いようではキャムフォード宮殿(※ヘリック共和国大統領
官邸のこと)の理解は得られませんからね」
 指揮官も兵士達も声にこそ出さないものの、一斉に不快そうな表情を浮かべた。所謂レ
アヘルツが発生する地域への侵攻は長年に渡って禁忌とされてきた。ゾイドが暴走し、全
く制御できなくなるからだ。…だがそれは、Zi人にとって「当たり前」のことでもあっ
た。当たり前だから隣国に行く時は発生地域を迂回した。各国軍も天険の防壁と看做した
ため発生地域での戦闘は自ずと避けられてきたのである。かの「蒼き瞳の魔女」エステル
が千年の深き眠りにつくことができたのも彼女が隠遁したレヴニア山脈がレアヘルツ発生
地域だったからだ(第一話参照)。
 兵士達にしてみれば、この白衣の科学者ドクター・ビヨーの要請は馬鹿げていた。キャ
ムフォード宮殿からの勅命さえ無ければ断固拒否していたところだ。
「ドクター・ビヨー、ブロックスも立派な国の礎(いしずえ)であることに変わりない。
百体も無惨に命を散らすに至った理由をお聞かせ願いたい」
 指揮官が語気を努めて押さえながら言い放った時、白衣の科学者の背より聞こえた大あ
くび。数歩後ろでは、大人数人分はあろうかという銀色の獅子が行儀良く巨体を伏せてい
る。勿論この凛々しい獅子が不謹慎な真似をする筈もない。
 獅子の背の上には肌白き美少女が口を押さえていた。肌が白ければ纏うワンピースも雪
のように白い。金色の長髪を左右の耳上辺りで束ね、それが柔らかな太陽光を浴びて乱反
射する艶やかさ。なれど、眠たげに開けた黒め勝ちの大きな瞳は刃のような銀色。眼光は
薔薇の刺よりも鋭利に違いあるまい。
「ドクター・ビヨー、茶番は飽きたぞ。さっさと私に相応しい『覇のゾイド』を掘り出せ」
 美少女は眠たげに言って捨てた。

116 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:48:06 ID:???
 彼女こそ兵士達を一層苛立たせる原因でもあった。凡そ最前線には相応しくない人形染
みた美少女。それがあくまで人形然としているならまだしも、大人達を顎でこき使うよう
な傲慢な態度で振る舞うのだ。それを大人しく聞く白衣の科学者も不快だ。変態科学者め
と罵倒してやりたいのが共通の感想である。
「『B』よ、世の中には段取りと言うものがございます。それも全て整いました。ほら…」
 顎でしゃくるように、背後を見る科学者。向こうでは土煙が立ち篭めている。指揮官も
兵士達もしばらく土煙の発生源を見極めんと睨んでいたが、その内に一人、又一人、息を
詰まらせるような声を漏らした。…漏らさざるを得なかったのだ。彼らが見たものはZi
人も我々地球人も変わらずグロテスクなものと看做すに違いない。
 巨大な台車の上に、竜が腹這いになっている。…いや、これは最早「竜」と言えるのか。
竜らしい部分は短かめの首とT字バランスの姿勢ならスマートに見えるだろう胴体、そし
て台車からはみ出た長い尻尾のみだ。それだけならばかの深紅の竜に似通っていたし、サ
イズもそう大差なかった。が、この竜には手足がない。無惨にも切り落とされ、付け根の
辺りを拘束具で固定されている。それだけではない、両目はくり抜かれ、巨大な顎でさえ
も拘束具で固定された状態だ。
「ドクター・ビヨー、一つ言っても良いか?」
「何なりと」
 指揮官の震える声に対し、事も無げに返事する科学者。
「これは…人道に反するのではないか」
「軍人である貴方の口から出る言葉とは思えませんが…」
「そうかもしれない。だができる限り守らねばならない筈だ!」
「人道は科学の敵」
 冷笑する科学者。彼の口元だけ弛んだ表情に指揮官も兵士達も背筋が凍り付く。
「…まあ御安心下さい。あれは既にゾイドではありません。所謂『ガイロス産ティラノサ
ウルス型野生体』の消化器官を兵器に転用しただけの代物。ティラノサウルス砲とでも申
しましょうか。
 この大砲で勇者の山脈を貫通させ、内部に隠されたレアヘルツの発生源を破壊します。
その上で皆さんに突撃して頂きます。レアヘルツから身を守るには、要はゾイドを使わな
ければ良いのです」

117 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:48:50 ID:???
 ところで白衣の科学者以外に、かの禍々しいティラノサウルス砲を至極冷静な眼差しで
見つめる者がいた。他ならぬ、肌白き美少女だ。忠実なる銀色の獅子の鬣を撫でながら、
その背の上で不敵な笑みを投げかける。
(つまらぬ世界だと思っていたが、少しは面白くなってきたではないか。
 ドクター・ビヨー、貴様の思い描く『新秩序』を形にしたいのなら、一刻も早く私に相
応しい『覇のゾイド』をよこすのだ。それがあの売女を葬る一番の近道でもある…)
 台車の左右より、杭が落ちる。百足が地を這うようだ。想像を絶する反動が掛かると予
測される以上、台車の固定は不可欠である。
 さて読者の皆さん、「魔装竜外伝」本編において深紅の竜ブレイカーが荷電粒子砲なる
光の息吹を放ったのはわずかに二度。その内一度はやけくその一発であったにも拘らずレ
ヴニア山脈の稜線を変形させた(第一話参照)。ならば全く同型のゾイド(正確には「ゾ
イドであったもの」)が純粋に破壊のみを追求して発射したらどんな結果が得られるのか。
 その答えは間もなく得られようとしている。胴体各所より集まる光の粒。それと共に口
腔にほとばしる輝き。砲台の遥か後方で科学者が、美少女が、そして指揮官らが見守って
いる。

 物語を本編に戻そう。
 蒼く透き通った体皮の二足竜・バトルローバーは依然、荒野を疾走中だ。背中には少年
を乗せながら。頭上より追い掛けるは深紅の竜。掌中に収まるビークルの座席では、女教
師がコントロールパネルを睨んでいる。
 暴れローバーの背にしがみつく少年の耳元には無機質な声が響き渡っている。
《刻印反応アリ。拒絶セヨ、拒絶セヨ…》
 一方、額に指を当てる女教師。刻印の明滅、加速。数メートル下方で奮闘する少年の意
識をこの超能力で感じ取り、解析する狙いはひとしきりの無言の後、やがて確かな確信と
なった。
「…これは、封印プログラムよ!」

118 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:50:10 ID:???
 腕時計型端末と脳裏の両方より聞こえてきた音声に顔をしかめる少年。だが女教師の下
した結論には耳を疑った。…人に使役するゾイドは法を守るために全てこの「封印プログ
ラム」をインストールされている。地球における犬や猫などとは違い、無闇に民家に侵入
でもされては大変なことになるからだ。そこで封印プログラムをインストールし、その中
に記述された法律は遵守させるのである(深紅の竜はインストールされた振りをしている。
破ろうと思えばいつでも破れるのを我慢しているのに過ぎないのは第十二話参照のこと)。
 だからこそ、少年は首を捻った。法律を遵守させるのが封印プログラムなのに、何故に
刻印反応の拒絶という法律とは何ら関係ない行動を遵守させられているのか。
「ギル、ギル、聞こえて? そちらに飛び移るわ」
 唐突な女教師の声。腕時計型の端末には喋りながらサングラスを外し、胸のポケットに
しまう彼女の姿が映し出される。
 思わず見上げる少年。だがそのタイミングは良くなかった。頭上に本来飛んでいる筈の
深紅の竜を遮るように、大の字に手足を広げた女教師の姿が飛び込んできた。
 不意に背中を押され、息が詰まる。少年の小さな身体をクッション代わりにして女教師、
着地成功。体格で劣る少年の身体に背後よりしがみつき、すっぽり覆い包む形。少年は息
苦しさ以上に、背中に触れた柔らかな存在に全身強張らせて狼狽えるが。
「ごめんね。我慢してて」
 言いながら女教師は首を少年の右肩から伸ばしに掛かった。頬に触れる黒の短髪。石鹸
の甘い香りに一層顔しかめる。ちらり、横目で表情を探るが彼女は一向に意に介さない。
それ以上に晒された裸眼の何と厳しいことか。
 照れを恥じ、視線を戻した少年。恐る恐る。
「…どう、しますか?」
「封印プログラムを消すわ。私の、刻印の力でね。ギルはこの子の操縦、お願い」
 更に首を伸ばす彼女。少年の頭上にまで柔らかなものが触れているが、そんなことを気
にする暇はない。僕がへまをしたらこの暴れローバーに振り落とされるかも知れないんだ。
 暴れローバーの首に女教師の額が触れる。刻印の眩い輝きが、透き通った体皮青いを鮮
やかに彩る。


119 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:50:57 ID:???
 子供達はずっと、丘の上から事態を見守っていた。時折巻き上がる砂塵に一々悲鳴を上
げる。だが肝心な部分はその上に覆い被さる深紅の竜が隠してしまうので、状況は掴み切
れていない。
 腹の出た教師は意を決した。
「自警団を呼んできて下さい。駄目なら守備隊。私は追います」
 そう言って練習用に引っ張り出していたローバーを屈ませる。背中に乗って追い掛ける
つもりだったが、しかしその主旨はローバーが立ち上がるまでに少々変わった。
「…ジェノブレイカー、こっちに戻ってくるよ!」
「ローバーも見える。あれっ? …普通に走ってらぁ」
 その場に居合わせた皆はひとしきり砂塵の方を凝視し、やがて安堵の溜め息をついた。
 深紅の竜に手を差し伸べられ、飛び移った女教師。その掌伝いにビークルに案内される。
 少年は彼女の無事を横目で見届けると暴れローバーだったこの二足竜のレバーをぐいと
握り締めた。すっかり大人しくなり、落ち着いて走り出したかに見える。

 師弟と一匹がリガスに戻ると圧倒的な拍手が待ち構えていた。如何なる方法を使ったの
かは不明だが、ともかく常人では手がつけられないゾイドを容易く手懐けたのだから無理
からぬこと。少年は驚き、照れる表情を隠さない。既にゾイドウォリアーとなって一年を
経過するが、こうした歓待には依然、慣れぬままだ。
 この後、何事もなかったかのように授業が再開された(嫉妬に燃える深紅の竜が少年に
熱烈なキスの雨を注いだこと、及びそんな光景に女教師の雷が落ちたことは今更書くまで
もあるまい)。少年はゾイドを操縦するコツを丁寧に説き、何度も実演してみせた。彼の
熱心な姿勢を一歩離れた位置で見守る女教師。意外にあっさり取り戻した冷静さには彼女
も内心驚き、又嬉しかったものだ。
 只、そんな彼の円らな瞳の中に陰りを感じてしまったのは果たして気のせいだろうか。
 結局、授業が終了したのは陽が大分傾いてからであった。生徒も教師も非常に熱心だっ
た証だ。ずらり、整列した教え子達。
「『ありがとうございました!』」
 一斉の礼に、少年は狼狽えっ放し。只々頭を掻くに留まる。
 腹の出た教師が一歩前に出る。見た限り親子程も年が離れている両者だが、彼は丁重に
頭を下げた。

120 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:51:43 ID:???
「本日はわざわざお越し下さいまして、ありがとうございました」
「い、いえ、こちらこそ…」
 少年も深々と頭を下げた。それにしても、何故この教師はここまで礼を尽くせるのか不
思議ではある。
 彼の疑問に答えるように、教師は言葉を続けた。
「…これからあの子達はふるいに掛けられます。最終的にジュニアトライアウトに受験で
きるのは十数名程になるでしょう。その内二、三人程度が合格できれば奇跡かも知れませ
ん。殆どの子供達は夢を一度は諦めなければいけなくなります。
 しかしそれでも、今日の出来事は得難い経験になったことでしょう。たとえ挫折を味わ
っても、良い思い出さえあればきっと次の夢を見つけ出せる筈です」
 少年はようやく教師の考えを理解できた気がした。プロフェッショナルの技を見せてや
りたいという気持ちは勿論あっただろう。だがそれ以上に、青春の記憶が苦虫を噛み潰し
たようなものばかりになることを嫌ったのだ。…それは少年自身がよく承知していること
だ。わざわざ家出までしてゾイドウォリアーの道を志した自分の思い出を、美化しようと
したところでたかが知れていたではないか。

 滑走する深紅の竜。その掌の上にビークルが宝物のごとく抱えられるのは往きの光景と
同じだ。機上の女教師は荒野を薄闇が覆い始めていることに気付いた。そこらの小石も伸
ばす影が鋭利になっている。夕暮れは近い。
 ひとしきり、腕を組んでいた女教師。やがてついた溜め息は重さを極力押さえ込んだか
に聞こえる。意を決してコントロールパネルを弄ると、据え付けのモニターには
「SOUND ONLY」の文字が。
「…仮定の話しに過ぎないのだから、余り深く考え込まないようにね」
 映像が映らないよう設定したというのに、作り笑いを浮かべることに迷わなかった。
 一方少年は、黙々とコクピット内でブレザーを脱いでいた。手早く且つ丁寧に畳むと座
席下部のポケットにしまい込む(汗を掻いてもすぐ着替えられるよう、ここには着替えを
複数突っ込んであるのは今までにも何度か書いた)。純白長袖のTシャツにトランクス一
丁となれば後は膝下までの半ズボンを履くだけ。革靴からスニーカーへの履き替えは最後
で良い。

121 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:53:14 ID:???
 着席、拘束具が肩に降りる。少年も又、作り笑いを浮かべていた。しかしどうしても陰
りが出る。そんな自分の情けなさ故に折り混ざる自嘲の色。
「はい、そのつもりです。…本当のことだとしても、今更どうにもなりませんから」
 愛弟子の言葉を耳済ませた女教師は流石に嘆息した。気に病むなという方が無理かと思
い、腕組みしつつ言葉を探す。
「刻印の持ち主を排除しようと企む者が、ヘリック共和国の上層部にいるのでしょう。そ
う考えれば説明できることも多いわ。
 例えばギル、貴方は一年以上前に似たような仕掛けの施されたゾイドに出会ってる筈よ。
…ジュニアトライアウトでゾイドバトル連盟が貸し出したゾイドには、恐らく『刻印排除
の封印プログラム』が仕掛けられていた。たとえ貴方が持ち前の実力でこのゾイドをコン
トロールし切っても、あちらは試験が済んだらゾイドからログを拾ってしまえばいい。
 一方、通常のトライアウトでは受験者に高額の受験料とゾイド持参を義務付けた。今ま
ではこのやり方で刻印の持ち主をゾイドから遠ざけることができたのでしょうね。ジュニ
アトライアウトに落ちた子供が大金を手にしてゾイドを買うなんて不可能だもの。
 だけど…貴方が現れて、状況が変わったわ。排除された筈の貴方が包囲網をくぐり抜け
て、ウォリアーになったのよ。困ったこの何者かは『ゾイド輸入ノルマ』を取り決めて、
『刻印排除の封印プログラム』の施されたゾイドをばらまいた。…第二第三のギルガメス
を世に送り出さないようにするためにね。
 水の軍団も恐らくは、この何者かが操る軍隊なのよ。彼らがあんなにしつこく貴方の抹
殺を目論むのもそう考えれば納得できるわ」
 淡々と語る内に、コクピット内の息遣いさえ拾うマイクから音が聞こえてこないことに
気付いた。女教師は恐る恐るコントロールパネルを弄る。モニターに表示された
「SOUND ONLY」の文字が消える。
 映し出されたコクピット内で、項垂れる少年。
「ギル…?」
「先生、その何者かが刻印の持ち主をそこまで嫌う理由って、何なんですか。
 刻印のお陰で僕はブレイカーとシンクロできる。…だけど、それだけなんです。人より
はちょっとゾイドが扱い易くなったというだけで、ここまで虐げられる理由が僕には全く
わからない」

122 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:54:10 ID:???
 円らな瞳はきっと虚ろに彷徨っているに違いない。女教師はしばし顎に手を当て、考え
ていたがやがてぽつりと、呟いた。
「刻印が、重荷なの?」
 囁きに、少年はハッと首をもたげた。ウインドウの向こうから覗き込む女教師。鋭い眼
差しが瞳の潤いで乱反射しているようにも見える。陰りを添える夕焼け。
「そ、そうじゃあないんです…!
 確かに刻印のせいでひどい目にも遭いました。けれどブレイカーにも、先生にも出会え
た…だからこそ、僕は真実が知りたい。はね除けなければいけないものがなんなのか、知
りたいんです」

 荒野を進む深紅の竜達を、遥か彼方の岩山より見守る者がいた。功夫服の男が立つのは
何処の山か。独り忽然と立ち、両手でも余る双眼鏡で獲物を、そして撒き餌ともなる一行
を睨む。すぐ後ろでは、腹這いとなって控える白色の二足竜。昨晩ひと一人、ゾイド一匹
屠ったとは思えぬ大人しさ。
「そろそろ息苦しさに我慢できなる頃とは踏んでいたが…さて、どう出るか」
 飄々たる男は双眼鏡を覗きつつ思案を巡らす。彼の見立てではギルガメスは齢こそ若け
れど経験は十分だ。不利に置かれた熟練の戦士は、動こうとする。最悪でも打開策のヒン
トを探す。
 双眼鏡での観察は余念が無い。深紅の竜をひとしきり睨むと今度はその行く先に視点を
移動。その先へその先へと視点を移す内に、止まった男の手。ひとまず双眼鏡を降ろした
時、男の表情に余裕が消えていた。双眼鏡の脇に並んだボタンを弄ると再度双眼鏡を覗く。
 双眼鏡から覗き込んでさえ、素人には土煙がうごめいているようにしか見えぬだろう。
しかしこれを見つめる男は水の軍団が送り込んだ刺客なのだ。改めて双眼鏡を降ろすと男
は只ならぬ表情を浮かべて踵を返し、背後の相棒に手振りした。白色の二足竜は求めに応
じて曇りがかった頭部キャノピーを開ける。

 ところで深紅の竜は、黙々と道なき道を進んでいた。流石に胸元で繰り広げられる師弟
のやり取りには動揺を隠せず、ちらりちらりと何度も下方に首を傾ける。
 左方から正面にかけて、錆びたナイフで切ったような絶壁が広がりつつある。ここを右
伝いに進めばキャンプへ戻る近道が切り開かれているのだ。竜の軌道が絶壁に沿って緩い
弧を描こうとしたその時。

123 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:55:14 ID:???
 金属生命体が殺気を感じ取ることができるか? 議論の余地がある命題だが少なくとも
今、深紅の竜は殺気を歴戦の嗅覚で嗅ぎ分けていた。土柱が上がるのと、ビークルを抱え
た両腕を胸部ハッチの真下にまで引き寄せるのはほぼ同時。重力の反撃に遭い落下する土
の雨をかいくぐって横っ跳び。
 その間に、ビークルのモニターにも少年を囲う全方位スクリーンにもレーダーの割り込
み。危険な存在を示す光点が、レーダーの外側からこの絶壁付近まで押し寄せるさまはさ
ながら彗星のごとく。見せつけられた師弟は悟った。悩む一時を今は諦めなければならぬ。
 横っ跳びを着地した時、流し目で睨んだ竜は見た。…先程まで滑走していた辺りに突き
刺さった真っ白な矛。土煙が立ち篭める中、距離を取りながらもこの殺気の持ち主の正体
を探る。
 幸い、殺気は熱の塊でもあった。照射された赤外線がシルエットをウインドウに浮かび
上がらせる。…四本足で立つ獣だ。手足長く、奇妙に細身。なれど全身には隙間だらけの
鎧を纏っている様子。骨の鎧とでも言ったところ。
 少年が記憶の奥底を掘り下げるよりも先に、女教師が唸るように呟く。
「BF-01!? 何で、こんなゾイドが…」
 少年はほんの僅かな時間だが呆気に取られた。というのも、彼はこのゾイドを実物こそ
見てはいないものの、テレビの子供向け番組で散々目にしている。ライガーゼロ。暴君竜
ゴジュラスと並びヘリック共和国軍の象徴とも言えるゾイドではないか。だからこそ、全
く別の名前を口にした女教師の反応には驚いた。
「ら、ライガーゼロ、ですよね、先生…」
 指摘されて女教師は照れくさそうに咳払い。
「ヘリック共和国は余所の国からゾイドを散々略奪して自国の戦力に加えていったわ。あ
れもその一種よ。旧ガイロス帝国で『バーサークフューラー01』と呼ばれたゾイドを奪
い取って…」
 言い切らぬ内に、骨鎧の獅子は奇妙な動作に打って出た。右の前足で数度、地面を叩く
わざとらしさ。それが跳躍のタイミングを計っていることは師弟も竜もすぐに気付いた。

124 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:56:48 ID:???
 放たれた白き矛。跳躍は竜の頭上を、夕焼けさえも遮るように。竜の手からビークルが
離れたのが暗黙の合図。少年は両腕を振り絞った。着地点たる後方へ向けての方向転換で
さえ、今の彼の状態では凄まじい重力を与える。小さな身体を震わせつつ振り絞ったレバ
ーを手綱のように押し込めば、竜は地面を高々と鳴らして踏み込み。
 獅子の着地点に重なるように、滑り込んでいく深紅の竜。翼を構える余裕もないが、渾
身の体当たりは見事獅子を跳ね飛ばした。バネのように吹っ飛んだ獅子は惑うことなく空
中で一回転。何事もなかったかのように着地してみせる。
 一方、深紅の竜はようやく翼を水平に広げた。当然だ、胸元に控える若き主人が全力を
発揮する体勢にない以上、自重せざるを得ない。只…竜はまるで込み上げてくるものでも
あったのか、弦をかき乱すような呻き声を上げた。
 浮遊するビークルの機上で、もしやと気付いた女教師。
「ギル、ギル、聞こえて?」
 モニターに向けて問い掛けながらも骨鎧の獅子に注意を怠らない。だがあちらはあちら
で上半身を揺さぶる奇妙な動作。まるで、相手を嘲笑うかのような…。なんてふざけたゾ
イドなのか。女教師でさえ苛立ちを感じたその時、モニターの向こうから怒鳴り声。
「先生! エステル先生!」
 女教師は目を見張った。映し出された愛弟子は寧ろ落ち着きさえ感じさせる。だが円ら
な瞳の奥底は深い怒りでぎらついている。
「…そのゾイド、リガスの村を人質にでも取ったつもりです」
 まあそうだろうなと女教師も同意した。だがそれなら、先程の如何にも狙って下さいと
でも言いたげな跳躍は一体何だったのか。
「そのくせ行くぞ行くぞと見せ掛けて、反応した僕達を笑うなんて…。
 人の運命までも弄ぶやり方は許せない!」
 少年が相手を断罪するような台詞を口にしたのを初めて聞いた気がする。卑劣極まりな
い相手に対して素直に怒れる者がそこにいた。

125 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/02(水) 23:57:32 ID:???
「ギル、そのBF-01はきっと刻印の謎を解く鍵を握っているわ。握っているからこそ、
こちらを挑発してる…例え、その行く先が!」
 詠唱の開始は愛弟子に戦いを促す合図。運命を、はね除ける戦いの。
「‥いばらの道であっても、私は、戦う!」
 女教師に最初の一言を告げられれば少年は二句目を返すのみ。二人にしかわからないや
り取りこそ決意の共有。と同時に少年の額が眩く狭いコクピット内を青白く照らす。
 不完全な「刻印」を宿したZi人の少年・ギルガメスは、古代ゾイド人・エステルの
「詠唱」によって力を解放される。「刻印の力」を備えたギルは、魔装竜ブレイカーと限
り無く同調できるようになるのだ!
 輝きに照らされる額の汗を手の甲で拭うや否や。
「ブレイカー、行くよ! エステル先生、援護を…」
「任せて!」
 ビークルは骨鎧の獅子の後ろへの回り込みを目指す。深紅の竜は声高らかに吠え立てる
とたちまち逆立った背の鶏冠。先端から青白き炎を吐き出すや否や、轟音立てて地面を蹴
り込み。全身に埋め込まれたリミッターまでもが雄叫びを上げる。
 骨鎧の獅子は待ちくたびれたかのように地を蹴り込む。矛先は本来狙うべき相手に向け
てだ。果たして少年はこの奇妙な獅子との攻防に何を見出すのか。
                                (第三章ここまで)

126 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:07:29 ID:???
【第四章】

 白色の二足竜が足音も立てず、丘から丘へと伝っていく。直立の二足竜が惑星Ziの生
物体系の中で生き残ってこれたのは緻密な動作が可能なことにある。実際、この二足竜は
音も立てずに決戦の場に近付いてみせた。とある丘からキャノピー半分程を突き出し、激
戦の模様を探る。
 功夫服の男はその内部で首を捻ることしきり。目前で繰り広げられる攻防は彼の予想と
は大分違うからだ。
(おかしい。これがBF−01本来の動きとは思えないのだが…)

 事実、深紅の竜は冷静に、だが着々と主導権を握っていった。
 骨鎧の獅子の動きは思いのほか、単調だ。左右に跳ね飛び撹乱するのはともかく、攻撃
の一手が跳躍からの爪の一撃一点張りでは今の深紅の竜とその主人には通用しない。高く
跳躍すれば竜も翼を掲げて体当たりのお返し。低く跳躍すればしなやかな足での蹴り上げ、
回し蹴り。どうにか着地して腹部に備え付けられた銃器を発射しようとも、その頃までに
竜は左右に回り込み。炸裂する翼の刃は重い。一撃、又一撃と獅子の肩を、腹を痛めつけ
る。だからこそ、師弟も竜も、そろそろ首を傾げていた。
(淡白過ぎるわね)
(水の軍団の刺客ならもっと陰湿な攻撃をする筈…何だろう、この手応えの無さは)
 それでもこの骨鎧の獅子はせせら笑う。数歩程も離れていない間合いでこの仕種をして
くるのだから腹立たしい。少年は熱くなるのを堪えるので必死だ。
 女教師はふと思い立った。額に指当てるや刻印が一層眩く輝く。
「ギル、ギル、聞こえて?
 魔装剣は使わないで。打撃だけで倒しなさい」
 耳を疑ったのは少年主従。全方位スクリーンの映像が左右に揺れる。真意を正すべく深
紅の竜が振り向いたからだ。少年も真意が理解できない。
「エステル先生、無茶を言わないで下さい。あいつは見た目以上にタフです。
 さっさと魔装剣で眠らせないことには…」
「それが、誘いの隙かも知れないのよ」
 女教師の言葉に、少年は目を見張った。竜の額の鶏冠に眠る魔装剣。確かに命中さえす
れば五秒で敵を完全に失神させる。しかし五秒の間、深紅の竜は完全に身動きが取れなく
なるのは事実だ。

127 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:08:16 ID:???
「でも誘いの隙だと言うなら、どうやって…」
 言いかけたところで、骨鎧の獅子はこちらの様子を伺いながらも後退り。又しても、リ
ガスの村を狙うつもりか。ギルガメスが吠える。
「調子に乗るな!」
 相手の跳躍にぴったり噛み合ったレバー捌き。深紅の竜が地を蹴るや、瞬く間に骨鎧の
獅子は墜落した。
 真横に倒れ、滑る骨鎧の獅子。砂塵舞う中、立ち上がろうと懸命にもがく。
 これ以上はない絶好の機会だ、覆い被さらぬ深紅の竜ではない。馬乗りの体勢で跨がる。
だが流石に女教師の言葉が引っ掛かった。馬乗りのまま一秒、二秒…。
 少年の戦慄。女教師も息を呑んだ。骨鎧の獅子は意外にも無抵抗。なれどその橙色の眼
差しは不敵にも竜の赤い瞳に向けられている。無抵抗を装った不敵な態度、もしや誘いの
隙に、乗せられた…!
(もしこの体勢で刺客が僕らを倒すとしたら…)
 円らな瞳が動く。蒼き瞳が睨む。右、左、そして…。
「上か!」
 朱色に焼ける雲の波間に、そいつはいた。夕陽に照らされキラリ輝くと一転、爆発する
恒星のように弾け放った流星雨。
 竜の背に襲い掛かる流星雨はまさしく光の針。立ち上がり、その場を離れる余裕はない。
見上げるや否や両の翼を掲げた竜。桜花の盾二枚の表面に咲き乱れたそれは熱弾炸裂の華。
 それは骨鎧の獅子にとっても挽回の好機だった。頭上に注意が向いた竜の腹を、前足で
横殴りするなど造作もない。深紅の竜、横転。それを尻目に立ち上がり、間合い放す骨鎧
の獅子。またも上半身を揺さぶるあの仕種。
 腹這いの姿勢に戻した深紅の竜は両手をついたまま。向こうで嘲笑う獅子を、そして頭
上からの刺客をちらりちらりと睨みながら体勢の立て直し。
 一方、雲の波間より輝いたそれは竜達の頭上を旋回しつつ舞い降りてきた。徐々に形の
判明したそれに師弟と竜は息を呑んだ。

128 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:09:44 ID:???
 灰色の、猛禽。広げた翼は深紅の竜と同等の大きさを誇る。師弟と竜はそいつをよく覚
えている。シュバルツセイバーに拉致されかかった彼らに割って入った上に、狼機小隊や
銃神ブロンコといった恐るべき…しかし気高い強敵を不意打ちで葬り去ったあの猛禽だ
(第十・十一話参照)。
「久シ振リダナ、ちーむ・ぎるがめすノ諸君!」
 猛禽から発せられたヘリウムでも吸ったかのような異様に甲高い声も、あの時と同じだ。
「そう言えば、あの時言っていたわね。『B計画成就のため』とか何とか」
 女教師の黒い短髪が風になびくさまは怒髪天をつく有り様をも彷佛とさせた。翻弄され
たあの時を思い出す彼女の眼差し、まさしく魔女のごとし。ゴーグルの下からでも蒼き瞳
の眼光は鈍らない。
「ソウイウコトダ。ぎるがめすヨ、君ニハ避ケ続ケテキタ『最終てすと』ヲ受ケテモラウ」
 言うや否や、猛禽の全身より光がほとばしった。これはマグネッサーシステムが発する
光の粒だ。羽根が、首が、足や尻尾が瞬く間に分離していく。
 それを合図に、骨鎧の獅子も水滴を弾く犬猫のように全身を揺さぶった。たちまち弾け
飛ぶ白き鎧。骨鎧の獅子は黒光りする鋼鉄の獅子へと変貌。だがその姿も数秒と持たない。
 バラバラになった猛禽のパーツは光を帯びつつ鋼鉄の獅子の全身に鎧と化してへばりつ
いていく。深紅の竜は背中より生えた翼故に異形と恐れられたが、この獅子はどうか。猛
禽の羽根に当たる部位は、獅子の背中より生える翼のように変貌を遂げた。
 最後に、獅子の頭部を守るように猛禽の上顎がへばりつく。四つ目の、獅子。翼を大袈
裟に羽ばたくと勇ましく夕焼け見上げ、吠え立てる。
「人呼ンデ『らいがーぜろふぇにっくす』。どくたー・びよーノ自信作ヨ!
 ぎるがめす、我ト戦エ! 選択肢ナド認メナイ!」
 少年は円らな瞳でスクリーンの先を睨む。レバーを握り締める両腕に感じるのは震えか、
軋みか。だがこの期に及んで迷ってなどいられない。深紅の竜は決意に応え、両の翼を水
平に広げる。


129 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:10:35 ID:???
 その頃、野望のためには道を踏み外すことなど構わぬ一行はことの成り行きを興味深く
見守っていた。…指揮官の駆る青い獅子シールドライガーを含む数匹の四脚獣は、かのグ
ロテスクなティラノサウルス砲を取り囲んでいる。その中には背中にゴンドラを乗せた神
機狼コマンドウルフの姿が。問題人物一行はこの上だ。
 ティラノサウルス砲が光の槍を吐いた時、白衣の男も肌白き美少女も不敵な笑みを浮か
べた。…そんな表情が自然に出たのは彼らだけだ。
 山脈を覆う岩肌が、弾ける、溶ける。内部のどの辺までを抉ったのかは、見た目にはわ
からない。只、十秒、二十秒と待つ内に山脈の彼方から地響きが聞こえるのは確認できた。
それと共にほくそ笑む白衣の男。
 続けて角度を変更し、放たれる光の槍。何度も、何度も。
 さてゴンドラ内部はちょっとした管制塔だ。横並び二人掛けの座席前には様々な計器が
埋め込まれている。その中央に陣取るモニターの上にはは真っ赤な円が無造作に並べられ
ていた。それが至る所で風船が萎むかのように小さくなり、徐々に本来の姿を表わしてい
く。真っ赤な円の下に広がっていたのは遥か彼方で広がる「勇者の山脈」の鳥瞰図ではな
いか。
「さあ如何ですか、『B』よ。レアヘルツの低下、観測できるでしょう?」
 肌白き美少女は笑みを浮かべた。鼻で笑うようにも聞こえたのは気のせいか。
「成る程、大したものだなドクター・ビヨー」
 指揮官はことの成り行きに溜め息をついていた。あの白衣の男にこうもあっさりと禁忌
が破られる現実を、彼は恐れた。だが彼とて軍人だ。与えられた任務はあくまで淡々とこ
なすのみ。
「…作戦は予定通り決行する。私の後に続け」
 獅子が、狼が野に放たれる。ゴンドラの上でそれを見送る男と美少女。
 ふと、どこからともなくアラームが鳴り響く。男は目を見開いて足元を探った。無造作
に置かれた鞄から引きずり出した、ノート大の端末。折り畳まれたそれを45度程開くと
覗き見て、男はほくそ笑む。
 相変わらずの奇妙な笑みはさしもの美少女も気になり、横目で様子を伺った。
「このイベント以外にも面白いことがあるようだな」
 白衣の男は全く意に介さず、端末を畳む。
「林檎が赤みを帯びてきました」


130 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:11:24 ID:???
 途端に劣勢に追い込まれたギルガメス。
 四つ目の獅子は羽虫のように自在に舞う。上下に、左右に。その度、全身からこぼれる
光の粒。翼の下から双剣を展開した深紅の竜。振りかざし、追いすがるが獅子の五体には
かすりもしない。そもそも少年とて今は立派な百戦錬磨。刃の一撃は努めて大振りを避け、
確実な一撃を狙っているつもりだ。なのにそんな、渾身の一撃が尽く当たらない。
 反対に四つ目の獅子は余裕綽々、機を見て背後に、左右に回り込むや途端の爪撃。まこ
とに躱し辛く、竜はその度転がるように避けざるを得ない。
 劣勢の原因ははっきりしていた。深紅の竜は速度を高める際、しなやかな両足を踏み込
んで加速するが四つ目の獅子は今やその一手を必要としない。それもこれも、あの灰色の
猛禽が取り付いたからだ。猛禽は合体能力の余剰エネルギーを利用して、獅子に爆発的な
運動能力を与えている。
「どうしよう、どうすればいいんだ!?」
 少年は懸命にレバーを捌きながら模索の一手。とにかく相手の動きを止めなければ話し
にならないが、相手は縦横無尽に飛び回るのだ。
 それは二匹の外周を旋回するビークルの操縦者とて同じこと。竜と獅子との激闘を見つ
める切れ長の蒼き瞳。隙あらば背後より引き出した長尺の対ゾイドライフルで援護したい
ところだが、目下の強敵は動きが止まる徴候さえ見られない。ひとしきり攻防を睨んでい
たが。
(ギルは不利ながらも相手の動きについていけている。防御の一手ができないだけ…)
 一転、モニターに向けて囁く魔女。
「ギル、ギル、聞こえて? そいつは真後ろに引き付けなさい」
 耳を疑った少年。
「ま、真後ろ…ですか?」
「何も翼で薙ぎ払う必要はないわ」
 円らな瞳と切れ長の瞳が合図を交わす。
 レバーを軽く揺さぶる少年。それを合図に深紅の竜は刃を戻し、翼を折り畳んだ。今ま
での摺り足から爪先立ってステップを踏み始める。
「刃ヲ捨テ、五体ノミデ我ヲ捕ラエルカ。小賢シイ!」
 ヘリウム声が嘲笑う。四つ目の獅子は空に浮かんだまま右に、左に。釣られるように深
紅の竜も首を伸ばし、噛み付きに掛かる。

131 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:12:18 ID:???
 その様子が獅子にしてみれば滑稽に見えた。成る程、弧を描く翼の一撃よりは、標的に
向けて最短距離を行く噛み付きの方が素早いのは自明。しかし、余りに単調だ。
「ドンナニ素早カロウト、攻撃ガ予測デキレバ裏ハカケル!」
 その言葉通り、怒濤の一歩で前のめりになった竜の真後ろへと回り込む。
(ブレイカー、今だ)
「死ネェッ!」
 突撃、四つ目の獅子。竜は鶏冠を逆立て、爪先で踏ん張る。途端に、弾けた鶏冠の先端。
青白き炎の洗礼。竜が音速を発揮する際の動力源をもろに浴びては四つ目の獅子と言えど
ひとたまりもない。吹き飛ばされ、地に落ちた五体は青白き炎がまとわりついたまま。
「熱イ、熱イィィィィ!」
 その言葉に師弟はハッとなった。ゾイドが受けたダメージをそのまま全身で感じるパイ
ロット。この獅子の乗り手も刻印の持ち主なのか。
「…なんて、考えている場合じゃあないわ!」
 対ゾイドライフルを構える魔女。一発、又一発。標的は獅子の背中にびっしり並ぶ立方
体だ。元々は猛禽の胴体だったそれこそブロックスゾイドの動力源。あれが獅子に異常な
までの運動能力を与えていたに違いない。命中する度、身悶えする獅子。
 振り返った深紅の竜。主人はしばし呆然。強敵とは言え酷い光景だ。情が湧いたのを少
年は自覚する。
「エステル先生、そろそろ魔装剣で眠らせます」
 言うなり一気に間合いを詰めようとしたその時、魔女は怒鳴った。
「待ちなさい!」
 肩をすくめた少年、そして竜。ひっくり返っていた獅子はそんな僅かな好機を狙ってい
た。前足を地面に打ち付ける。途端に、背より弾けた猛禽の翼。四散すると円盤のように
回り始め、竜の上下左右から襲い掛かる。刮目する魔女。
「ギル、避けて!」
 彼女が怒鳴ったその時までには、翼の断片は竜の肩へ、腿へと突き刺さっていた。光の
粒を帯びたそれが始めた高速回転。堪え切れず竜は吠える。シンクロが少年の肩を、腿を
鮮血で染め上げる。
 そこに立ち上がった獅子の体当たり。仰向けになった竜にのしかかる獅子。呆気無い形
勢逆転だ。

132 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:13:05 ID:???
「アハハハハ! ぎるがめすヨ、君ハ甘イナ!
 ソコノ売女ニ嬲リ殺サレル我ラヲ黙ッテ見テイレバ良カッタモノヲ!」
 覆い被さり、牙を立てる。顎を首へ、或いは胸部ハッチへ。竜は両腕で顎を掴み、はね
除けんとする。だが突き刺さった翼のパーツが回転し、食い込んでしまえば入る力も入ら
ない。今や牙が五体に触れるのを堪えるのみ。
「ギル、我慢してなさい!」
 魔女のビークルがエンジンを吹かすが、それさえも獅子にしてみれば予定通り。弾け飛
んだ翼の一部が唸りを上げてビークルに襲い掛かる。ゾイドに劣る運動能力でこれを避け
るのは容易ではない。対ゾイドライフルの照準を定める余裕もなく、追撃を逃れて右往左
往するのがやっと。
 光景をちらり、横目で見て獅子は主人と共に嘲笑を始めた。
「ぎるがめすヨ、貴様ニ『B』ノ相手ハ勤マラン! 己ガ甘サ故ニ、死ネ!」

 曇りがかったキャノピー内部で、功夫服の男は唇を噛んだ。
「よもや銃神ブロンコを葬った奴が助太刀するとは…!」
 あの灰色の猛禽こそ偉大なる同志の仇なのだ。男は眉間に皺寄せ、自問自答。
(どうする、パイロン。このままいけば宿敵ギルガメスは確実に死ぬ。ひとまずB計画は
頓挫する。
 なれど、やつはブロンコの仇。それにギルガメスが死ねばこの先いつ『B』が表舞台に
現れるか…)
 意を決し、レバーを握り締めた功夫服の男。決断は早い。

 流血する肩、そして腿。だが一度とて顧みることなく、少年は歯を食いしばり、策を巡
らす。
(こうも密着されたら技が使えない。少しでも引き離さないと…)
 しかし四つ目の獅子は容赦ない。体重を掛けられるだけ掛け、その上拘束具と化した翼
の断片が竜の全身を押さえ付けるのだ。何か、隙を作りたい。だけど、どうすれば…。
「待ってなさい、私がやるわ」
 全方位スクリーンの真正面を、占拠したウインドウ。魔女は努めて涼しい顔で頷いてみ
せた。

133 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:15:17 ID:???
「せ、先生!? それは無茶です!」
「生徒の不手際は、先生である私の不手際よ」
 魔女はビークルの舵を取る。やるべきことは簡単なのだ、獅子の周囲にまとわりつけば
良い。注意を反らせば、今の愛弟子なら十分打開できる。
 しかし問題は、今や彼女の駆るビークルが猛追を受けていること。翼の断片は今もビー
クルの上を、下をくぐり抜けているところだ。
(それでも、構うものか…!)
 身を屈めた魔女。一か八か、エンジンを吹かして急接近するために。
 だがその時、身を屈めたため目前に広がるモニターが、弾き出した別の光点。熱源だ。
深紅の竜の速度を見慣れていては決して素早いとは言えないものの、それは確かに怒濤の
勢いで近付いてきた。
 少年も開かれた別のウインドウを見て熱源の接近を察知した。今度は何者かとちらり、
近付いてくる左方を睨んだ時形勢は逆転していた。
 覆い被さる獅子の腹部に、突き刺さったそれは小さな腕。白色の、二足竜の腕だ。鍵の
ように腕を構え、そのまま獅子の腹を抉る。鋼色の胴体が凹み、数秒も立たぬ内に焼けた
だれていく。…少年は目前の現象に心当たりがある。刻印の戦士アルンが非業の最期を遂
げた時、その場には火の海と焼けただれたフレームのみが残されていたではないか。
「チーム・ギルガメスよ、今だ」
 深紅の竜の頭上で、白色の二足竜がこちらを振り向く。師弟は我に返った。すかさず対
ゾイドライフルの照準を合わせた魔女。都合四発の狙撃を終えるまで十秒も掛からない。
獅子が胴体を持ち上げて障壁が消えた今、竜の肩や腿に突き刺さった断片を外周から狙撃
するのは彼女にしてみれば造作もない。背後より迫る断片をも狙撃する余裕さえあった。
 少年は全身が軽くなったように感じた。早速レバーを捌けば深紅の竜は巨体を捻る。渾
身の、肘打ち。四つ目の獅子の顎を捕らえた。ぐらり、ふらつく獅子の足元。
 二足竜はそれを合図と決めていたかのように突き刺した腕を引き抜く。丸見えの内部機
構からは火花が弾け飛ぶ。
「ブレイカー、魔装剣!」

134 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:16:03 ID:???
 若き主人が合図を送れば、額の鶏冠を怒髪天のごとく逆立てる深紅の竜。前方へと展開
したそれは短剣へと変貌。獅子の巨体を両腕でがっちり掴み引き寄せ、その勢いで上半身
を反り上げる。そのまま焼けただれた腹部目掛けて渾身の一突き。
「1、2、3、4、5、これでどうだ!」
 ほとばしる電流。獅子はもがき、しばし両腕で竜の肩を叩いていたが、無駄な抵抗が終
わるまで大した時間は掛からない。
 やがて獅子は力を失い、竜にもたれ掛かるようにして意識を失った。
 そっと、強敵を脇に降ろして立ち上がる深紅の竜。ここからが、いつもとは違っていた。
竜は胸元が何やら騒がしいことに気付く。
「ブレイカー、そいつのコクピットを開けて。自爆とかするかも知れないから、急いで!」
 竜は第三者の意見を取り入れるべく、周囲を見てビークルを探す。
 ビークルを着陸させた魔女は切れ長の蒼き瞳でまじまじと、四つ目の獅子の頭部を見つ
めている。全方位スクリーン上からでも視認できる位眩い輝きだ。
 竜の方を見遣った魔女はぽつり、呟いた。
「ギル、覚悟は良い?」
 覚悟? 少年は魔女の真意がわからず、首を捻った。確かに相手は抵抗するかも知れな
い。だけど、この馬鹿げた戦いを終わりに近付けるために相手を知るのは避けられない筈。
「やめておけ。後悔するぞ」
 別の方角から声がした。曇りがかった頭部キャノピーを開ける白色の二足竜。相棒の腕
に乗り、地上へと降り立つ功夫服の男。少年は目を丸くした。まさか宿敵にアドバイスを
受けるとは思わなかったのだ。軽く溜め息をつくと。
「…後悔ならもう沢山したよ」
 言いながら、ハッチを開ける。そのまま深紅の竜が獅子の頭部まで近付くと上顎の辺り
で飛び降り、手を翳して合図した。左手で囲いを作り(今日は助けてもらったとは言え後
ろには本来の宿敵が控えている)、右手で獅子の頭部を掴もうとしたその時。
「アハハハハ! ぎるがめすヨ、コノ怖イモノ知ラズメ!」
 声と共に、開いた獅子の頭部ハッチ。
 少年が覗き込んだ時、一瞬だが陽射しを浴びた海水のような柔らかな輝きが放たれた。
…ほんの、一瞬だ。

135 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:17:10 ID:???
 コクピットには人の、胴体程もある水槽が鎮座していた。内部で浮遊するものを見た時、
少年は呻いた。呻いた挙げ句、膝をつく。胃袋は空っぽなのに、この想像を絶する嘔吐感
は何なのか。
 水槽内で浮遊するそれは人のような形をしていた。いや、それはまだ人として完成して
などいない。昔、ジュニアハイスクールの教科書で見た。人の、胎児の姿だ。
 胎児が水槽内で浮かべた笑みは邪悪。それと共に、輝く額。…少年の額に浮かんでいる
ものと同じ、刻印だ。
「サアドウシタ! モット近クデ、我ノ姿ヲ見ルガイイ!
 オマエノ知リタカッタ刻印ヲ解ク鍵ガココニアルゾ! アハハハハ、アハハハハ!」
 そう言われても、最早全身がすくんで全く動かない。
 少年が掛けられた恐るべき呪いを解いてくれる者がいたことを、彼は心底感謝した。冷
たい手の感触が少年の円らな瞳を覆う。首元で感じる息遣い、背中で感じる鼓動。どれも
これも良く知っている、彼が憧れる女教師のものだ。彼女は見上げるや深紅の竜に目線で
合図を送る。
 竜はそっと、左手を鷲掴み。女教師と彼女に背中を抱かれた少年を胸部ハッチまで引き
寄せた時、目前で火花が弾けた。竜が翼を前方に広げた時、四つ目の獅子だった鋼鉄の塊
は爆発、数度。炎上するにはしばらく時間を要した。
 二重の囲いとなった竜の爪を、透視でもするかのように睨む女教師。ふと、生暖かい感
触を左の甲に感じた。少年の、ゾイド胼胝ですっかり腫れた小さな左手。
「す、すみま、せん…もう、大丈夫、です」
 女教師は手をそっと離した時、湿り気を掌に感じ取っていた。少年の、汗? いやそれ
だけではない、これは少年の涙。明らかに人の胎児の姿をしたあのパイロットは如何なる
出生を経て、如何なる一生を終えたのか。深い絶望感は堪え続けてきた涙腺を遂に緩めさ
せた。
「ギルガメスよ!」
 遠くからの声に師弟は思わず顔を見上げた。
「ギルガメスよ、そして蒼き瞳の魔女エステルよ。
 銃神ブロンコの仇を見事討ち滅ぼしたことに免じて、今日はこの場を退いてやる。
 いずれ『B』が降臨するその時が貴様らの最期だ」
 白色の二足竜は仁王立ちし、両手を地面に向けた。照射される炎。煙が辺りを包む頃に
は二足竜の姿も消失していた。

136 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:18:16 ID:???
 女教師は知らず知らず、残る右腕に力を込めていた。抱き締められた少年はそれがこの
先降り掛かる苦難の厳しさだと理解できる。全身を委ねてしまいたい気持ちを抑えるべく、
少年は彼女の右腕に手をかける。振り解くのはしばし祈りを捧げてからだが。
 夕陽が死者を弔い、深紅の竜は目前で頭を垂れる。

 ゴンドラを積んだコマンドウルフは今ようやく、掘り開けられた山肌をくぐり抜けたと
ころだ。外は既に満天の星空。何しろ指揮官は慎重に慎重を期した。自ら先遣隊となり、
内部を伺ってから工作部隊を少しずつ、送り込む。それだけで日が暮れてしまった。やむ
を得ないだろうとゴンドラ内の白衣の男も考える。学問とて姿勢は同じだ。しかしだから
こそ、彼は無茶を言ってのけた。当面、彼が欲しいものは一つしかない。それさえ掘り当
てればひとまず撤収して構わないと。
 幸い、内部は白衣の男が想像した通りだ。鋼鉄が張り巡らされた室内は暗く、広い。目
下ゾイド自身が放つ光源だけが便りだ。そして壁面には至る所に扉が設置されている。
「目的のものは、この奥です」
 ゴンドラより指示を送る白衣の男。と、その時又しても足元で鞄がアラームを告げた。
一通りの指示を送った後、男は無造作に鞄よりノート大の端末を引っ張り出す。
 隣に座る美少女は男の表情の変遷に興味を持った。最初彼は、明らかに落胆の表情を浮
かべていたのだ。だがそれは徐々に歓喜へと移り変わる。
「林檎は、熟したのか?」
 ふと口走った彼女をちらり見て、男は頷く。
「熟しました。狩り取ろうとした者の頭上に落ちてきたようですが」
「ははは、何だそれは…」
 口を抑え笑う美少女。男の真意を知っているのかどうか。
『ドクター・ビヨー、見つけましたぞ。貴方の指摘通りだ』
 モニターに割り込んできた指揮官の無粋な顔。白衣の男は大いに頷く。
「『B』よ、いよいよ貴方に相応しい『覇のゾイド』をプレゼントできるでしょう」
 ゴンドラを乗せたコマンドウルフが行く。他のヘリック共和国軍所属ゾイドも追随する。
目指す闇の中で何を見つけ出したのか、それは次回に譲りたい。
                                      (了)


137 :魔装竜外伝第十五話 ◆.X9.4WzziA :2008/04/04(金) 01:20:40 ID:???
【次回予告】

「ギルガメスは花嫁の残虐非道に戦慄するのかも知れない。
 気をつけろ、ギル! 『B』が駆るのは友の宿敵。
 次回、魔装竜外伝第十六話『花嫁が誘う(いざなう)地獄』 ギルガメス、覚悟!」

魔装竜外伝第十五話の書き込みレス番号は以下の通りです。
(第一章)92-102 (第二章)103-113 (第三章)114-125 (第四章)126-136
魔装竜外伝まとめサイトはこちら ttp://masouryu.hp.infoseek.co.jp/

138 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 55 ◆h/gi4ACT2A :2008/04/05(土) 21:41:13 ID:???
「あいた〜…今までで一番効きましたよ。」
「どうだ!? これが人間の力だ! 人間は想いを力に変える事が出来るんだぁぁ!」
カエンライガーはさらに追い討ちを仕掛けるべく大龍神へ突撃した。大龍神もドラゴン
ウィングカッターで火炎刀を受け止めるが、押されて行く…。
「どうだ! どうだ! どうだぁぁぁ! これが! これが! これが人間だぁぁ!」
ルイスは何度も叫んだ。これはライオ共和国を守る為の戦いでもあるが…それ以上に
人間の尊厳を賭けた戦いであると信じていた…が…
「確かに貴方は人間ですね。だって…それだけ打ち込んでも大龍神の装甲にヒビも
入れる事も出来ないんですから…。超人への道はまだまだ遠いと言う奴ですよ。」
「え…。」
「ドラゴンミサイル! シュート!」
大龍神の側面部の装甲が開き、そこから一斉に多数のドラゴンミサイルが発射され、
側面方向へ飛んで行くと共に180度反転してカエンライガーへ叩き付けられていた。
「うおわぁぁぁ!」
「別に私は人間を見下してなんかいませんよ。生身の人間の中にも徒手空拳だけで
私の身体を破壊出来る凄い人がいる事を知っていますし…。もっとも…そこまで行くと
超人の領域なんですけどね…。」
「ふ…ふざけるな…。そんな人間がいるワケないじゃないか! そんなのはもう人間
じゃない! 怪物だ! 僕は人間だ! そんな怪物にはならない! 人間で十分だ!」
カエンライガーはドラゴンミサイルのダメージにも屈する事無く大龍神を体当たりで
スペースホープ号甲板上から叩き出していた。そして外宇宙移民船団全体が既に宇宙空間
に出ていた事もあり、大龍神とカエンライガーの二機もまた宇宙空間に放り出されていた。

139 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 56 ◆h/gi4ACT2A :2008/04/05(土) 21:43:21 ID:???
「これが宇宙か…。僕は宇宙に出てしまったのか…もしあの時にこの力があれば…
僕は家族や友達を失う事も無かった…あの忌わしいヘルパピヨン事件のせいで…。」
「へ?」
「お前だって知っているはずだ! 衛星軌道上の巨大ゾイドが無差別にレーザー砲を
大地に向かって発射した事! ヘルパピヨン事件と呼ばれている奴だ! 僕はあの事件で
家族や友達を失って孤児になった! その後何者かによってそれも破壊されたらしい
けど…僕はあんな不当な暴力によって僕の様な者を増やさない為に…ヘルパピヨン事件を
解決させた謎の救世主の様に人々を守る為に軍人になったんだ!」
「ヘルパピヨン事件…? ああ! 何年か前にありましたねそういうの! 懐かしいな。
今思えば宇宙空間まで飛んで行くのはその時以来ですね!」
「どう言う事だ!?」
「だってそのヘルパピヨンを破壊したのは私ですもの。」
「…………!」
ルイスは声が出なかった。ヘルパピヨン事件。先史文明によって造られた数百メートル級
の蝶型攻撃衛星ゾイドが突如覚醒暴走し、ハイパーレーザー砲で地上を無差別に破壊した
事件である。結局それを破壊したのは単独で宇宙に昇れるミスリルの大龍神であったの
だが、そうとも知らずに救世主と憧れていたルイスにとっては屈辱でしか無かった。
「そんな…じゃあ僕はずっとお前なんかに憧れていたと言うのか!」
「そうなりますね。あ、でも私は別に貴方達人間を守る為にヘルパピヨンを破壊した
ワケじゃありませんから。だって私だって死にたくないんですもの。」
「黙れ! お前の様なロボットなどにぃ!」
「何でそんな怒るんですか!? 感謝こそされど恨まれる覚えはありませんよ。」
「黙れぇ! ロボットがぁ!」
カエンライガーは全身を真っ赤に燃え上がらせながら大龍神へ突撃した。ちなみに
真空の宇宙で火は燃えないと突っ込んではいけないらしい。
「この一刀でぇ! 今度こそ終わりだぁ!」
カエンライガーが火炎刀を大きく振り上げ、大龍神に襲い掛かるが…

140 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 57 ◆h/gi4ACT2A :2008/04/05(土) 21:44:52 ID:???
「そっちが人間の力と言うのなら此方も見せましょう…機械のクソ力と言う奴を…
エネルギー充填150%! 超斬鋼光輪ドラゴンスマッシャァァァァァァ!!」
「何ぃ!?」
大龍神の両翼と背にある強化型ビームスマッシャー“超斬鋼光輪ドラゴンスマッシャー”
がカエンライガーの火炎刀の基部を正確に斬り裂き、カエンライガー本体と火炎刀を
分断していた。だがそれだけに終わらない。
「続けてドラゴンサンダァァァ!!」
大龍神の角から放たれる対象の分子結合さえ破壊する超高圧電流がカエンライガーの四肢
を粉砕していたのである。
「くそぉ! コイツ一体幾つ武器を持っているんだ!?」
だが、刀だけでなく四つの脚を失ってもなおカエンライガーは立ち向かおうとしていた。
「だがぁ! まだカエンライガーには牙がある! これさえあればぁ! お前を倒し!
あいつ等の世界蹂躪を防ぐ事は出来るんだぁぁ!」
「あらあら、あれを見てもまだそんな事が言えるんですか?」
「何!?」
大龍神がある方向に顔を向けると、そこではスペースホープ外宇宙移民船団各艦が
外宇宙へ旅立つ為に次々ワープを行っていた。
「何をやっているんだ? 世界中に散って各地を破壊するんじゃないのか?」
「彼等は超空間航法へ入ったのです。そして一度に何光年も先へと跳躍するのですよ。」
「え…?」
その時のルイスは驚愕し、真っ青になっていた。
「まさか…本当にこいつ等は最初から外宇宙とやらに旅立つつもりで…。」
「だから最初から言ってたじゃありませんか! 彼等は外宇宙移民船団であって、貴方の
言う世界征服なんてする気は無いって!」
ミスリルは呆れ笑いをしていたが、ルイスは愕然としていた…。

141 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 58 ◆h/gi4ACT2A :2008/04/05(土) 21:47:19 ID:???
「そんな…それじゃあ…僕達がやっていた事は…。」
「そう! 全ては骨折り損のくたびれ儲けって奴ですよ! この戦いで亡くなった貴方の
お仲間さんには悪いですが…最初に仕掛けて来たのは貴方達ですから文句は無しですよ。」
その時のルイスの受けた衝撃は何者にも勝る物だったに違いない。ただただスペース
ホープ外宇宙移民船団を世界征服を企む艦隊と信じ、祖国ライオ共和国と世界を守る為の
正義の戦いが全ては自分達の一方的な勘違いによる無駄な戦いだったのだから…
「そ! それじゃあ皆の死は! バングラン大尉の死は何だったんだ!」
「ま〜それはご愁傷様で…南〜無〜。」
ミスリルは何処からか数珠を取り出して仏式の拝み方をし始めていたが、ルイスの悔しさ
は消えるはずが無い。
「でもでも、これって本当勘違いした貴方達の方が悪いんですよこれが。私達はただ
貴方達の様な勘違いして攻撃してくる連中から守る為に雇われただけの傭兵ですし!」
「そん…な…………。」
信じていた者を全て否定されたルイスの受けたショックは想像にし難い物があるだろう。
そしてカエンライガーもエヴォルトが解けて元のセブンズソードへ戻り、大気圏へ突入
して行く。カエンライガーの状態であるならばそれにも耐える事は出来たであろうが…
通常のセブンズソードに大気圏を突破する耐久力は無いし、仮に出来たとしても減速する
事が出来ずに地表へ叩き付けられて爆散していたに違いない。
「彼も壮大な勘違いに踊らされた被害者だったって事ですね。南〜無〜…。」
大龍神は大気圏に突入しようとも平然としていたが、逆に燃え尽きて行くセブンズソード
の姿を見送りながらミスリルはまたも数珠を手に掛けて仏式の拝み方をしていた。

142 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 59 ◆h/gi4ACT2A :2008/04/12(土) 21:20:31 ID:???
その頃、スペースホープ号及び移民船団各艦は超空間を移動中だったが…そこで突然
スペースホープ号にスノーからの通信が来ていたのである。通常空間とは異次元に存在
する超空間に通信など一体どんな手を使ったのかは分からなかったが…スノーは
彼等の問いに答える事は無く言った。
「宇宙は君達の想像を絶する様々な障害が多数存在する…。多種生命体に問答無用で
襲い掛かる生命体…数億光年単位の範囲を支配する星間文明…。その他もろもろ…。
君達が宇宙を行くと言う事はこれらとの戦いの始まりを意味する…。気を付けるに
越した事は無いだろう。以上が外宇宙から来た者としての忠告だ。幸運を祈る…。」
「え…外宇宙から来た者…?」
スペンリー及びスペースホープ号クルー達は一瞬唖然とするが、スノーの通信は
そこで切れていた。後は、彼等自身の力で宇宙を進まなければならないのである。

レイアが目を覚ました時、彼女はライオ共和国の軍病院の病室のベッドの上だった。
そこで今回の戦いの全容を聞かされ、彼女は開いた口が塞がらなかった。
無理も無い。祖国を…世界を守る為の正義の戦いと信じていたと言うのに実態はただの
勘違いであり、かつ彼女達にとって正義だと信じていたライオ共和国の方が惑星Zi
史上初の外宇宙移民船団の発進と言う歴史的瞬間を妨害したと言う悪者にされていたの
である。TVでもそこに関しての問題などが報道され、勘違いで多くの犠牲を出した
軍や政府の責任等が厳しく追及されていた。
「そんな…そんな…そんなぁぁぁぁ!」
レイアは悔しさの余り涙が止まらなくなった。無理も無い。こんな事の為にルイスや
バングランは死んでしまったのである。そのくせ自分は生き残った。自分の家族や友を
殺した大蠍神に見逃される形で…。それが恥かしく悔しい事この上無かった。
そして勘違いで大軍を動かし、莫大な軍事費と兵の命を無駄にした今回の事で、
ライオ共和国は経済的にも内政的にも外交的にも大きく傾いたと言われる。

143 :宇宙への希望 吼えろ龍の戦士 60 ◆h/gi4ACT2A :2008/04/12(土) 21:22:11 ID:???
「スペースホープ外宇宙移民船団の記念すべき門出を祝って…乾杯!!」
「乾杯!!」
スペースホープ外宇宙移民船団防衛戦を生き残った傭兵達は覆面Xを中心に
焼肉パーティーと洒落込んでいた。無論ドールチームやハーリッヒ、アールスの姿もある。
「それにしても何かライオ共和国の方は大変みたいだな〜。」
「勝手に勘違いしたあいつ等が悪いのさ! 自業自得って奴だな!」
「違いねぇ! ハッハッハッハッハッ!」
傭兵達は口々にそう笑いながら焼いた肉や野菜を口に運び、アールスは他の傭兵に
無理矢理酒を飲まされて酔った勢いで大道芸的にサイコキネシスを披露したりして
大騒ぎになっていたが、ミスリルは一人空を眺めていた。
「ミスリルどったの?」
ハーリッヒが隣に座って訪ねると、彼女はこう答えた。
「いや…あの人達は今どこを飛んでるんでしょうかね〜って思いまして…。」
「さぁね。宇宙は広いんだから私達の想像も付かない場所を飛んでるに違いないわよ。」
「そうですよね…。」
「でもさ、彼等が何処かに良い星を見付けて移住して、そこで代を重ねた彼等の子孫が
元々はこの星がルーツって事も忘れてこの星に侵略してきたりなんてありそうだよね!」
「ハハハハ! 結構ありそうですね! 何百年先になるか分かりませんけど!」
ミスリル達はそうやって笑っていたが…この間にもスペースホープ外宇宙移民船団は
宇宙の何処かを飛んでいるに違いない。願わくは…彼等の望み得る良い星を見付けられる
様に…。今はそう祈るしか無いだろう。
                    おわり

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